伍横町幻想 —Until the day we meet again—【ゴーストサーガ】

ホラー×ミステリ。オカルトに隠された真実を暴け。
至堂文斗
至堂文斗

第三部【流刻園幻想 ―Omnia fert aetas―】

序章① 学園

公開日時: 2020年10月22日(木) 20:02
文字数:525

 流刻園という名称で、伍横町の若者たちがまず連想するのは『七不思議』だった。

 伍横町の東部に所在するその高校は、七不思議が存在することで有名だったのである。

 全国を探せば、学校の七不思議などは様々なところで存在するだろうが、流刻園は少し事情が違う。

 流刻園の七不思議は、実際の事件を基に噂が広まったものが多いからだ。

 校長先生の娘が亡くなったり。

 校内で首を吊って自殺した生徒がいたり。

 そうした負の事件が人から人へ伝達されるうちに歪んでいき。

 やがては七不思議の一つへと変貌してしまったものもあった。

 だから、生徒たちは時折口にする。

 この学園は――呪われているかもしれないと。

 もしかしたらこれからもまた。

 七不思議の仲間入りをするような事件が、悲劇が……突然に引き起こされるのかもしれない、と。


 ……そして。

 黄昏の中、学園の運動場に、一人の人影。

 ふらり、ふらりとした足取りで玄関口を目指す男。

 生徒でもなく、教員でもなく。

 本来いるべきでない男が、一つの目的を持って歩き続けていた。

 男は、歯を食い縛る。

 銀色に光るそれを掴んだ手を、強く握り込む。

 流刻園。

 運命の場所。

 茜色に染まるその校舎を見上げた男は、頑なな決意を胸に秘めていた。


 ……全てを壊してやる、と。

 

 遠雷が、町に轟いた。

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