四話 NEW家族
僕は本が好きだ。初めは言語の違いから読むには苦労したが今ではこの世界の知らないことを教えてくれる良い情報源となっている。僕は今「狼人(ワーウルフ)の生態」という本を手にしている。そこにはこの世界での狼人の情報が綴られている。
僕は器用に肉球を使い、本のページを進める。
「あっ、これだ。」
そこには狼人の成熟までの過程が書かれている。
「狼人は生まれてから生後間も無くは犬の様な風貌をし、少年期に入る事で前腕の発達が始まり、体全体が人間に似た性質を持つ様になる。それを半狼(ハルフ)と呼ぶ。そして狼人(ワーウルフ)は別名(エレメンタルウルフ)とも呼ばれ、青年期に入る事で全身の体毛に変化が起き、狼人は体に二つの変化が起きる。一つは固有の属性を習得する。属性とは魔力の別称で、狼人は固有の属性を発現する。主に火、水、土、風の四つの属性を発現するとされているが、稀に光、闇といった属性を発現する狼人も確認されている。二つ目の変化は変体が可能となる。人化、人獣化、獣人化、獣化と言う狼人特有の変体が成長へて可能となる。そして満6年をかけて成熟する。
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*魔力(属性)・生き物の体になれるエネルギー。
*人化・人の姿を模倣する。
*人獣化・人の姿の状態で体を部分的に変化させ、獣の力を引き出す。
*獣人化・ワーウルフの肉体的身体能力を向上させる変体。
*獣人・ワーウルフ本来の力を引き出す変体。
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この著書にはそう記されていた。
よかった、、肉球生活はしばらく続きそうだが成長の過程で人間の姿に近い状態になれるそうだな。よかった!!
「ヴィタいつまでお部屋に篭ってるの?」
僕の背後で女性の声が聞こえる。
「母さんか、本を読んでただけだよ。」
「また?ヴィタは本当に本が好きね。」
「誰に似たのかしら?」
頬に手を当て悩ましそうにする。
「父さんでは無いね。」
「フフッ怒られるわよ。」
クスッと笑い笑みをこぼす。
「言わなければバレないよ。」
「生意気ね、この!」
母さんは僕のほっぺをムニっと摘む。
「いたいでぇしゅ。」
「フフッ可愛い。」
「あ、そうだご飯だから早く来なさい。」
「うん、すぐ行くよ。」
「早く来なさいよ~」
パタンッ
母さんは部屋の扉を閉め、後にする。
すると空いている窓から強い風吹き込んだ。開いていた本のページはパラパラと捲られていく。窓の外を見ると太陽の様な光が部屋に差し込み、僕を暖かく包み込む。その時フラッシュバックしたかの様に昔の光景が蘇る。あのギラギラと僕を刺す太陽の光と僕を包み込む爆音。その時あたり一面は火と血の海の地獄だった。
僕は窓から目を逸らす。
過去を思い出すたび考えてしまう。あの白い部屋と黒い部屋は天国と地獄で、僕は神の選別によってここに送り込まれたのでは無いのかと。自分のしてきた過去を神は良しとしなかったのだろう。この世界では魔物と人間が殺し合い、戦争をしている。人間と魔物との戦争は今にも激化している。僕は選ばなくてはいけない。人につくか、魔物、家族につくか。どちらが正解なのだろう?
「早く来なさ~~い。」
母さんが呼んでいる。いくか、、
ドアの下にあるペット用の小さな出口から僕は部屋を後にする。
このドアを潜るたび少し屈辱的になるがそんなことはもう慣れた。
「早く~」
僕を急かす様に母さんの声が家中に響き渡る。
「今行ってるよ!」
少しムキになりながら足早に向かう。
そうして僕は食卓についた。
「おはようヴィタ!本は面白かったか?」
「おはよう父さん、うん面白いよ。」
そこには朱色の大柄な狼が座っていた。隣には綺麗な青髪のお母さんが座り、いつ見ても違和感が拭いきれない。
この異色の食卓を僕は気に入りつつあった。前の世界の両親とはロクにご飯を一緒に食べた記憶など無く、今みたいに一家団欒となってご飯を食べるのは歳柄にもなく嬉しい。
「ねぇ、母さんって狼人(ワーウルフ)?」
「ええそうよ。」
不思議そうに笑いながら母さんは答える。
だよな、前から不思議に思ってたんだよ。母さんが人間で父さんが狼だからもしかして異種婚かと思っていたんだ。
つまり母さんは人化してる狼人(ワーウルフ)で父さんは獣人化してる狼人って事かな?
本読んでてよかった。本ってやっぱ偉大だな、、
「アルナを何だと思ってたんだ?ヴィタ?」
父さんは笑いながら僕の頭を撫でる。
「いやーはは」
異種婚かと思ってたなんて言えない、、ははっ
「あ、そうだディルック今日から始めるんでしょ?」
「ああ、そろそろヴィタも半狼(ハルフ)になる頃だからな。」
何をするんだろ?
そういうとディルックはご飯を一瞬で平らげる。
「ヴィタも早く食え。」
「うん。」
そう言い残すとディルック家の庭へと向かった。
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ヴィタ・今世での主人公の名前。現在犬
アルナ・主人公の母親。青髪の美しい風貌をし誰にでも優しく村一番の人妻。スタイルは胸は無いが抜群のモデル体型。
ディルック・主人公の父親。大柄な朱色の狼で強く村の番人。人の姿に成ることは滅多に見ないが一度変体すると村では女性の悲鳴が鳴り響く?。
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