2年微能力組!~微妙な能力で下克上!~

阿弥陀乃トンマージ
阿弥陀乃トンマージ

第4話(2)大事なのはノリ

公開日時: 2023年2月18日(土) 18:19
文字数:2,077

「!」

 クラス中の驚いた視線がその男子に集まる。

「おっと、何だか注目集めちゃった感じ~?」

 男子は遊ばせた金髪を指先でいじりながら日光の隣の席に座る。

「このクラスの生徒なのか……?」

 日光の呟きに反応した金髪が日光の方を向く。

「おっと、そこのイカした眼帯ボーイ……見慣れない顔だね、ひょっとして、色々と噂になっている転校生君かな?」

「ああ、仁子日光だ」

「そうか、俺は出席番号13番、笠井かさいげんだ、シクヨロ~♪」

「シ、シクヨロ……?」

 玄武と名乗った男子がヒラヒラと手を振ってきたのに対し、日光は戸惑う。

「そんで、何やってんの、照美ちゃん?」

「……新入生歓迎会の出し物についての話し合いです」

「! 新入生歓迎会ってアレっしょ? パーティーっしょ⁉」

「まあ、そうですね、あなたも昨年度体験されたと思いますが」

「何する系?」

「昨年度からある程度準備を進めていたのは朗読会です」

「う~ん、却下♪」

「はい⁉」

 玄武の言葉に照美が唖然とする。

「照美ちゃんさ~それはさすがに無難過ぎるっしょ~」

「何事も無難に越したことはないのですよ」

「一度しかない青春だよ? アオハルだよ~?」

「同じことを二回も言わなくて良いですから……」

 照美は額の辺りを抑える。

「せ、青春……ア、アオハル……」

「聡乃さんも真面目に板書しなくていいから」

「あ、は、はい……」

「俺たちまだ十代なんだからさ~もっと弾けちゃっても良いんじゃない?」

「別に弾ける必要は無いのですよ」

「う~ん、堅い、お堅いな~!」

「そう言われましてもね……」

「え? 他にアイデアは無いの? 本荘ちゃん?」

 玄武が聡乃に問う。

「え、えっと……まず井伊谷さんから提案のありました演奏ですね」

「井伊谷ちゃん? あら、学園に来ていたんだ、珍しい……」

「笠井くん、君には言われたくないな……」

 玄武の言葉に朱雀は苦笑する。

「で、なにを提案したんだっけ?」

「……演奏だ」

「いやあ~却下だね~♪」

「なんだと……」

 玄武の発言に朱雀はややムッとする。

「楽器の出来る生徒は少ないっしょ? 例えば今から猛練習したって、パフォーマンスにどうしても差が出来てしまう。聞くに耐えない演奏になっちゃうと思うよ~?」

「か、簡単な曲目にすればいいだろう!」

「簡単な曲にしたらかえって盛り上がりに欠けてしまうきらいがあるな~逆に会場が白けちゃうと思うよ~」

「む……」

「他には? 本荘ちゃん」

「は、はい、仁子君からの提案で合唱です」

「ほう、転校生君がご提案とは……やる気十分だね~」

「そんなに褒めても何も出ないぞ」

 玄武の言葉に対し、日光は何故か髪をかき上げる。

「う~ん、それも却下だな~♪」

「な、なんだと⁉」

「それこそ練習がものを言う演目じゃん。今からじゃ、とても満足いくクオリティまでには仕上がらないと思うよ~?」

「魂だ……」

「え?」

「魂! そう! ソウルがこもっていれば、多少の練習量不足など乗り越えられる!」

 日光は己の左胸を右手の親指で指差す。玄武が困惑する。

「ソ、ソウルときたか……」

「そうだ! 俺のソウルもそう告げている!」

「……でもさ、皆のソウルはそう言っていないみたいだよ?」

「な、なに⁉」

 日光が周りを見回す。他の生徒たちはサッと目を逸らす。玄武が笑う。

「ほらね」

「そ、そうなのか……?」

 日光が愕然とした表情で正面の照美を見る。照美が声を上げる。

「いや、そんなすがるような目で見られても困るから!」

「ソウルメイトよ!」

「いつからソウルメイトになったのよ! いつから!」

 玄武が腕を組む。

「う~ん、どれも決定打に欠ける感じだね~」

「……やはり朗読会で良いでしょう」

「駄目だ、地味過ぎる」

「魂がまったく感じられない」

「無難過ぎる、置きに行っちゃってるよね~♪」

 朱雀、日光、玄武が照美の提案を揃って却下する。照美は怒りを押しとどめながら、やや間をおいて口を開く。

「……笠井君、先ほどからダメ出しをしてばかりですが、あなたから代案は無いのですか?」

 教室中の視線が玄武に向く。玄武がおどけた仕草をする。

「おおっ、やっぱそうくる系?」

「当然でしょう」

「そうだね~あるっちゃあるんだけど……どうしようかな~」

「……ホームルームの時間も後わずかです。ここは朗読会で……」

「ああ~ちょい待ち、ちょい待ち」

 玄武は両手を上げて、照美の進行を制する。照美がため息まじりに尋ねる。

「なにかあるのですね?」

 照美の問いに、玄武がニヤッと笑う。

「パーティーならやっぱアレっしょ!」

「アレ?」

 照美が首を傾げる。玄武がパチンと指を鳴らす。

「そう、ダンスっしょ!」

「ダンスだと?」

「そう、井伊谷ちゃん、ご希望の派手派手な感じもバッチリ出せるよ~」

「それこそ各自のクオリティの差が出るのでは?」

「転校生君、ダンスで大事なのはハートだよ♪」

「今からでは準備期間が十分に取れません……」

「照美ちゃん、その辺はノリでカバーしちゃうから大丈夫だって~」

「ノ、ノリって……」

「皆も良いよね~良いと思った人は、はい、クラップ~」

(パチパチパチパチ……)

「ほい、満場一致の拍手……ダンスで決まりだね」

 玄武が立ち上がって照美に向かってウインクする。

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