森の中に居た
永遠と続く別次元のような雰囲気を漂わせている森
空は深海の様に漆黒で、金の星や銀の月が散りばめられている
それは、まるで宝石箱にも見えるだろう
ヒラリと一匹の蝶が飛んでいた
引かれるように後をついていくと、廃墟と化した建物が見えてきた
中は、埃だらけで人の気配は勿論ない
だが、進んでいくとバサバサと紙が擦れるような音が聞こえてきた
近づけば近づくほど、擦れる音が大きくなって不信感が募る
何分歩いただろう
ひとつの部屋から、淡い光が漏れているのに気がついた
今まで、そばで飛んでいた蝶がはばたきを増してその部屋へ吸い込まれるように入っていった
そろそろと入ると、中は広く紅い薔薇で埋め尽くされていた
部屋の中心には、十字架と思しきものに蝶が犇めきあっていた
謎の紙の擦れる音の正体はコレだったようだ
先程の蝶が、十字架に近づいた
それと同時に、一輪の薔薇の蕾が咲き、一輪の薔薇の蕾が生えた
犇めく蝶は、何かを貪るように群がりバサバサと大きな音を発している
そこへ近づいていくと共に、意識が遠のいていった
そしてまた一匹
加わった
一輪の薔薇と共に…
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