殺人空間
大久保 徹
おじさんが急に倒れた!
その拍子で棚に体が当たって、幾つかの棚が倉庫のドアまでドミノ倒しになったんだ。
もう、前が見えないくらいにモクモクと黒い煙が倉庫中に広がっている。棚の上にある黒い箱が大量に床に落ちると何故か煙がたくさん出たんだ。
「う……、ありゃ多分、軽油が入っていたんだな。徹くん……空気量不足で炭化粒子がでたんだ。だから……今は空気を吸うと……危ない……」
ぼくは倒れているおじさんを見た。おじさんは目を開けている!!
「おじさーん!! 目を覚ました! 良かったーー!!」
「徹くん……ここはどこだ? ……腹がヒリヒリして痛いよ……あのガソリン男の弾丸はかすったんだな……きっと、わざとだと思う……ここへ俺たちをとどめたいんだ」
ぼくはおじさんの言っていることがわからなかった。
「?? 体、大丈夫なの? おじさん?」
「ああ……徹くん。すぐにここから逃げよう……あれ?」
ドシン、ドシン、ドシン。
真っ黒な倉庫の中で、人型機械の大勢の足音がこっちに来てしまっている。
「徹くん……。君だけでも逃げてくれ……」
「え? おじさん?」
ぼくはおじさんが何て言ったのかわからなかった。
「は、早く……俺はもうだめなんだ……」
おじさんはぼくの肩を脇にのけてよろよろと立ち上がりかけた。でも、無理だった。おじさんは立ち上がれなかった。ドン、と床に尻餅をつくとお腹から血が滲み出た。 それでも、這いつくばって、人型機械の方へと棚をまた倒すために体当たりをした。ぼくはそれをじっと見ていたけど、おじさんが大声を張り上げた。
「さあ、逃げてくれ! さよならだ! 徹くん!」
バタン、バタン、と大きな音を発して棚がドミノ倒しに崩れ落ちていく倉庫内で、ぼくはおじさんの大声が背中にへばりついた。ぼくはおじさんに背を向けて、あの女の人を探しに走っていた。
殺人空間
畠山 里香
「ハア、ハッ、ハ! な! なんなの?! あれは?!」
私はこの世のものとは到底思えない。恐ろしい機械を見て、逃げていた。
「お、追いかけて来る!!」
機械? は、私を追ってくる。この通路には様々な動力炉ができる過程の資料の映像が白黒でディスプレイを通してうつっていた。ごつい端末に白黒テレビが脇にあった。人体研究室や医療施設などもあった。そう、ここは旧日本軍が作ったのだ。当時、戦争に負けそうになった日本軍は、地下へとその姿を隠したのだ。だから、ここには様々な機材が設置されている。
……聞いたことがある。
長野県にもこのような巨大地下施設があるようだ。
私は全力で走った。
いや、逃げたのだ。
動力炉から……。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!