level 4

地より奥深くへ
主道 学
主道 学

6-25

公開日時: 2024年6月28日(金) 05:34
文字数:1,407

 発電所



 近道 保志


 四角い箱のような配電塔へと、俺は徹くんをおんぶしながら大量の汗を流しながら到着した。

「う……。おお!」

 仕事仲間の話をよく聞いたお蔭だ。機器のメーターは全て振り切れているようだが、ブレーカーをきっと入りにすればいいんだな。一旦、徹くんを背中から降ろしてしまってから、色々な取っ手を開けて中を除いて回る。電線に気をつけながらひたすらサーキットブレーカーを探した。徹くん! また少しの辛抱だ!

 よし、これだな……?!

「おじさん!!」

 徹くんは、いきなり俺を横へと押し出した。俺も脇へと逃げの態勢だった。何かが俺の脇の服を切り裂いた。襲ってきたのは、あのガソリン男だった。両手にはのこぎりを持っている。

「の、ヤロ――!!」

 俺は、叫び声を上げてガソリン男に向かって工具箱を投げつけた。

 ガンっと鈍い音がした。

 ガソリン男は、工具箱がぶつかった肩をおさえてよろけながら、のこぎりを捨てて一目散に逃げて行く。 


「徹くん! 無事か!」

「うん!」


 お互い怪我しなくて良かった。電気床に蹲るような姿勢だった徹くんは、何かに気が付き立ち上がった。ガソリン男が逃げた場所を指差していた。

「あ! エレベーターがあるんだ! ほら、おじさん! あっちだよ! あれで、上へ行けるよ!」

「おお!! こ……ここはこのままでも良いや! エレベーターへ行こう! 素人が何かするのはやっぱりいけないや!」

 俺は喜んで、走った!

 一瞬、グラリとした。俺って、今まで汗が限界まで流れているんじゃないかな……。 

 水分と塩分がないと……。 

 配電塔の奥にそれはあった。

 徹くんと駆け出して、奥行きのありそうなエレベーターに辿り着くと、ガソリン男はすでにエレベーターで上へ行った後だった。どう見ても、このエレベーターは工業用機械を降ろしたりしていたのだろう。

 俺は汗を掻き過ぎながら、黄色い警告テープが貼りまくられたエレベーターの上のボタンを押しまくった。

 途端によろける。

「おじさん! 少し座ってて! ぼくが押しておくよ!」

 徹くんがエレベーターのボタンを押す役割を変わってくれた。 ブゥーンッと、不気味な音がしてエレベーターが駆動音と共に降りて来た。レベル3へエレベーターが着くと扉がゆっくりと開いた。中は奥行きのある灰色の空間が広がっていた。

「徹くん! さあ、上がるぞ!」

 広いエレベーター内は、電力の上がり過ぎたレベル3とは違い寒かった。きっと、冷たい空気が通るダクトの近くなのだろう。さあて、地上は何階だろうか?

「あれ?」


 エレベーターのボタンは1階から地下4階までなかった……。2階から地下6階までしかない! 

 地下6階?

 なんだこのエレベーター! 1階がないじゃないか?! 


「?? 仕方ない……二階を押そう……多分、これで地上へ戻れるはずだ」

「おじさん! あのガソリン男がいたら?」

「大丈夫だ! また工具箱を投げ……?」

 何故か徹くんは真っ青だ。俺も真っ青な顔だろう。工具箱は持っていなかった……。

 さて、どうする?

 素手で殴るかするか?

 気が縮こまる感じだが、エレベーターは無情にゆっくりと上昇していく。

 3階……?

 2階……。

 どうやら、俺たちは今まで地下4階にいたようだ。

 一階ずつ。

 一つずれているんだ。

 2階にエレベーターの箱が着くと、扉が開いて来た。

「ひっ……。徹くん! 伏せて!」

 ガソリン男が肩を抑えて拳銃でこちらを狙っていた。パパンンッ! と、発砲音が数回した。


 俺はそこで気を失った……。 

 どこかからオイルの臭いがする……?



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