黝ずみの狼

罪と罰、己の業とどう立ち向かうか。
hazuki-sousai
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十話 鳴り響く雷鳴

公開日時: 2023年2月14日(火) 05:07
文字数:4,153

十話 鳴り響く雷鳴


「おい早く起きろ、ここを出るぞ。」


カーブは僕の頭を蹴り上げる。その既視感のある風景とともに僕は目を覚ます。


「日が出てるな。早く出よう。」


木の幹の間に日の光が差し込んでいる。僕らは暗い木の幹から体を出す。背伸びをし、凝り固まった体をほぐす。日の上がるの位置から帰り道である南西を導き出した。


「なぁ、お前。」


声の方へと目をやるとそこにはイケメンの金髪の青年が立っていた。どうやらこれがカーブの人化状態らしい。そうかもう半狼じゃないもんな。そう言う僕も人化状態になっていた。


「何だよ。」


「お前属性の発現出来てるか?」


ああ、そう言えばそうだった。昨日自分の毛色が何色か分からずじまいだっな。


「で、僕は何色なんだい?カーブ君」


「うーん、黒だな。」


僕の毛色は漆黒の毛色だった。所々生え変わっていないところがあるが黒色に間違いはない。


「黒ってことは闇属性だったか?」


「そうだな、ハズレだ。」


「おい、ハズレとは何だ!お前なんて金髪じゃねぇか。」


カーブの金髪の毛色は日に当たることでより一層、金色に光輝いている。


「嘘だろ?俺もハズレだ、、」


カーブの顔はみるみる青くなっていく。


「さっきからハズレ、ハズレ、ってまだ分からんだろうが。」


「何でお前、死蜘蛛の事を知っておいて、こんな事も知らないんだよ。」


「お前は闇属性、俺が金色だとすると光属性、この二つの属性は明らかに他の属性と比べると戦闘向きじゃ無いんだよ!」


つまり?


「戦える奴がいないんだよ。」


闇属性がハズレ枠なのか、確か効果は相手に不利な状態を発生させ、相手の能力の低下、阻害が得意な属性だったな。まあゲームで言うデバフか、光属性は回復が主な効果で味方にバフも出来る属性だったな。ふたりともサポート系の属性だな。


「別にハズレじゃ無いだろ」


「いいやハズレだ!」


「まあいいから、とりあえず何かしてみろよカーブ。」


「何かしてみろって言われてもな。」


「ほら僕、ゆびに切り傷があるんだ治してくれよ。」


僕は指にできた切り傷をカーブに見せる。


「何でお前なんかの直さないと行けないんだよ。」


「何いってんだ協力するって言ったろ?それに効果は知っておいた方がいい。」


「まあそれはそうだけどな、お前にいい様につかわれているだけなきがするぞ。」


「ほら治せよ。」


カーブは僕の傷に手を当てる。


「・・・」


「何も起きてないぞ?」


「魔力を込めろよ!」


「魔力って、、」


「魔力って言うのはな、体の心臓(コア)から流れ出しているものであり、体内から流れる出る魔力を変換することで自身の属性を顕現させることが可能。」


でた、コイツの説明口調。


「魔力は千差万別。体内の魔力量によってどんな事も出来る。」


「回復はお前の属性の得意な事なんだ出来るだろ。」


「分かったよ。」


「・・・」


「ださ、」


「出来ねぇじゃねぇか!」


カーブは僕にめがけて拳を振り下ろす。


「多分センス無いんだろ。才能ないな。」


カーブの拳をモノともせず避ける。


「なっ、くそ!」


「じゃあお前もやって見ろよ!」


「うん。じゃあ、」


「死ね。」


ヴィタはカーブに向けて手のひらを翳し、そうあ言い放った。


その瞬間カーブの全身に寒気が襲う。


何だこれ寒い、気温がどうとかじゃない。感じる、死を、、


そして倒れ込んだ。


「ん?」


カーブは自らが倒れたのかと錯覚したが倒れこんだのはヴィタだった。


「お前、何してんだ?」


うつ伏せで寝転ぶヴィタはその体制のままに考察を始める。


「死ぬ、苦しい、失敗した。」


「多分魔力量が足りないんだ。」


「魔力全部使い切った、、体に力が入んない。」


「な、おい!何やってんだ!帰り道まで一歩も進んでねぇぞ!」


「それに俺を殺そうとすんな!」


「ほら起きろ、」


「ああ、ありがとう。」


僕はカーブから差し出された手を取り、立ちあがろうとした瞬間。


バチッ!電流が走った。


「痛っ!!」


何だ今のは!電気?


「すまん。静電気だ。」


「おい!今のはそんな生やさしい痛さじゃ無かったぞ!」


電撃のあまり僕の手はプルプルと痙攣している。


「何言って、俺は痛くも痒くも無かったぞ?」


確かにカーブは電撃が走った瞬間、瞬きの一つもしていなかった。


「ほら手を取れよ。」


僕は再び差し出されたカーブの手を恐る恐る手に取る。バチッ!!再び僕の体に電流が走る。


「いった!やっぱりお前の体からなんか出てるぞ!!」


やはりカーブに触れた途端再び僕に電流が走る。


「お前おふざけはいい加減にしろよ!」


カーブがそばに立つ木に手を触れた途端、木に焼け付く様に電撃の模様が浮かび上がる。


「これはいったい、」


「ほら!お前おかしいぞ!光属性に雷を操る能力なんかあるのか?」


「いや、そんな筈は、」


驚きを隠せない二人だったが、その時カーブの毛の色が変化するのをヴィタは見た。


日に雲がかかり、カーブを照らす光が遮られたその瞬間、カーブ本来の毛色を僕は視認した。


「お前の毛色って、金じゃなくて、黄色か?」


カサカサ、


二人は聞き覚えのある足音を聞いた。


「おい、今のは!」


寝転んでいたヴィタは素早く起き上がり、ヴィタとカーブは戦闘体制に入る。


「今のは奴だな。」


ヴィタは唾を飲む。


カサカサ、カサカサ、カサカサ、カサカサ、カサカサ、カサカサ、カサカサ、カサカサ、カサカサ、カサカサ。


「いいや、奴らだ。」


不快な足音と共に僕らはあっという間に死蜘蛛に囲まれてしまった。


「どうしてこんなにいるんだよ。」


「まあそりゃあ、久しぶりにこんな弱い食糧が落ちてきたらなぁ、そりゃあ襲いにくるよな。」


カーブは失笑しながらそう言い放つ。


次の瞬間、僕らを取り囲む数十匹の死蜘蛛が同時に襲いかかる。


「ちょ、待て、僕まだ属性使えなっ!!」


腰が抜けるヴィタだったがカーブが死蜘蛛の前へと立ち向かう。


鳴り響く雷鳴と共にボルトン森林に一筋の光が落ちた。


「ヴィタ、貸しだぞこれは、」


そこには体から黄色い閃光を放つカーブの姿があった。体からはバチッと電気が弾ける音がする。カーブの周りにはバタバタと倒れてゆく死蜘蛛がいた。


「おお!貸す貸す!」


絶望に追い込まれ、濁り切った僕の目に光が差し込む。


「情けぇなお前。」


カーブはそう言うと、人化から獣人化へと変態し、半壊した死蜘蛛の群れに飛び込む。その後は一方的な駆除だった。自身の属性で強化されたカーブの肉体はワーウルフの身体能力の限界までをも超え、僕は目で追うので精一杯だった。それを相手にした死蜘蛛は右へ左へと殴り飛ばされ、薙ぎ倒されていった。そして最後の死蜘蛛は雷で焼き殺し、カーブは止まった。流石に疲れている様だった。下に俯き、肩で息をしている。


「よくやった!偉いぞカーブっっっっっ」


かけよる僕の顔面にカーブの拳が差しこまれた。


カーブは後ろに倒れ込む僕に馬乗りになり再度攻撃を仕掛ける。連打、連打、連打、止まらむ拳の雨に僕はガードすることしかできなかった。攻撃を止めようにも無作為に放たれる神速の拳を僕は捉えることができなかった。


「お前暴走してるのか?!」


ヴィタを殴るカーブの顔からは正気を感じなかった。


そして悪いこととは畳み掛ける様に起こるのが世の常だ。暴走しているカーブに手こずる僕を追い詰めるがごとく、悪夢が訪れる。


暴走したカーブの拳の雨の中、地面に寝転んでいる僕はいち早くに気づいた。


地響きに、少し離れた所だろうが、その地響きは次第に足音となり、近づいてくる。


大物だ。


「おいおいおいおい、やっぱりお前かよ!!」


僕の目には赤褐色の毛並みをした大きな猪が見えた。


「ぶぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」


心の臓まで響く雄叫びと共に奴は僕らめがけて突進してくる。


僕は再びカーブ壁役作戦を決行する。


暴猪に気を取られたカーブを押し除け、壁にする。


「暴走してるんだ、お前のけつは僕が拭いてやるよ!」


カーブを壁にすることが出来れば何とか衝撃は抑えられると踏んでの行動だったが、僕の見込みは甘かった。結果的に壁にしたカーブもろとも僕は後方へ吹き飛ばされた。強い衝撃と共に意識が薄れていく、偶然にも振り飛ばされた先の木にぶつかり意識を取り戻す。


ぐるぐるの回る視界の中、荒々しい息遣いの暴猪(ページボア)が僕を睨む。


次はお前だと、、


どうしよう、でも僕一人なら逃げられる。

それは傍で眠るカーブを見捨てればの話だ。


助けるか、どうする?


カーブを左脇に挟み持ち上げる。


ちっ、コイツ重いな。


暴猪(ページボア)が再び進撃を始める。

僕は木々を利用し奴の視界を外れる様に逃げ回る。しかし暴猪(ページボア)は木などモノともせず薙ぎ倒しながら突き進んでくる。


あいつもう何でもありだな、でもこのまま逃げ回れれば奴のスタミナ切れが望める。それに僕の闇属性があれば、、まだ勝機はある。


それからどれぐらいの時間が流れただろう、体感、一刻は過ぎたであろうと思う僕だったが、残酷にも日の位置には変わりがない。


このままだとまずいな、、


そう思う僕には体の限界が訪れていた。


ヴィタには蓄積されたダメージがあった。暴走したカーブによる猛撃、暴猪(ページボア)の突進と、人一人抱えて逃げるには残りわずかな体力だった。


まずい、足に力が、、


視界が地面に近くなってゆく。


「ぶぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


そんな僕を他所に突進する暴猪(ページボア)は僕の体を引き潰した。


いたい、いたい、いたい、いたい、いたい、


激痛が襲う僕の体はピクリとも動く気配がない。


「ぶぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


赤褐色の化け物が再度僕らめがけて進撃を開始する。


僕にはもう意識なんてものは無かった。でも体は動いていた。


僕は暴猪(ページボア)に向けて手を翳す。


黒いモヤが暴猪(ページボア)を包み込む。


「混沌凍瘡眠湖火傷縛道孕毒尽呪霧酸誘惑蠱惑繋血閉殻離繋血蒙塵。。。。。。。。。。」


死ねよ、眠らしてくれ、、


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*ヴィタ…主人公。あれから2年が経ち四歳を迎えた。闇属性を宿した。


*カーブ…ヴィタと同い年の青年。前の戦争で父を失い、人間と当時弱かった己と父を守れなかったディルックを恨んでいるようだ。属性は新しい属性である雷属性を宿した。


遠雷…指定した場所に雷を落とす。発動からの溜め時間によって威力は大きく変わり、魔力の消費量も溜め時間によって左右される。指定できる場所は自分を中心に半径50mまで。
































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