「起ーきーろー」
ガラ空きの脇腹を掴み、白いシャツの上から指を動かす。
彼の温もりが残るシーツの下に手を伸ばすと、ゴツゴツした肌触りが指先に触れた。
すべすべの肌と、捲れ上がったシャツ。
起きないんなら無理やり起こしてあげる。
私もそろそろ起きなくちゃいけないけど、まだ少しだけ余裕があった。
彼にはそんな余裕はない。
早朝のバイトの兼ね合いで、今すぐにでも支度をしなきゃいけないからだ。
「やめぇ」
夢半ばなのか、ゴニョゴニョと何か言っている。
ごめんだけど、聞こえない。
刺激が足りないってことでいいのかな?
だったら、もう少しだけ力を入れてあげるけど。
バサッ
捲れたシャツの下に指を入れると、彼は私の腕を押さえて覆い被さってきた。
癖っ毛の強い彼の前髪が、頬に触れる。
腫れぼったい瞼と、薄い唇。
起こしてごめん、なんて、言うつもりはなかった。
むしろ、感謝してほしいくらいだったから。
「やめぇって言うとるやろ」
「なんで?」
「あと少しだけ」
「少しって、もう6時だけど?」
「あと5分………………zzz」
力尽きたのか、そのままのしかかるように乗っかってきた。
重くて身動きが取れない。
くすぐってあげようにも、腕はロックされたまま。
…はあ。
だから清掃スタッフなんてやめときなよって言ったのに。
朝が弱いんだから夕方のバイトを探せば?って言ったけど、知り合いがいる場所で働きたいからって。
知り合いって言ったってサークルの先輩でしょ?
シフトが被るわけでもないし、大して絡みがあるわけでもないのに。
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