2年微能力組!~微妙な能力で下克上!~

阿弥陀乃トンマージ
阿弥陀乃トンマージ

第11話(4)B組に過ぎたる者

公開日時: 2023年3月16日(木) 20:49
文字数:1,927

「倍返しとは厄介な能力だな……さすがは超能力組と言ったところか……」

「そうね、どうやって倒せばいいものか……」

 日光の呟きに照美が反応する。

「残念ながら途方に暮れている暇はありませんよ」

 青龍がコートに転がるボールを拾う。

「青龍……策はあるのか?」

「まあ、一応ですが用意してありますよ。対茂庭秀美さん用のね」

 日光の問いに青龍は答える。照美が驚く。

「本当に?」

「それは頼もしいな」

「あまり期待はしないで下さいよ」

 青龍は苦笑しながらボールを持って相手陣内に向き直る。茂庭が呟く。

「本郷青龍さん、貴方がもう出てくるとは……」

「意外でしたか?」

「多少……ということは……」

「ということは?」

「そちらは大分追い詰められているようですね」

「ぶっ!」

 茂庭の言葉に青龍が吹き出す。茂庭が首を傾げる。

「違いましたか?」

「い、いいえ、半分当たっているなと思いまして……」

「半分?」

 茂庭はさらに首を傾げる。

「貴方がたとこうして相対するような事態になっている時点で、私たちは既にかなりのところまで追い詰められていますよ」

「なるほど」

 青龍の説明に茂庭は納得する。青龍は咳払いを一つ入れ、ボールを構える。

「さて……」

「どうぞ……」

 大柄な青龍にもまったく臆せず、茂庭は捕球の体勢をとる。青龍は苦笑する。

「堂々とされていますね」

「私のこの能力があれば、貴方がどのような剛球を投げてこようとも、何ら恐れることはありませんので」

「剛球って……女性に対して、そこまでムキにはなりませんよ」

 青龍は笑いながら首を振る。

「ほう、さすがは『スパダリ』の能力者……」

「ですが……」

「ですが?」

「それが勝負事となれば、話は別です」

「スパダリの定義と矛盾するのでは?」

「勝負で手を抜くというのは、相手に対して失礼に当たりますから」

「なるほど、そういう解釈で来ましたか……」

 今度は茂庭が苦笑する。

「では……参ります」

「どうぞ」

「ふん!」

 青龍がボールを投げ込む。鋭いがそこまでの強さは感じられない。茂庭は拍子抜けする。

(大した球ではない……まさか女相手だから本当に手を抜いた? 舐められたものですね。まあ、こちらとしては助かりますが……!)

 次の瞬間、ボールは急激に曲がる。

「本荘さん!」

「おう!」

「!」

 外野に下がっていた聡乃が青龍の投じた変化球を鞭で巻き付け、あらためて茂庭に向かって投げつける。

「そらっ!」

「しまった!」

「B組、5ヒット!」

「おおっと、ここにきて、内外野のコンビネーションが炸裂! 虚を突かれた茂庭、反応することが出来ませんでした!」

 審判がコールし、実況が叫ぶ中、茂庭が青龍を見つめて静かに呟く。

「なるほど……私狙いではなく、外野の彼女をめがけて投げたのですね」

「そうです」

「私や私のチームに向けられたわけではないから、私の倍返しの能力は発動しない……ふむ、これはなかなかの盲点でした」

 茂庭は深々と頷く。

「さっさとどけ、茂庭」

 筋肉質の短髪な男が茂庭を押し退ける。茂庭は顔をしかめる。

「乱暴なことをしないで下さい」

「これは時間制でもあるんだよ、チンタラしてらんねえんだ」

「……それはそうですね、ご健闘をお祈りいたします」

 茂庭は一礼し、外野へと歩いていく。青龍が軽く天を仰ぐ。

「今度は貴方が相手ですか……波田ばたまさるさん……」

「へへっ、『B組に過ぎたる者、本郷青龍』……おめえとは一度本気でやり合ってみたいと思っていたんだよ」

 志波田と呼ばれた男が笑う。青龍が肩をすくめる。

「私はまったくそう思っていませんが……」

「まあ、遠慮すんなよ」

「遠慮したいですよ」

「まあまあ、つれないこと……言うなって!」

「!」

 志波田の投げた球を青龍はキャッチする。志波田は笑みを浮かべる。

「ほう、それを取るかい」

「マグレです……よ!」

「む!」

 青龍の投げた球を志波田がキャッチする。青龍が小さく舌打ちする。

「ちっ……」

「マグレでこんな球は投げられねえだろう」

「‼」

 志波田の投げた球を青龍は再びキャッチする。志波田は笑う。

「ははっ、良いねえ!」

「全然、良くありませんよ!」

「ふん!」

 青龍の投げた球を志波田も再びキャッチする。青龍が顔をしかめる。

「くっ……」

「おめえとはこうしていつまでも投げ合っていたいが……」

「そこまで子供ではありません」

「ははっ! 時間も限られている、これで決めるぜ! うおりゃあ!」

「⁉」

「C組、6ヒット!」

「ああっと、迫力ある投げ合いは志波田に軍配が上がった!」

「どうだ!」

 志波田が右手を高々と突き上げる。日光が首を傾げる。

「なんだ? 投げるごとに球の威力が増していったような……」

「あれが彼の超能力、『身体強化』よ。自分の筋力を増すことが出来るの」

「なっ、そ、そんなことが……?」

 照美の説明に日光が思わず唖然とする。

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