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異世界には夢がある!
ウィリアム・フロック🇺🇸🤝🇯🇵
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三話

公開日時: 2023年9月25日(月) 16:07
文字数:2,980


 考え込む仕草を取る。ニーナとしては実力がバレるのはしがらみが増えるため避けたかったが、ジャスティスの目で制されてしまった。


『情報取得……治安維持組織はこの都市では中堅レベルの実力者達の集まりです。その中で一番強いというのは身分をある程度強引に保証する方法としてはそれなりでしょう』


 治安維持組織というのは、そもそもその機構として暴徒を武力で制圧できる都市の機関としても上位の存在だ。それはこの世界でも変わらず、武力が必要となる。

 上位武力を持つ集団の誰よりも強い。そんな人物の情報が広まらない筈がない。つまるところ、知らない筈がない人物という事であり、あり得ない存在だという事。どう説明するつもりなのかと待っていると、ジャスティスはとんでもないことを言い出した。


「この国の外から来たから。知らないのも無理ないわ」

「いえ、しかし……」

『疑問。この国や文明レベルは上澄みに該当する。外から来た者がより上位に存在するとは考え辛い。この国は大規模地下ダンジョンを抱えている。そこから発生するモンスターは蠱毒方式で鍛錬され強力である。そこでモンスターが地上へ噴出しないように水際対策で押し止める冒険者の強さと外の存在では強さのレベルが違う』


 そう。治安維持組織のメンバーが困惑しているように、この国のこの都市以外で、ここの組織以上に強いのはそれだけあり得ない。何故なら外で暮らしモンスターから生まれたモンスターよりも、ダンジョン産のモンスターの方が紛れもなく強いから。


「外にもとんでもなく強い相手というのはいるわ。例えば1級以上の力を持つが故に区分けできないエクストラ枠、特級モンスターのバハムート・ベヒーモス・神龍だったりね」


 第一級冒険者を有する過去最強冒険者組織が苦戦したモンスター。当然その派生的モンスターが存在するならば、それは強敵だ。そもそもそんなモンスターが居たことすら初耳なのだが、なんとか表情を整えている。騙しているようで悪い気もするが、異世界から来たかのような言葉と比べれば遥かに信じられる情報だ。


「もちろん、それだけで特級に至るとは思えない。でも、可能性というのはダンジョン外だろうと適応される言葉よ」


 そこまで言われてしまえば言い返すことなど出来まい。このメンバー達だって、色々な修羅場を乗り越えて一級冒険者となった筈だ。強くなる大変さは身を持って実感しているだろう。


「ふむ」


 ───だからこそ、納得のいかない部分もある筈だ。自分たちはこの暗黒期に於いて最前線で戦い続けた人物。そんな彼女たちがポッと出の自分より下認定などされて素直に受け入れるはずもない。

 治安維持をしていても、感情抑制に長けているとは別の話だ。正義感があるからこそ治安維持組織に所属する自尊心のようなものが強い可能性もある。


「それは……大変興味が御座いますね。ええ、おいそれと信じられる話でもない。ジャスティス様、その物言いは確かめろという事で宜しいのですか?」

「否定はしないわ。私が見たのは表面上のモノだし、少なからず私も『経験』には興味があるから。もちろん、彼───ニーナさんの了承は必須となるけどね」

『スムーズに話が進んでる。会話の内容からして、ジャスティスは意図してけしかけている様子だ』

「分かりました」

『前方より敵意を感知』

「血気盛んだ……しかしこちらとしても戦闘は有り難い。自分の実力を把握する良い機会だ」


 アストレア・ファミリアのホームの庭。それぞれが鍛錬に励む為か、かなり広い。地面の凹凸はかなり少ないので『地形を活かした戦闘』は出来ないけど……僕としてはまだ地形の利用って戦闘に慣れてないし、有り難い要素だ。ただ、取れる選択は相応に減る。

 もちろんそれは相手にも同じ事が言えるけど。

 この戦闘で高出力ブレードは使えない。あれは高出力だけあって威力は馬鹿にならない。鍛えられている冒険者ならば兎も角、建物や地面は簡単に破壊出来てしまうだろう。故に、今回は純粋な近接戦闘のみ。

 戦闘とは初撃で決まる。

 相手を殺す時は一撃目で致命打を与える。

 それは二撃目からは勝率が下がって行くからだ。戦いは早く終われば終わるほど、お互いの手の内を見せないで済む。その為、一撃目で先制を奪い、必殺を叩き込むのが必須になってくる。

 つまり、先手必勝初撃必殺。後手必殺などを許さない。

 相手の呼吸の間隔を認識し、吸うのと吐く、その間に絶妙な刹那の間、認識に生まれる死角へと潜り込む事によって察知が不可能、理解が不可能な攻撃を可能にするという理不尽な技術になる。同じ系統の技術を持っていない限り、絶対に回避できず、即死させる。

 先制必殺の技術。

 それを同時に行いながら拳と剣を受け流すように弾き合わせた。呼吸を同時に盗むという事は合わせる行為でもある。故に、同じ技術を持っている相手には無論、無力化される。しかし圧倒的にニーナの方がスペックが上だった。


 右拳と相手のロングソードがぶつかり合い、それと同時に足を大地に付けた相手がインファイトを仕掛ける為に踏み込んでくる。素早く、軽く、そしてらしく必殺を狙って剣に勢い乗せて踏み込んでくる


「無刀取り」


 迎撃する様に踏み込みながら相手の剣を奪い去る。それを目撃した相手が迷う事無く飛び越える様に跳躍し、裏側へと回り込み、着地する。


「どうかな、私の強さはわかってもらえただろうか」

「……ッ! まだッ!! せええええあ!!」


 咆哮を住宅街に響かせながら踏み込んでくる。ニーナは踏み込む。上半身を後ろへとスウェイさせ、その反動で動きを加速させながら更に深く踏み込ませる。剣を粉々に砕いて、散弾のように拳の風圧で発射する

 

「ロングソードの破片のシャワーだ、防がないと痛いよ?」


 相手は勢いよく足を振り上げて防ごうとするが、それよりも早く、ニーナは片足を踏み込んだ相手の膝に乗せていた。


「まだ続けるかい?」

「―――ぐ、ぐぐぐぐ」


 その状態から放たれた回し蹴りが拳を横から叩き、相手を後ろへ押し込む。、着地しながら横へと重心をずらし、それに引っ張られるように地面を削りながら移動する。

 相手は回避し、カウンターをすぐさま放ってくる。それを、捌く。


「へぶしっ」

「安心しろ、みねうちだ」


 手刀で顔面から股下まで抜く様に叩きつけられ、蠅叩きによって潰された蠅の様な姿を見せながら相手が地面に倒れる。倒れた相手の背中の上に腰かけつつ、宣言する。


「私の勝利だ☆」

「……負けました。ニーナさんは強い。実力は治安維持組織どころか都市の中でも最上位クラスに位置するでしょう」


 それにジャスティスはにっこりと笑って、他のメンバーに言う。


「みんなー! 見た通り即戦力になる! 私達は数と中堅レベルで治安を維持してきたけど、圧倒的な個人の出現した場合は他の冒険者組織を頼らずにはいられなかった。けど今からは違う。この子をエースとして、私達の手で正義を実現させる。野蛮なテロリズムと、凶悪なモンスターに私達だけで立ち向かえる。権力や理不尽に屈する必要はもうない。私達は、私達の理念を貫き通す。今一度、この都市で法と秩序からなる正義を示す礎となって欲しい」


 トン、とジャスティスに背中を押される。


『予測。組織に加入した際の意気込みを発言を期待されている』

「私の名前はニーナ・ゼクス。強い者だ。法と秩序のために力を貸そう。よろしく、みんな」


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