あれから更に、五ヶ月の時間が経過した。
例の黒幕は、中々姿を見せる兆しは無かった。
しかし、ギルドのメンバーは、度重なるウィルスの襲撃に疲弊していたのだった。
ウィルスは、普段はゴブリンのような姿をしているが、普段は様々な人間に擬態しながら過ごしている。
VXに準じる戦闘能力を有する者まで居た。
ヒカリは、赤ずきんに鍛えられ
何とか戦闘能力を身に付けられるようになってはいったものの、中々上達はしなかった。
ヒカリは、自分は戦い向きじゃないのかと、落胆した。
格闘技は、やった記憶がない。
しまいに自分は、運動音痴だ。
パン屋での仕事は、順調だった。
ギルドのメンバーとは、次第に打ち解けられるようになっていった。
ギルドのメンバーは、ユニークな人ばかりだった。
ヒカリは、パン作りに便利屋の手伝いに追われる日常となった
自分は、自分に出来る仕事をしようと考えたのだ。
ヒカリは、ギルドメンバーのプロフィールをスマイルウォッチのアプリから検索していた。
スマイルウォッチの掲示板から、映写機のように浮かび上がったメンバーのプロフィール画像を眺めていた。
ギルメガッシュにヘンゼルとグレーテルなど、神話や御伽噺のキャラクターをモチーフにしたようである。
ヒカリは、赤ずきんのプロフィールを検索した。
黒い星のスコアが異様に高く、ギルドのメンバーの中では、一際強いようであった。
「何、見てるんだ?」
隣で、赤ずきんが覗き込む。
「え…?レティーさんのプロフィールを見てて…凄いなあと、思って…」
「ああ、これは嘘だ?強く見せとけりゃあ、良いんだよ。」
「え…?強く…?!」
「強く見せれば、周りは凄い人だと勘違いし、ビビるからな。まあ、年齢も体型もテキトーに打っとけばいい。」
そう言えば、彼女は、顔は童顔であり、年齢もイマイチ掴めない、不思議な容貌をしていた。
ーと、彼女は、室内の一番奥の筋トレエリアでベンチプレス80キロを持ち上げトレーニングし始めた。
もう、その光景には見慣れた。
100キロや120キロを持ち上げる事もある。
矢張、彼女はサジタリウスのメンバーで相当な怪力の持ち主なんだと知る。
他のギルドメンバーも、何処と無く個性が強かった。
モルガンは、時折、台所から甘い怪しい匂いの漂う薬を調合している。しかも、その薬は彼女以外触れる事が許されなかった。また、洞察力があり人の内面を読み誘導するのに長けていた。人の潜在能力を引き出す役割も果たしていた。
パックは、マイペースで飄々としていた。緊急事態でも、その性質は崩れなかった。
ギールは、筋トレマニアのようであり、日常的にプロテインを飲み、毎日、二時間のトレーニングに励んでいる。
彼は、筋骨隆々であり凹凸のハッキリ目立つ身体をしている。
ヘンゼルとグレーテルは、身体能力が異様に高く、サーカス団に所属していたんじゃないか?とすら思える。
彼等は風属性であり、鷹のように華麗に宙を舞う。
キュクレインは、身長250センチを誇る、ガタイの良い体格をしていた。
メンバー1の怪力を誇り、巨大な岩を楽々と粉々に粉砕する。
口から炎も吐き出した。
強面であり無口で仏頂面だが、温厚で仲間想いだった。
ギリー・ドゥーは、細身でおどおどしていたが、瞬間移動が早く、一瞬でその場から居なくなる事もある。彼も、洞察力にも優れ、人の嘘を見抜いたり潜在能力や適性を把握する能力に長けていた。
彼は感覚が過敏であり、賑やかな場が苦手でいつも静かな場所で本を読んでいるようだった。
物知り博士は、好奇心旺盛で破天荒な性格をしていた。
ウィルスの研究をすると言い、ウィルスを捕まえ特殊な電気椅子に座らせ、または、ウィルスから特殊な抗体を創り出しては養命酒のようなものを作った。そして、それを滋養強壮だと言い、周りに振る舞い実験台にして楽しんでいた。
傍迷惑で、周りを困惑させている。
赤ずきんが、新しく向かい入れた例の体格の良い男は、
名前をハインリヒとだけいった。
彼は顔立ちがよく25位の外見をしており、オタク系な雰囲気を醸し出していた。
世界のネットワークシステムやウィルスについての知識が卓越しており、各システムのプログラムの構築や改変方法に長けている。
例の時計屋の初老の男は、童話に出てくる青髭そっくりの風貌をしていた。
彼は、職人肌であり、唯一まともな感じであった。
無数鍵を所持しており、ネットワークの管理の役割を担っていた。
彼は、ヒカリ同様に防御型であら、バリケードを張り時間を操作する能力がある。
全く、おかしな世界だ…と、ヒカリは困惑する。
今日は、店は休みであり大雨だ。
パックは、自室でまだ眠っている。
モルガンは、魔女の会合でうち開けている。
赤ずきんは、せっせとベンチプレスに励んでおり、今は、160キロを持ち上げていた。
今日は、パンの仕込み作業に入る事にした。
小麦粉をビーカーに入れ、分量を図る。
ーと、ドアのベルが鳴った。
ヒカリは、ドアを開けた。
ドアの目の前には、ひかりお姉さんが立っていた。
「ひかり、ひかりお姉さんですか…!?」
感情が追いつけない。
「ヒカリちゃん、お久しぶりね。」
かつての優しい面影そのものだ。
ヒカリの目から、涙が溢れ出た。
「一緒に、ここを出ましょう。」
「え…?でも、私はここの…」
ヒカリは、戸惑った。
赤ずきんやモルガンには、恩がある。
「ヒカリちゃんの能力を引き出せるのは、この私よ。あなたは、ここに居ては幸せになれないわ。」
その言葉に、ヒカリはハッとする。
確かに、自分は守られてばかりである。
自分は、ギルドメンバーの足でまといでしかない。
だったら、ここを出てヒカリお姉さんと一緒に居た方が良いのかもしれない。
「さあ、一緒に行きましょ。」
ひかりお姉さんは、ヒカリ右手首を掴んだ。
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