2年微能力組!~微妙な能力で下克上!~

阿弥陀乃トンマージ
阿弥陀乃トンマージ

第7話(2)効率の良さ

公開日時: 2023年2月28日(火) 18:39
文字数:1,858

「大城戸三兄妹……」

「三つ子か……」

 日光が呟くと同時に、三つ子の一人、やや青みがかった髪色の男子が前に進み出る。

「ふん、お前らには言いたいことがある……」

「誰だ?」

 日光の問いに、男子がコケそうになる。照美が日光に呆れた視線を向ける。

「クラスメイトのことくらい覚えなさいよ……」

「そ、そうは言ってもだな……」

「お、俺は出席番号9番、大城戸おおきどそうだ!」

「ふむ……」

「お、お前らには言いたいことがある!」

 蒼太は日光たちをビシっと指差す。日光が首を捻る。

「なんだ?」

「お前らにはクラス長や副クラス長は任せられんということだ!」

「!」

「よって、お前らに勝負を申し込む!」

「勝負だと?」

「ああ、そうだ」

「クラス長などの座をかけてか?」

「そうだ」

「よし、受けて立とう!」

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

 日光の言葉に照美が慌てる。日光が首を傾げる。

「どうした?」

「どうしたじゃないわよ! なにをそんなに簡単に受けて立っちゃっているのよ!」

「向こうの眼差しを見ろ……」

 日光が大城戸三兄妹を指し示す。

「え?」

「とても穏便に話し合おうというような雰囲気ではないぞ?」

「……」

「そ、それはそうかもしれないけれど、クラスメイト同士で争うだなんて……」

「争うこと、厳しく切磋琢磨することによって得られるものもある!」

「……あるの?」

「……多分」

「多分って!」

「さあ、勝負とはなんだ⁉」

「勝手に話を進めないでよ!」

「どんと来い!」

「ノリノリね!」

 日光と照美のやり取りを見ながら蒼太がフッと笑う。

「勝負は一対一で行う……」

「なるほど、ちょうど三人ずついるからな」

「え⁉ わ、私も頭数に入っているんですか⁉」

 聡乃が驚く。日光が頷く。

「当然だ。副クラス長なのだからな」

「そ、そんな……」

 聡乃が唖然とする。蒼太が声を上げる。

「大城戸三兄妹の長兄として……東照美!」

「え⁉ わ、私⁉」

「貴様に勝負を申し込む!」

「女に勝負を申し込むとは……」

「長兄として……どうなの?」

 日光と照美が渋い表情になる。蒼太がぶんぶんと手を振る。

「長兄が担うべきはクラス長! よって挑む相手は自ずと貴様になるだろう!」

「だからといって……」

「安心しろ! 別に殴り合いをしようというわけではない!」

「え?」

「勝負は……これだ!」

 蒼太が指し示した先には、大量の落ち葉があった。照美が首を傾げる。

「落ち葉?」

「用務員さんに頼んで、とっておいてもらった、ここ数日分の落ち葉だ!」

「そ、それをどうするの?」

「逆に問う! 東! これほどの量の落ち葉を見つけたらどうする⁉」

「え、そ、それは、掃除するわね……」

 照美は戸惑いながら至極真っ当な答えを述べる。

「そうだ、掃除だ!」

「……だから何よ」

「貴様と俺でお掃除対決だ!」

「お、お掃除対決?」

「この大量の落ち葉をいち早く処分出来た方が勝ちだ!」

「か、勝ちって……」

「勝った方がクラス長ということでいいな⁉」

「分かった! いいだろう!」

「に、日光君! だから勝手に決めないでよ!」

「要は勝てばいいのだ」

「そうは言っても……」

「よし、箒とちりとりを持って……掃除開始だ!」

「こ、こんな大量の落ち葉、どうすれば……」

 照美が箒とちりとりを持ちながら頭を抱える。蒼太が笑う。

「先に決めさせてもらう!」

 蒼太が右手を掲げると、大量の箒とちりとりが出現する。照美が驚く。

「ええっ⁉ 箒とちりとりが増えた⁉」

「見たか! これが俺の微能力、『コピペ』だ!」

「コ、コピペ⁉」

「箒を大量に『コピー』し、そこら中に『ペースト』する!」

 落ち葉を囲むように箒とちりとりが設置される。聡乃が困惑する。

「お、落ち葉を集めやすくなっている⁉」

「そういうことだ! この勝負もらった!」

「⁉」

「まずこちらを集めて……次はこちらだ! ……お次はこっちだ!」

「え……?」

 蒼太が一組ずつ箒とちりとりを使って落ち葉を集め、次の場所に移動しているのを見て、照美があっけにとられる。蒼太が汗を拭う。

「ふう! これはなかなか骨が折れるな!」

「えっと……」

「どうした東! このままだと俺の圧勝だぞ⁉」

「……『小火にならない程度にするンゴ』」

「ぬおっ⁉」

 照美が火を放ち、落ち葉をあっという間に焼却する。

「処分って言っていたから……これでも良いのよね?」

「そ、そんな能力を持っていたのか? ま、負けた……」

「まあ火事の恐れもあるから、あまり多用はしたくないけど……」

「あ、東さんの勝ちです!」

「くそ!」

 聡乃が声を上げる。蒼太が膝をついて地面を叩く。

「……せめて自分の体もコピぺすれば、もう少し効率が良かったのではないか?」

 日光は小声で呟く。

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