「……皆集まったようだね」
放課後になり、四天王が校庭に顔を揃える。
「話し合いをするんだって?」
白虎が首元を抑えながら尋ねる。青龍が頷く。
「そのように伺っております」
「なんの件でだ?」
「それはご存知のはずでしょう……」
重ねて尋ねる白虎に青龍が淡々と答える。玄武が口を開く。
「まあまあ、ピースフルな話し合いをしようよ~♪」
「へっ、ピースフルね……」
「悪くない提案だと思うが?」
玄武の言葉を鼻で笑う白虎を朱雀が睨む。白虎が笑みを浮かべる。
「そう言いながら、のっけからケンカ腰じゃねえか、井伊谷?」
「そんなつもりはないが」
「雰囲気で丸わかりなんだよ」
白虎が朱雀の方に向き直り、睨み返す。玄武が頭を抱える。
「あ~あ~ちょっとちょっと、二人とも~」
「まあ、結局こうなりますよね……」
青龍が呟く。
「青龍っちもそんなこと言わないでさ~」
「ですが玄武さん……」
「うん?」
「かえって分かりやすくて良いのでは?」
青龍が両手を合わせ、指の骨をポキポキと鳴らす。白虎が笑う。
「おう、やる気満々じゃねえか、本郷」
「この際序列ははっきりさせておいた方が良いですから」
「ふむ……久々に白黒はっきりさせるのも良いかもしれんな」
朱雀が顎をさすりながら呟く。玄武が戸惑う。
「ちょっと、井伊谷ちゃん~」
「笠井くん、やる気がないなら下がっていてくれ」
「おうよ、ケガしたくなかったらな……」
「……いやいや、舐めてもらっちゃあ困るよ?」
朱雀と白虎の言葉に玄武の顔色が変わる。青龍が構える。
「それではいざ尋常に……」
残りの三人も構える。
「「「「勝負! ……って言うか!」」」」
「⁉」
四人がそれぞれある方向に殴りつける。四体に分身していた忍者が一体に戻る。
「ふん……」
白虎が鼻の頭を擦る。
「まさか……気付いていたのか?」
忍者が中性的な声で呟く。朱雀が頷く。
「ああ、僕たちを同士討ちさせようという君の魂胆にはね」
「存外鋭いな……」
忍者が顎に手を当てて頷く。
「何のためにこんなことを?」
「答えるつもりはない」
玄武の問いかけに忍者は首を振る。青龍が右腕を軽く振る。
「それならば……答える気にさせるまでです」
「……」
「はあっ!」
「!」
青龍が勢いよく飛びかかると、忍者は後方に飛んでかわす。それと同時に忍者が拍手をすると、被っていたお面が鬼の面に変わる。そして大量の豆が飛び出し、青龍に当たる。
「くっ! こ、これは!」
「鬼の面、『怒りの豆鉄砲』!」
「ま、豆の量が多くて近寄れない……」
「本郷青龍殿、貴方は完璧に近い『スパダリ』……その質を凌駕するのは圧倒的な量!」
「むう……」
「情けねえな、本郷! アタシが行くぜ!」
「ふん!」
白虎が飛びかかろうとするが、忍者はこれもかわし、それと同時に再び拍手する。被っていたお面がひょっとこの面に変わる。そして、面の口から炎が噴射される。
「なっ⁉」
「ひょっとこの面、『楽しみの焼鉄砲』!」
「ち、この炎の量じゃ、近寄れねえ……」
「扇原白虎殿、貴女の『煽り』に乗るのは危険……ならば先に燃やすまで!」
「ぬう……」
「扇原ちゃん、一本取られた感じかな~? 俺が行くよ!」
「はあ!」
玄武が飛びかかるが、忍者はこれもかわして、同時に拍手する。被っていたお面が狐の面に変わる。そして、大量の水が飛び出し、玄武の体に当たる。
「うおっ⁉」
「狐の面、『哀しみの水鉄砲』!」
「こ、これは……涙?」
「笠井玄武殿、貴方の『パリピ』に調子を狂わせられてはマズい、女の涙で対抗する!」
「参ったね、それは強力な武器だ……」
「感心している場合か、笠井くん! こうなったら僕がいく!」
「せい!」
朱雀が鋭く飛びかかるが、忍者はこれもあっさりかわし、それと同時に拍手する。被っていたお面がおかめの面に変わる。そして、折り紙から衝撃波が飛び出る。
「なっ⁉」
「おかめの面、『喜びの紙鉄砲』!」
「そ、そんなおもちゃで……」
「井伊谷朱雀殿、貴女の『垢バン』はとてもデジタル……ならばこちらはアナログで!」
「ぐ、ぐう……」
四天王が後退を余儀なくされる。忍者が笑う。
「四天王、こんなものだったか……一気に決めさせてもらうとするか」
「待て!」
「‼ 貴様は……」
そこに日光と照美、聡乃が駆け付ける。
「誰だか知らんが、好きにはさせんぞ!」
「何故ここに……? 職員室に呼び出されたはずでは?」
「聡乃から何やら企みが進んでいると聞いてな!」
「! まさか、あの時の女子トイレ……」
「す、すみません、井伊谷さんとの話、聞いちゃいました……」
聡乃が申し訳なさそうに手を挙げる。
「ち、あそこまで存在感を消せるとは……さすがは陰キャ!」
「い、いやあ……」
「聡乃さん、褒めているわけではないと思うわよ」
照れくさそうにする聡乃に、照美が突っ込む。日光が声を上げる。
「四天王が世話になったな、今度は俺が相手だ! 『宙二秒』!」
「! ……面白い」
日光が一瞬で距離を詰めて体をぶつけると、忍者の面が外れ、紫がかったショートヘアーの整った容姿の女性が顔を出した。女性は笑みを浮かべ、日光の方に向き直る。日光が叫ぶ。
「照美! あいつは何者だ⁉」
「出席番号22番、八角花火さんよ……」
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