アビス・イン・ワンダーランド~ゲームギルドの深淵へようこそ~

前世のゲーム知識を駆使し、光属性防御魔法で無双します。
RYU
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戦慄と地獄のバトルロワイヤル ②

公開日時: 2024年11月6日(水) 22:41
更新日時: 2024年11月6日(水) 22:42
文字数:3,019

辺りは、深い昏睡状態に陥った。



赤ずきんは、サブマシンガンを構えると辺りの状況を伺った。


公平性を期すために、どのチームの誰と対戦するのかは、聞かされてないー。


赤ずきんは、大仰にため息をついた。


こういう、狡猾なスピリチュアル系の相手は苦手だ。

得意のアドリブや物理攻撃じゃ効かない相手だ。


だんだん、辺りに霧が立ち込める。


モタモタしてると、自分もやられKo負けしてしまう。


試しに、サバイバルマシンを連射してみる。


朱色の炎は、一瞬、輝き消失した。


二丁のサバイバルマシンを変形させようとする。


だが、錬金ら上手くいかないー。

「なるほどな…」

奴の奇妙なフィールドの中では、己の魔力の効力は失われるということになるのだろう。


終いには、魔力そのものも吸収されかねないー。


現に自分は、疲労感や倦怠感が襲って来ている。


昔から体力には自信があった筈なのだが、開始二分で体力の半分以上を削がれた。



バトルロワイヤルでは、前記の通り自分がどの属性の相手と戦うのかは、知らされていない。


だから、それなりに頭を使うことになる。

だが、こういうときに備えて、良い使い魔を得る事が出来た。


出くわした時、厄介だったが

使い魔としては、優秀だ。


奴の魔力は、このフィールドでは効力を発揮するかも知れない。


奴は、トリッキーだ。


相手の魔力を上手く誘導し、相殺させることが可能だ。


コイツはしっかり調教したところだから、上手くいくことに掛けたい。


「おい、パック、出番だぞ。」

「はい…」

茂みの奥から、渋々パックが姿を現した。

「今から、お前の魔力を発動させる。お前、体力は削がれてないよな?」


「どうでしょうかねー?」

パックは、とぼけたような掴みどころのない表情で曖昧な返事をする。


「ふざけるな。お前、土属性だろ?」

赤ずきんは、鋭い眼光でパックのを睨みつけ襟元を掴む。

「え…あ…」

パックは、青ざめ声を詰まらせた。

「お得意のぴえんは私に通用しないから、よーく覚えときな。」

「は、はい…今から発動します…はい。」

パックは、俯きながらも仕方なく了承した。






その時だった。

ドラゴンが咆哮しながら、二人に襲い掛かる。



赤ずきんは、舌打ちするとサバイバルマシンをドラゴン目掛けて投げ付ける。



ーと、ふと過去の記憶が走馬灯のように駆け巡った。


亡き隊長と妹分が目の前に現れた。


彼らは、とっくの昔に死んだ筈だ。


『やあ、レティー、お前、大分逞しくなったな。』


『ゴメンね、弱くて。私、足引っ張ってばかりで。』


姿も声も喋り口調も、彼らそのものだ。


30過ぎぐらいのパイプをふかした長身のガッチリした体型の男と、小柄でリスのように大きくクリクリした眼をした女の子だ。


彼ら二人は、かつてサジタリウスで共に戦ってきた仲間だ。


赤ずきんは、自分のせいで、死んだのではないかー?と、ずっと後悔し続けてきた。


急に、深い後悔と懺悔、悲しみと怒りの感情に囚われた。


それは、次第に膨れ上がり自分の脳内で魔物と化し暴れ回っている感じである。



二人の顔は、急に怒りにまみれたような般若のような顔つきになり赤ずきんを責め立てた。


『だが…お前が悪い。』

『そうよ。レティーが悪いのよ。』

『お前は、いつも乱暴だ。人を殺め残酷で…』

『そうよ。私達まで犠牲になって…』



その言葉に、脳内の魔物が益々魔力を増幅させる。


鉛のような絶望の重い金が脳内に鳴り響く。


赤ずきんは、顔を歪ませ胸を押さえつける。


息が苦しくなってくる。


『お前だけ、生き延びて…』

『そうよ。許せない。』

『お前、のうのうと逃げやがったな。』

『人殺しの癖に。』


尚も、二人は鋭い剣幕で赤ずきんを責め立てつづける。


烏賊墨色の絶望の中で、赤ずきんは唇をキツく噛み締める。



絶望は、脳髄へと深く侵食してくる。




「準備出来たよー」

霧の向こう側から、パックが悠長な声を投げかけた。


大分癪に触るが、赤ずきんは彼女を見てハッとした。


ーそうだ…アイツの魔力にかかった時、似たような…いや似て非なる光景があった…その時、この二人は温和でにこやかだった。



「パック、お前…私にも魔力を掛けてくれ。緊急だ。早く!」

「え…!?何なんですか…!?急に…」


アリスの噂は、知っている。

彼女の得意技は、スピリチュアルだ。

それなら、トリックで対抗しよう。



霧の外では、アリスが魔の手に堕ちた赤ずきんを愉快げに見つめていた。


「フフフ…皆、チョロいもんですね。私が、こうして近くに居るのに、誰も私の事を攻撃出来やしない。」



ーと、霧の向こうから、氷のブリザードが、辺りを覆い尽くした。


激しい猛吹雪、氷の塊が自分目掛けて襲い掛かる。


辺りの植物は氷固まり、そして硝子のように一瞬で砕け散った。


催眠にかかった観客らは、ハッと我に返る。


「何ですの…?」

アリスは瞠目し、瞳孔をわなわな震わせた。



「お前は、植物を操るだから、炎には弱い。だから、何らかの対策を練っている筈だと考えた。」


霧は亡くなり、その向こう側から巨大化したサブマシンガンを両手に携え構えている赤ずきんの姿があった。

どうやら、さっきのブリザードも彼女の銃口から発砲されたようだ。


「なるほど、魔力を相殺したのですね…みんな、夢の国で果てていったのにお見事です。私はあなたの精神を完璧にぐじゃぐじゃにする予定でした…」


アリスは、眉間に皺を寄せながら赤ずきんを睨みつけた。


「済まないね。私の精神はそこらの者とは、比にならないもんでね。」


赤ずきんは、サブマシンガンを下ろすと魔力で元のサイズに戻した。


「ですが、私は貴女の魔力を封印しました。しかも、貴女は炎属性の筈…ブリザードなんか…」

アリスは、口元を歪めるも、パックを見てハッとした。


「お前のトリックを利用して応用しただけだよ。コイツの力を使ってな。」

赤ずきんは、得意げになりパックを傍に引き寄せた。


「なるほど、魔力を借り応用したんですね?そして、さらに物事が反転して見えるのようにしたんですか。まさか、魔力を相殺したのも…!?」


「悪いな…パックの能力は、魔力にかかった者に願望を与える事。お前が私に使った能力は、希望を絶望に変化する事だ。だから、見事に相殺されたり、私がこうしてら氷の魔力を使えた訳だ。使い分けが大変だったけどな。」


「だけど、殆どの人が二分も持たなかったのよ…」


アリスは、明らかに動揺している。


「悪い。私の体力・精神力は、お前が想像してたのの比じゃないんだ…」


「でも、使い魔を使うのは、ルール違反ですよ…?」


「確かに、そうだ。だが、お前も使い魔を操った。しかも、精神誘導はそれより重大な規定違反だよな?」


赤ずきんは、胸元のスピーカーに超えを張り上げ乗せる。


巨大掲示板には、ライオンのように堂々とした風格の赤ずきんの姿が映し出された。



司会者は、ハッとしながらもパンフレットを読み上げた。

「そ、そうですね。これはバトルロワイヤル戦なので、確か…物理攻撃が主となっています。」


「チッ…」

アリスは舌打ちすると、這いつくばり身体が氷に覆われた。


「じゃあ、トドメといこうかー?お前にも、相応の絶望を見せてあげるよ。よくも、嫌なもの見せてくれたな?」


赤ずきんは、怒りに満ちた表情で眼光を雪豹のように鋭く尖らせた。

そして、再びサバイバルマシンを巨大化させ構え、その引き金を引いた。


アリスは青ざめ、悲鳴を上げた。


会場内には、アリスの地獄に飲まれた金切り声が反響し、その場にいた者らを戦慄させた。


そしてその声は、マグマのように暴発する朱色の炎に包み込まれ掻き消された。

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