2年微能力組!~微妙な能力で下克上!~

阿弥陀乃トンマージ
阿弥陀乃トンマージ

第一章

第0話   荒らしの転校生

公開日時: 2023年2月8日(水) 00:30
更新日時: 2023年2月8日(水) 01:23
文字数:1,526

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「今日から新年度ね……」

 黒髪ロングのストレートヘアを一つに束ね、三つ編みにした目鼻立ちの整ったブレザーの制服姿の少女は自らが通う学園の校門前へとさしかかった。

「……」

「あら? あれは……」

 少女は学ラン姿の少年を見つける。制服が違う、転校生だろうか。その少年は無造作かつ長すぎず短すぎない髪をかき上げながら校舎を見上げて笑う。

「くっくっくっ……」

「え?」

「これがこれから俺の伝説が刻まれることになる梁山泊か……」

「は?」

 少女は思わず声を発してしまい、慌てて口元を抑えて少年の様子を伺う。だが、幸いにもその少年には聞こえていなかったようだ。

「ふっ、俺の魔眼が疼きやがるぜ……」

「え? ああ、なるほど……」

 少女は少年の顔をあらためて覗き込む。少年の左眼には黒い眼帯がしてあった。少女はなんとなくではあるが納得して頷いた。少年は呟くことをやめようとしない。

「さて、俺のこの渇きを癒してくれる奴はいるかな?」

「疼いたり渇いたりと色々忙しいわね……」

 少女はボソッと呟いて、その少年を避けるように校門に入る。

「ふっふっふ……」

「今度はなんか笑っているし……」

「はーはっはっは!」

「⁉」

 突然の大きな笑い声に少女が思わず振り返ると、少年が大げさに両手を広げて叫ぶ。

「精々この俺を楽しませてみるがいい!」

「うわ……重度の『中二病』ってやつね……まあ、私には関係ないでしょう」

 少女は少年を一瞥すると、すぐに正面に向き直った。そう、彼女は今年度から高校二年生、恐らく、いや、確実にあの気の毒な少年とは学年が違うはずだ。仮に一緒だとしても、そうそう関わり合いになることはない。少女は自らのクラスに入ると、ホームルームが始まる。

「……え~新年度の始まりですが、転校生を紹介したいと思います……どうぞ、入って」

「ふはははっ! 俺の名は仁子にこ日光にっこうだ! 俺と共に過ごせることを光栄に思うがいい!」

「……最悪だわ」

 日光と名乗った中二病の学ラン少年が教室内へ入ってきたことに少女は頭を抱える。

「……え~そういうわけで皆さん仲良くしてあげて下さい。仁子君は出席番号18番だから……あそこの席ですね」

「ふむ! やはり俺には中心こそがふさわしい!」

「中心よりかはややズレているかと思いますけどね。どうぞ座って下さい」

 教師が淡々と告げる。

「ふん……」

 日光が指定された席につく。

「え~これから始業式です。皆さん、モニターに注目。校長先生からのお話があります」

 教師が教室に設置されたモニターを指し示す。初老の男性が話し始める。

「……それではあらためて、皆さんが有意義な新年度を過ごすことを期待します。以上」

 教師がモニターの電源を切る。

「え~というわけで、今日の予定はこれで終わりになります」

「お、終わりか⁉」

 日光が戸惑う。教師が頷く。

「はい」

「そ、そうか……」

「後は皆さん、部活動など、それぞれの用事があるかと思いますので、これで解散です」

「あ、あの……」

 廊下側の一番前の席に座る少女が手を上げる。

「はい、なんでしょう?」

「先生が私たちB組の新しい担任ということでよろしいのでしょうか?」

「いえ、私ではありません」

「では、どなたが……」

「その内決まるかと思います」

「そ、その内って……」

「それでは……ああ、そうだ、東さん」

 教師が教室を出ようとしたその時、思い出したかのように少女に声をかける。

「は、はい」

「彼……仁子君に学園を案内してあげて下さい」

「な、なんで私が⁉」

「クラス長としてのお仕事ですよ。ではお願いしますね」

「そ、そんな……」

 教師が教室を出ていくと、少女の席の側に日光が立って声を上げる。

「おさげ女! 俺の『眷属』にならないか?」

「絶対にイヤよ!」

 日光からの訳の分からない申し出を少女は全力で拒否する。

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