2年微能力組!~微妙な能力で下克上!~

阿弥陀乃トンマージ
阿弥陀乃トンマージ

第1話(2)左眼は何色だ?

公開日時: 2023年2月8日(水) 23:19
文字数:1,991

「な、なんだこいつ……」

 大柄な少年たちは戸惑いの目を日光に向ける。日光がビシっと指を差して口を開く。

「おいお前ら! くだらない行為はやめろ!」

「せ、先輩なんじゃねえか?」

「3階から飛んできたってことはもしかして2年か? やべえな……」

「へっ、大したことねえだろ」

 少年たちの中でもリーダー格と思われる少年が前に進み出る。

「お、おい……」

「マ、マズくねえか?」

 リーダー格の少年が振り返って笑う。

「ビビんなよ。このボロっちい校舎から出てきたってことはアレだろう?」

「あ、ああ……」

「それもそうか……」

 リーダー格の少年の言葉を聞き、他の少年たちも笑みを浮かべる。

「そうだよ、微妙な能力の持ち主ってことだろう? つまり……」

「む……」

「俺ら1年C組の、『超能力者』の敵じゃねえってことだよ!」

「ぐおっ!」

 リーダー格の少年が右手をかざすと、日光が後方に軽く吹き飛ばされて、転倒する。照美が声を上げる。

「日光君!」

「くっ、な、なんだ……?」

「はっ、これが俺の超能力、『強風』だよ」

「きょ、強風だと?」

「どうだ、ビビっただろう?」

 日光はゆっくりと立ち上がって呟く。

「……ふん、そよ風でも吹いたのかと思ったぞ」

「ああん?」

「大した能力ではないな」

「言ってくれるじゃねえか! おい、お前ら!」

「おう!」

「ああ!」

「うおっ⁉」

 リーダー格の少年の号令に従い、他の二人も右手をかざす。三方向から強風を喰らった日光は再び転倒する。リーダー格の少年が笑う。

「へへっ! どうよ、俺らの連携は?」

「ぐっ……」

「やめなさい! あなたたち!」

 照美が注意する。リーダー格の少年が視線を向ける。

「あん?」

「職員室に行って、先生を呼んでくるわよ! いくら1年生だからってやっていいことと悪いことがあるわ!」

「む……」

「能力の制御が上手く出来ていないその現状、撮影させてもらったわ!」

「え?」

「この映像を見れば、何らかの処分が下るでしょうね……『矯正施設』送りとか……」

「お、おい! やべえよ!」

「待て待て、そう慌てんなよ」

 リーダー格の少年が慌てる二人の仲間を落ち着かせる。その余裕に照美は首を捻る。

「なに……?」

「よく見ろよ、このお姉さん、結構いい女じゃねえか……」

「あ、あら……なかなか見る目はあるようね」

 照美は満更でもないというような反応を見せる。

「ちょうどいい。このお姉さんと遊んでもらおうぜ!」

「きゃあ! な、何をするのよ!」

 リーダー格の少年が右手をかざすと、軽い突風が吹き、照美のスカートがめくれそうになる。照美は慌てて、スカートの裾を抑える。リーダー格の少年が笑う。

「へっ、おいお前ら!」

「お、おう!」

「へへっ!」

 他の二人も右手を掲げ、三方向から風が吹く。スカートが今にもめくり上がりそうである。照美がスカートを抑えながら三人組を睨み付ける。

「や、やめなさい! 本気で怒るわよ……」

「そんな状態で一体何が出来るよ!」

「くっ……」

「待て!」

「!」

 皆が視線を向けた先には、眼帯を外し、学ランを脱ぎ捨て、赤いTシャツ姿になった日光の姿があった。リーダー格の少年が大声で笑う。

「なんだよ、パイセン、俺ら今、この美人のお姉さんに遊んでもらっているからさ」

「そうそう、空気読んでもらえる?」

「邪魔しないでくれよ~?」

「そういうわけには……」

「ほらあっ! もう少しであの鉄壁の守備を誇っていたスカートがめくれるぜ⁉」

「おお⁉」

 あろうことか日光もその様子を見物し始めた。照美が怒る。

「ちょっと! 日光君までなにやってんのよ! そこは助けに入る流れでしょう⁉」

「はっ! そ、そうだな。少し、いや、かなり残念だが……」

「本音がダダ漏れよ!」

「くっ、おい、おさげ女!」

 日光が照美の側に近づく。

「東照美よ!」

「そうだった東照美! 俺の左眼を見ろ!」

「ええっ⁉」

「いいから早く!」

「もう、なんなのよ! って、ええ⁉」

 照美が驚く、日光の左眼が緑色に光っていたからである。日光が問う。

「左眼は何色だった⁉」

「み、緑色よ!」

「そうか、今日は緑か!」

「今日はって……どういうことなの⁉」

「あらためて言うぞ! 東照美! 俺の『眷属』になれ!」

「あらためてイヤよ!」

「ぐっ! な、ならば、『同志』というのはどうだ!」

「志を同じくした覚えはないわ!」

「むうっ! ならば、『仲間』というのはどうだ!」

「高二なのに中二病気取りの奴と仲間とか思われたくないわ!」

「くっ……どうしてなかなか我儘だな!」

「あなたに言われたくないわ!」

「そ、それならば、えっと……その……」

 日光が恥ずかしそうな素振りを見せる。照美が呆れる。

「今更恥ずかしがることあるの⁉」

「え、ええーい! 東照美! お、俺の『友達』になれ!」

「……ああ、まあ、友達からなら……」

 照美はとりあえず頷く。日光が不敵な笑みを浮かべる。

「ふふっ! 理解者を得ることによって、俺の持つ能力は強化されるのだ!」

「⁉」

 日光の背中に片翼の大きな黒い翼が生える。

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