「タカ君」
彼と再会したのは、一年前。
ちょうど、——今日、7月7日のこの日だ。
彼は驚いていた。
再会した私の顔を見て、「誰?」って、聞いてきたっけ?
無理もなかった。
声をかけようか迷ったんだ。
バス停のベンチに座り、駅のホームから彼が歩いてくるのを待っていた。
本当に来るかどうかはわからなかった。
彼の通っていた学校の友達から「校門前で待ったらいい」と言われたけど、勇気が出なくてさ。
会えればいいと思ってた。
会えなければ会えないで、それが運命なんだろうって思うようにしてた。
そしたら——
「…ちゃんと起きるから」
「ほんと?」
「あと5分」
「…はいはい」
ヨネックスのテニスラケットと、ダボダボのジャージ。
履き潰したスニーカーに、耳からぶら下がったイヤホン。
一目で彼とわかった。
髪型も、背の高さも、ポケットに手を入れる仕草一つも。
何もかもが、子供の頃と違っていた。
子供の頃からは想像もできないほど大人びていた。
嘘みたいだなって、思った。
それはほんとなんだ。
きっと、彼がバス停に来ると知らなければ、彼だと気づくことはなかったかもしれない。
“赤の他人だ”って、思ってたかもしれない。
だけど、分かったんだ。
ベンチの前に立つ彼の後ろ姿を見て、何気なく後ろ髪を掻くその姿が、いつの日かの「彼」に、ダブって見えて。
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