[短編版]PILOT GIRLs/EXCEED-WARRIOR

来賀 玲
来賀 玲

MISSION 04 :かつて鳥は恐竜だったと言われている

公開日時: 2021年10月11日(月) 18:46
文字数:7,562







「───ンガッ!?」


 狭いコックピットで感じた衝撃で、彼女は眠りから目覚めた。


「……地震かな?うん。地震だよね……やだー、仕事やだ。昨日も遅くまでデータまとめてたのに……やだやだ、これは地震、地震であ」



<クソテロリスト>

『──スワン!!出番だ!!』



「デスヨネー。

 …………やっぱテロリストってクソだよね……」



 項垂れる。

 同時に、暗いコックピット内が、いや明るくなる。


 やる気はないが、思考はすでに機体の立ち上げへ向かっている。

 あとは、それに機体が答えるのみ。


 起動音声はない、情報は伝わっている。

 脊椎に埋め込まれた情報ファイバーから、いやもはや脊椎そのものが第2の脳。

 脳の情報は脊椎から機械信号へ、機械信号は脊椎から脳へ。

 解析、出力、入力、判断、回答、されていく。



「この前のナミフェス行けなかったし、なんか私働きすぎじゃないかな……こんな依頼までさ……まぁいいか」



 eX-Wエクスダブル立ち上げ完了。

 ブゥン、と頭部カメラが────バイザーのように見えるがその線にぎっしり並んだ無数のカメラの複眼が光を帯びていく。




「さて……この機影達が今度の実験体候補か」




          ***



<機体AI音声>

《友軍機の反応を確認。数は3》


「お?」


 ふと、ホームランタイガーにレーダーに友軍反応が出たので向かってみれば、アズサの視界に意外な姿が見える。



<重二脚武器腕機のスワン>

『爆発はこっちよ!こうなりゃ意地でも敵にダメージを与えてやるわ!!』


<中量二脚機のスワン>

『待って……!そんな速く行かないで……!』


《重量二脚ブレードのみ機のスワン>

『頑張って!転ばないように気をつけて!!』


 前から、全身ミサイルでガトリング武器腕の重量2脚、ほぼ支給機体の中量2脚のスナイパーライフル持ち、武器がブレードしか見えない重量2脚。


 足取りが不安そうなeX-Wエクスダブル達だが、あちこち装甲は焦げているが無事なようだ。


「挨拶しとくか、友軍やもん。

 そこのトリオー!

 なんやあの地雷原の生き残りかー!?」



<武器腕機スワン>

『あなたは……!?』


<中量二脚機のスワン>

『あの時喋ってた人!!』


 どうやらアズサ以外、関西弁を喋れる人間はいないようで一瞬で誰か特定された。


「せやけど恥ずかしいなぁ……んで、生き残りはコレだけか?」


<重量二脚機のスワン>

『怖かった!!怖かったよぉ!!

 みんな、みんな足が……eX-Wのが吹き飛んだんですぅ!!!

 それで、私、運良くって、踏まなくって、飛んで、隠れて』


「いや落ち着きぃや!!」


<重量二脚機のスワン>

『わひゃい!!』


 ピィン、と重量二脚を起用に操って気をつけさせる。

 強化人間か、と一瞬思ったアズサだったが、強化人間ならもっと頭に描いた別の姿勢をとりそうだとも思う。

 武器も両腕にブレード……レーザーっぽいがアヤナミじゃない、見たことのない武器を持っている。


<武器腕のスワン>

『……私達、運良く最初に離れたeX-W……あなた達よね?それの動きを見て、なんとか地雷を回避できたの』


 そう言う重装甲なバーンズ製コアや意外にもエンフィールドラボラトリー製ガトリング武器腕とミサイルで固めている機体。

 エンブレムは、真っ直ぐな翼に二つのジェットエンジンを付け、機種にガトリングのある戦闘機のような物、としか判らなかった。


<中量二脚機のスワン>

『その……すっごく間一髪でした。

 なんであの場で罠が分かったので?』


 最後、可愛いチワワのエンブレムが乗っている、ほぼ初期機体のスナイパーライフル持ちにシンセイスペーステクノロジー製のレールガンを背中に持たせたタイプの機体がそう尋ねてくる。


「ウチやない。勘のええ子がいたおかげで生き残れた。

 そして基地に1発食らわせたんや!4回裏初ヒット!

 1-1、同点ってところや。

 あんたら、ウチとその仲間と一緒に逆転にする気ある?」



<武器腕機のスワン>

『ベースボールね。クリケットの方が好きだけど、良いじゃない

 私、ブリジット。イギリス出身なの。

 でも機体名は、アメリカの血筋『サンダーボルト・リヴァイブ』よ?』


「サンダーボルト……雷さまか、強そうやな」


<武器腕機のスワン>→<ブリジット>

『ええ。私がハンドレページ ヴィクターの次に好きな航空機。

 ただ血筋がドイツなのは腹立つけど』


「……何言うとんの自分?外人な上にマニアかなんか?」


<ブリジット>

『まぁそう言うこと。

 そういえば勢いで一緒に来たけどあなた達は?』


 と、ブリジットが通信で残り二機に振り向いて尋ねる。


<重量二脚機のスワン> →<ハヤテ>

『私、一文字ハヤテ!!

 16歳!好きな物は週に一回のおばあちゃんの肉野菜炒め!』


 と、まずもう一つのエクレールメカニクスの重量機が元気よく答える。

 エンブレムには、昔流行っていたらしい仮面のスーパーヒーローがポーズを構えている。


「合成肉のヤツ?」


<ハヤテ>

『ううん、本物の鶏肉……どっかの部位かな……でももやし炒めたのも鶏ガラだし、相性がいいんだよきっと!!』


 鶏肉は、合成食料がまだ大部分のこの世界でも、まだ手に入りやすい本物の肉だった。


「本物か……!ええよな、たまに2切れぐらい!!

 ウチは月に一回やでマジもんの肉は……

 キャベツとかも高級品やろ?

 ちっちゃい、お好み焼き作って……そっからは7人兄弟、仁義なき肉の争奪戦や」


 ふと、アズサは近くのコンソールに張り付けた、目つきの悪い色んな兄弟達と自分、両親の写る写真が目に入る。

 今言った言葉の光景が、頭の中に自然と浮かんでくる。


<ハヤテ>

『わぁ……家族いっぱいいるんだね!』


「せやで!浪速なにわの女、嶋崎アズサさんはそんな腹ぺこで元気すぎるのが玉にきずなわんぱくな兄貴とバカ弟に、美人やけど肝っ玉がデカいしすぐ手が出る母ちゃんに、コワモテでヤクザみたいな顔やけどまぁスジだけは通す良い男な父ちゃん達の生活をよぉ〜くするために傭兵始めたからな!

 まぁ、こんな状況やし何度父ちゃん母ちゃんにいちゃん、あのバカって叫んだか知らんけど」


<識別分け不明 恐らく両方からの通信>

『……そっか……』

『……そうよね……』



 と、アズサの言葉に無線越しに2機とも何故かしょんぼりする。

 おっと、とアズサもなんとなくを察する。


「……最後の子ぉ、なんや大人しいな?」


 だから、話を変えようと、黙っていた中量二脚機のスワンに話しかけた。


<中量二脚機>

『…………』


「……オーイ!無線壊れたん!?無視は酷いでー、泣いてまうよ、ウチ?」


<中量二脚機>

『……あっ!

 ごめんなさい……つい考え事を……』


「なんや余裕あるね?」


<中量二脚機のスワン>→<カスミ>

『いえ……あ、私、カスミって言います。

 澄川すみかわカスミ……』


「カスミちゃんか。

 これで生きてるのは全員か?」


 ホームランタイガーのアンテナ頭を動かして、周囲を光学センサーで確認してアズサは言う。


<ブリジット>

『みたいね。私たちは運が良かった』


「あー……ひょっとしたら生き残ったのかもな。

 ここまで笑えん状況や、正直何が出てきてもおかしくないで、ほんま」


<ハヤテ>

『こ、怖いこと言わないで欲し』






<機体AI音声>

《未確認eX-Wの反応急速接近。危険です》





 各々のコックピットに響く、安い物から奮発したものまであらゆる補助AIからの警告音。


 アズサ機とカスミ機が背中に増設レーダーを持つ。

 方角、例の爆発を起こした場所から。


 チカチカ、と光るアレは……ストライクブースト使用時の物。



「いるかぁ……敵にもeX-Wが!!


<ハヤテ>

『えぇ!?!わ、私が余計なこと言ったから!?』


「せやな。覚悟決めぇ!

 カスミちゃん、迎撃一緒に頼めるか?」


<カスミ>

『分かりました……!』


 ホームランタイガーが4脚を広げ安定姿勢からの右腕のリボルバーリバティー社製大口径スナイパーキャノン、『マウンテンブレイカー』を構える。


 と、隣のチワワエンブレムの中量脚は、片膝立ちの構えで背中のシンセイスペーステクノロジー製レールガンを構える。


(ほー……基本に忠実やん……)


<カスミ>

『……相手の動きが直線で……狙える……!』


 繋がりっぱなしの無線から聞こえるカスミの声通り、レーダーでも目視でもほぼ一直線にやってくる敵が一体。


 捉える赤い機体。

 逆関節脚、軽量、それに似つかわしくないゴツくて巨大なライフルが右腕に。

 射線の中、スコープに映る相手の機体の背中の光が消える。


「今や!!」


 ズドォンッッ!!!

 バシィィィィン!!!


 二人の大口径武装が火を拭く。

 レールガンの方がやはり速い。機体に着弾まで残り数mまで一気に迫る。


 ───ドヒャァ!


 しかし、音速の100倍は出ている弾丸達を、敵の赤いeX-Wはアサルトブーストで左へ回避。

 その右腕の巨大なライフルが、横を向いたままこちらへ向けられる。


 カァオッ!!!


 空を切り裂く独特の音。

 恐らくプラズマライフル。光るプラズマの弾が狙うは……


「って、ウチかい!?!」



 バシュゥ!!


 とっさに、ホームランタイガー右腕のスナイパーキャノン『マウンテンブレイカー』を盾にし、この時ばかりはそんな反射神経があって良かったと内心思う速度でパージしアサルトブーストの移動によってプラズマのダメージ防ぐことができた。


 神様、仏様、そしてこんな反射神経をくれたご先祖さまありがとう。


 そこまで考えてアズサは、「言っとる場合ちゃうねん!」と心で叫んで、我に帰る。


 ガシャン、ズドン!!!


 戦慄した顔で、二人のeX-Wのカメラは背後で爆発したスナイパーキャノンの残骸を見る。


(あの距離で当てて来よった……!?

 プラズマライフルって、そんな距離当てられるものか……!?)


 プラズマライフルは威力こそエネルギー兵器最強だが、大気や重力の減衰などの理由で射程が短い……

 正確に言えば、弾丸の軌道で飛んでくれない。


 それをスナイパーキャノンやレールガンの射程で当ててきた相手の、恐ろしいシルエットが飛んでくる。


 近くで見れば恐ろしいほど血のように真っ赤な装甲、ガシャンと実際の重さより大きく地面を鳴らす逆関節の軽量機。


 左肩にOという風に見える白いエンブレムに、右手に巨大なライフル、左腕にはブルパップタイプのアサルトライフルのような武器。


 その背中の、閉じていた扇子が開くように広がる発射態勢の形が独特的な、アズサ達も見たカタログにも乗っていたシンセイ製垂直ミサイル『赤蠍星十三式ANTARES-13が開き放たれる。


 ボボボボ、ヒュゥゥ!!



「逃げるで!!アレ手練れや!!」


 判断は早く、全機方向転換、ストライクブーストを起動。

 4発、放たれたミサイルが高速で上から迫ってくる。


「アカン!!ストライクブーストでもミサイルよりは遅いで!!」


<ハヤテ>

『というか後数秒でエネルギーが!!』


<カスミ>

『どうしますか……!?』


<ブリジット>

『足止めに使う気でしょ!!

 だったらこれよ!!』


 ブリジットの言葉と共にサンダーボルト・リヴァイヴの両肩の武器のハッチが展開。

 ヒュンヒュンと音を立てて赤く光る球が発射される。


<ブリジット>

『ブーストをやめて!!』


「なるほど『フレア』か!!」


 4機がストライクブーストを止めた瞬間、ミサイルが赤い光に誘われて誤爆する。


 今の誘導兵器撹乱弾フレアは、その名前のままだが単純な赤外線誘導だけではなく、セミアクティブレーダーミサイルに対しても有効なのだ。


<ブリジット>

『足止めちゃダメよ!!小ジャン移動開始!!

 それでアズサだっけ!?どこ行く気!?!』


 即座に通常ブースターと脚力による小ジャンプ移動へ移行。

 シンセイ製4脚機であるアズサは、宇宙移動用である機能であるホバー移動を開始する。

 こちらは駆動用に回される待機エネルギーと呼ばれる部分があるが故にコンデンサからのエネルギーは消費しないが、その分回復は遅くなる。

 もっともブーストを機動しなければ実弾主体なので平気なはずだ、とアズサは判断してそのままホバーで移動をする。


「ウチの仲間と合流する!!

 多分、3機は来てくれるで!!」


<ブリジット>

『────それ間に合う?』


 瞬間、頭上を通り過ぎる光。


 そもそも敵の内装───ブースターやジェネレーターが


 敵の反応が気がつけば前へ。

 アサルトブースト応用機動のアサルトターンで素早くこちらへ向いた赤い機体が、左腕部のアサルトライフルを向ける。


「無理やったわぁぁぁぁぁぁ!?!?!」


 タタタタッ!タタタタッ!!


 プルバップタイプのそれが火を拭く。


<ブリジット>

『皆散らばって!!』


<カスミ>

『ぐっ!?』


 その場全員が何発かを受けて防御シールドエネルギー値が、AIがデータ化した装甲値が減る。

 思ったより衝撃が強いために移動速度がどうしても下がる。


「あかんこのままじゃウチら死ぬゥ!!」


<ハヤテ>

「逃げられないなら……戦うしかない!!」


 その場の機体達が散開する中、ハヤテ、と名乗った元気な人間の乗る重2脚が、その重装甲にエクレール製らしい莫大な防御シールド出力でダメージを気にせずに距離を詰め始める。


<ハヤテ>

『うぉぉぉぉぉぉぉ!!!

 おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』


 ブーストチャージキック。

 綺麗なフォームで放たれたそれは、コアパーツ直撃コース。

 しかし、交差する瞬間、信じられないことに相手の機体は逆関節足を少し下げ、紙一重で蹴りが赤い装甲を擦りながらも避ける。


 いや、

 その一瞬のうちに逆脚の膝のブースターが光る。


 ドヒャァッ、ガキャァン!!


<ハヤテ>

『ガッ!?!』


 真っ直ぐ空中を進む物体は、進行方向以外からの力には弱い。


 ハヤテの機体のキックが上をかすめる瞬間、赤い機体は『真上へ』アサルトブーストした。

 結果ハヤテの乗っていた機体は、頭から地面に激突。

 そのまま沈黙……恐らく中の人間が失神したのだろう……運が良ければの話だが。

 運が悪ければ首の骨やら何やらが折れている。


「なんやあの動き……!!」


 アズサは、この一瞬で大量の冷や汗をかくほど戦慄する。


 eX-Wの動きじゃない。


 まるで人間の達人の動きがeX-Wサイズになったような……

 複眼のような目の光をこちらに向ける、あの赤い逆脚機は、


 機械なのに、そんな生き物じみた動きを、機械のパワーのままやっているような……


<カスミ>

『ハヤテ……ちゃんは……無事なんですか……??』


「分からん。あんな綺麗に地面にキスしたからな……

 ま、シートベルトしてそうな良い子やし、神さんがおわすっちゅーなら五体満足にしてくれるやろ」


 何度も言うが運が良い話である。

 アズサも気休めでこう言ったにすぎない。


<ブリジット>

『神様がいるってんだったら、なんであんなバケモノ私達に寄越すのよ……!』




 ブリジットの言葉がこの状況を最も的確に表している。




「悪い子やからかもな!知らんけど!」


 

 4脚の中央に位置する格納スペースからブレードを取り出して、ホームランタイガーの右腕につける。


「なら……やることは一つやで……

 まぁ、



 ふと、目の前に広がるカメラの情報とホームランタイガーのコアだけの半透明キャノピーの光景を統合して周りに浮かぶ3D映像無線が繋がっている事を表すウィンドウを……


 <ソラ>と書かれた部分を見てそう呟く。



          ***



 同時刻、テロ組織『ミレニアム』基地入り口の一つ。


<ミレニアム古参兵>

『貴様、何をしている!?』


 現代建築と同じぐらい高い、最終戦争よりずっと前からそびえ立つ巨木達が並んでいる森の中、作業用MTが地面にワイヤートラップを張り巡らしていた。


<ミレニアム新兵>

『は!命令通り、敵の予想ルート上に罠を張って!』


<ミレニアム古参兵>

『どこのバカがこんな場所を予想ルートにしやがった!!

 今すぐ、『あの木の上』!

 少なくともMW2!』


 その命令は、困惑のあまりえぇ、と新兵が口に出してしまうほど驚くべき物だった。


<ミレニアム新兵>

『木の上にですか!?』


<ミレニアム古参兵>

『当たり前だ!!

 お前らまさか、eX-WエクスダブルをMWみたいな『歩行型兵器』だと思ってるんじゃ無いだろうな!?!』


<ミレニアム新兵>

『えぇ……それとあんな高い場所にワイヤートラップを張る理由が関係あるんですか!?』


<ミレニアム古参兵>

『大ありだ!!!

 音響センサーを起動して耳かっぽじって周りの音を聞いてみろ!!』


 言われるがままに、作業用MWの音響センサーを付ける。

 …………サァー、と樹々がそよ風に吹かれて揺れる音以外聞こえない。


<ミレニアム新兵>

『……静かですね……木々のざわめきしか聞こえな、


 って何してんですか!?』


 新兵の乗るMWの横で、パシュン、パシュン、と唐突に信号弾を撃ちあげる古参兵のMW。


<ミレニアム古参兵>

『来たぞぉ……!!

 天狗囃子てんぐばやしだ!!』


<ミレニアム新兵>

『テン……なんです??』


<ミレニアム古参兵>

『今日は風なんぞ吹いてない!!風速計を見ろ!

 そんな日にこの巨木の葉が擦れ合うような音が響くか!!

 天狗囃子だ……eX-Wが来たぞ!!』


 ワイヤートラップ装置を樹々の高いところへ打ち込み展開させ、そう言う古参兵。


<ミレニアム新兵>

『そのテンなんとかってなんなんですか!?

 なんでそんな高いところにトラップを!?!』


<ミレニアム古参兵>

『天狗というのはこの国のもう少し南にいる伝説の魔物の事だ!

 風のない日に木を揺らしたり、』


 コンッ!コンッ、コンッ、コンッ……


 ふと、遠くで何か、まるで木に斧でも叩きつけたような音が響く。


<ミレニアム古参兵>

『……誰もいない山で、気が切り倒されるような音を出す魔物だ。

 俺はこの話を出身が日本の奴に聞いた時は、アホらしいや不思議だとかそれ以前にこう思った……!」



 やがて、機械の駆動音と何かの光が見え、木々のざわめきが近づいてくるのが音響センサー越しでも分かるようになる。




<ミレニアム古参兵>

『eX-Wが『この巨木を登る音』みたいだなと!」




 ミレニアムMW達の視線の先、

 古くより聳え立つビルより巨大な樹々の間、



 ガシャン、コンッ!!ガシャン、コンッ!!



 二足歩行で木を『蹴って』登る機動兵器が、


 そう、『木を蹴って進んでくる』7mの機械の巨人が見えた。



<ミレニアム新兵>

『なんだあれ!?』


<ミレニアム古参兵>

『あれがeX-Wエクスダブルだ!!


 ブースターがない時代から、市街地を、塹壕を、渓谷に作られた要塞から名だたる名峰を、


 伝説の機動兵器『EXCCED-WARRIOR』の恐ろしさだ!!』



 ワイヤートラップを見るなり、木の最頂部まで一気に蹴り上がり、ブースターを初めて起動して下のトラップをハイレーザーライフルで撃ち抜く一機。


 それを見てミレニアムの二人は、攻撃能力が無い故に最後の仕事、照明弾の赤、『突破された』の意味のそれを打ち上げて後続の数機を見送った。


<ミレニアム古参兵>

『お前も生き残っている間は語り継げ。

 天狗の伝説と共に、eX-Wの恐ろしさをな』


<ミレニアム新兵>

『…………はい』



          ***

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