発電所
大久保 徹
「うん? ここはどこ……?」
辺りは鉄で覆われていた。少しだけ狭いガラス製の窓が下の方についている。
どこかから電源の入った大きな音がした。
ぼくはハッとした。
なんだか怖くなった。ガタガタと震えだし、これから何かとてつもない恐ろしいことがぼくの身に起きそうな予感がした。それは凄く残酷で、命にかかわる……危険なことだ……。
「誰か助けてーーーー!! 近道おじさーーーーん!!」
ぼくは起き上がって、必死に助けを呼んでいた。
発電所
近道 保志
「……う……」
俺は気を失っていたようだ。大量の肺にたまった水を吐き出す。身体も水浸しだから床には大きな水たまりができる。
「う……ここはどこだ……レベル 3か?」
ゆっくり起き上がると、恐る恐る身体の調子を確認した。
「なんともないな。大したことないぞ……ふー、それにしても広っろいところだなー」
目の前には巨大な配電塔が幾つも設置されていた。配電塔とは電力需要の少ない場所に設置されたミニ変電所だ。発電所でできた電気を一般家庭などへ送るのが変電所だった。
「ここは地下発電所……か? ここはこの何かの工場の……心臓部なんだ!」
バチンッ!!
突然、床から火花が飛ぶ。なんだか身体がブルブルする!
「ひっー!! 普通、発電所から作られる電気は約27万ボルトから50万ボルトといった高電圧なんだけど、誰かがめい一杯電気を上げているんだ! このやろーー! 俺を焼き殺す気かーーー!!」
足元が熱くなりだした。靴がぶすぶすと黒い煙を上げている。
「あちっ!! ひっ! このままだと足元から焦げるーーー!! 変電所へ行かないと!! それより俺の工具箱はどこだ!! 早く工具箱を探さなとー!!」
探偵兼家屋調査士事務所
畠山 里香
「やっぱり……」
二人は生きていた。いや、死んではいない。新聞の切り抜きには、こう書いてある。市営住宅のエレベーターの落下事故で地階と床の間に挟まり心肺停止と。妻はその数時間後に死亡が確認されている。だが、西村 研次郎とその娘の冴子は今も入院しているのだ。
「あれ?」
別の新聞。勇の買った新聞には二人は死亡が確認されている。
一体……。
どういうことだろう?
探偵兼家屋調査士事務所のデスクの上には、様々な勇の残した資料があった。勇は二人が生きているとも推測していたのだ。
「ふぅーーー」
このところまた徹夜だった。
「コーヒー……とっ」
インスタントコーヒーを止めて、缶コーヒーにした。何度か缶を振って。涙が流れた。
でも……私は心底悔しいんだ。
きっと、勇もだろう。
早くにこの怪事件を解決しなければいけない気がする。外は夕立が降っていた。明日に西村 研次郎と冴子が入院している病院へ行こう。
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