level 4

地より奥深くへ
主道 学
主道 学

3-10

公開日時: 2024年6月28日(金) 05:06
文字数:918

 防空壕内



 近道 保志


 ほんと、誰かいるのかよ……? こんなところに……?

 でも、中は無人だったぜ。どうやら、貯蔵庫のようだ。ほんと徹くんが見つけてくれて良かった。今でも強風がトンネル内を吹き付けているしな。

 外へ出ると、危険だ。

 しかし、何を貯蔵しているのやら? 小部屋の中央にテーブルと椅子が四つ。扉の真向いの壁に貯蔵庫と書いてあった。

「うん? これ……缶詰か?!」

 金属製の壁には、所狭しと缶詰があった。牛肉。米。魚。果物と種々雑多な食べ物の缶詰。

「美味しそう!!」

「よし、食べるか!! 徹くん! あのテーブルに並べられるだけ並べよう!!」

「うん!!」

 食べ物は思いの外。たくさんあった。二人で食べ尽くそうとしても、まだある。一体。何人分かよ。でも、腹減っていたから本当良かった。さて、これもあれも持って行こう。牛肉や米の缶詰ばかり持ったな。徹くんは、果物が多いな。



 路上



 畠山 里香


「里香?! どうしたんだ?!」

 勇の声で私は道路の端で立ち止まった。すぐそこには辞めた探偵兼土地家屋調査士の事務所がある。駐車場へ行く矢先だった。自転車が一台私の脇を通り過ぎていった。

「ううん。もういいのよ」

「途中で投げ出しちゃいけないよ! 一体どうしたんだ……」

「……」

 私は父。勇の顔を見つめた。勇は私の無言の訴えが伝わったのだろう。一瞬、丸い顔がこくりと頷こうとした。車も一台。道路を通る。父は心配そうな顔をしていた。

「いや、駄目だ。途中で投げ出しちゃいけない」

「……ふぅーーー……」

「一体。どうしたんだ?」

「私の正式な依頼人だったの。西村 研次郎さんは……」

「……そうか。なら……なおさらだ。その人はもう死んでいるんだよ」

 雨は相変わらず降っていた。傘は二人とも差していない。私たちのびしょびしょの姿は他の人たちには、どう映るのだろう。

「正式な依頼人だったんだね。西村 研次郎は?」

「……ええ。それは間違いわ」

 私は捨てられ雨に濡れた子犬のような気持だった。

 それは大きな存在に見捨てられた気持ちに似ている。

 きっと、子犬もそんな気持ちのはずだ。

 そう、途方もない大きな存在に……。


「本当にご本人? 同姓同名の別人でなく?」

「ええ。超小型電子カメラを作っていたって、言ったの」

「なんてこった!!」

 



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