ジャングルデイズ、スヴァールバル:収容所列島

第4次世界大戦は石を投げて遂行される。シリコンで出来た石を
水原麻衣
水原麻衣

衝突寸前

公開日時: 2023年12月11日(月) 12:13
文字数:1,485

機首を引き上げ、衝突を回避するために右に傾けた。地面に向かって鼻先を指し示し、しばらくの間停止した後、ゆっくりと上昇を始めた。地面と平行になるのを見て、ほっと一息ついた。しかし、突然、何かがおかしいことに気付いた。すぐに理由が分かった。飛行機が浮遊しているのだ。まるで宙を舞っているかのように、わずかに浮いている。ミランジュは飛行機の外に出た。地面に立ってみると、そこはただの平坦な草地で、どこにも植物はなかった。周りを見回しても何の変化もなかった。これは本当に現実なのだろうか? リアリティがありすぎて疑念を抱かずにはいられない。そして、あの黒い太陽も現実にしか思えない。しかし、それは錯覚かもしれない。自分の心の奥底では、ずっとこうなることを望んでいたのかもしれない。こんな世界が現れることを夢見ていたのかもしれない。しかし同時に、どこか恐怖を感じていた...。



「メル・リンド少尉。統合参謀本部への出頭を要請します」という声で、ミランジュの操縦席で目を覚ましたメルは、ヘッドマウントディスプレイとヘルメットを外し、混乱しながら状況を把握しようとした。

「少尉殿、ご支度を」とパイロットスーツ姿の若い下士官が敬礼している。その表情のない顔には威圧感があった。メルは「了解」と答え、続けて「ここはどこですか?」と尋ねた。

「ホワイト・セクターの惑星軍本部基地です。記憶喪失の件は大丈夫ですか?」と下士官は答えた。

(記憶喪失?)メルは、昨日もここに来ていたこと、統合参謀会議での質問、尋問室での出来事を思い出し、セクター35の地名に何かを感じた。

考え込んでいると、ドアが叩かれ「入れ」という声が聞こえた。メルは気を引き締め、部屋に入った二人を注視した。一人は短い髪の三十代半ばで灰色の軍服を着た大佐、もう一人は少年のような細身の少女で、星形の階級章を胸元に隠していた。

「ようこそ、メル・リンド」と大佐が言うと、メルは「おはようございます、閣下」と敬礼した。しかし、内心では大佐をただの官僚と見なし、その傲慢さを内心で嘲笑った。

少女はメルをじっと見ていたが、彼女が笑い出すと、メルは慌てて頭を下げた。「部下への教育がまだ」と言い訳し、少女が「君が副官のメル・カヴァリエリだね」と言うと、メルは「はい」と答えた。

大佐が自分のサイボーグであることを明かすと、メルは驚き、本物のアンドロイドの耳を見るのはこれが初めてだった。

*****

それで、私が呼ばれた理由は何ですか? このメルという少女は?」とメルが尋ねると、作戦会議は「お前たちの力を借りたい」という司令官の一言で始まった。司令官はまずメルの指名理由を述べ、自己紹介をした。

「君はメルと言ったな。リンド少尉、どうかな?」と司令官が声をかけたが、メルは反応せず、直立不動で時折口から泡のような音を出しているだけだった。司令官はこれを咎めず、「彼女は戦闘支援に特化したオペレーターですね」と続け、メルの能力を高く評価しつつ、ある重要な欠陥を指摘した。

さらに、メルを指揮官に任命した理由を説明した。百年前の開戦から始まる長い戦争の歴史、兵站の負担、兵力と機械化の進行、そして人間と機械の戦いへの転換を詳述した。戦争の状況が機械化部隊への依存を高め、敵陣営においても同様の変化が起きていたことを強調した。

最終的には、ロボット兵士の増加と高度な判断能力の重要性に触れ、人間の指揮者の必要性を論じた。司令部では、大量のデータと情報を処理し、状況に応じた最適解を導き出すのが人間の役割であると結論づけ、アンドロイドのテストを開始することになった。


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