屋敷に戻った俺達は、クリスタさんが作った夕食を振る舞っていた。
なんで夕食? と思ったが、どうやら俺達が召喚された時間帯が昼過ぎだったらしい。
時間さえも忘れてしまう程の出来事だったと割りきるしかないが…。
「お待たせしました」
「クリスタが作る料理は絶品だよ。 私も料理を作るけど、クリスタレベルに届かないからね」
「有栖も料理できたよな」
「ええ、兄さんと交代で作ってました。 あ、これ美味しいです」
「アリス様やスグル様の料理も楽しみにしたいですね」
「この世界の食材次第になりますがね。 レシピも必要な時もあるし」
「私も楽しみだよ。 スグルお兄ちゃん達の料理が。 レシピが必要なら渡すし、近いうちにお願いするね」
クリスタさんの料理は、アリアが言うようにかなり美味しい。
食事の最中に、俺と有栖が料理を作れる事について触れた。
両親を失ってからは、日にちで交代しながら料理を作っていた。
作り始めた当初、レシピを残してくれたので助かった。
それからは、次第に上手く料理ができるようになり、有栖と美味しい料理を食べさせられるようになった。
そんな俺と有栖の料理をクリスタさんとアリアが楽しみにしているようだが、この世界の食材と調味料によっては作れない料理もある事を伝えた。
一応、アリアからはレシピを渡してくれるらしいが…。
夕食が終わり、俺は風呂に入っていた。
この屋敷の風呂は、二階と地下にあり、俺が入っているのは地下の方だ。
「はぁ~、いい湯だなぁ」
湯沸かしは、アリア曰く風呂に設置された魔道具でやるため、有栖と一緒に使い方を教わった。
嵌め込まれてる魔石に触れて、温度を調整するのだそうだ。
そういった点では、やはり異世界だなと実感する。
「ん?」
ふと、ガラッと扉が開く音が聞こえたので、振り向くと…。
「あ、有栖!?」
「兄さん、ごめんなさい。 どうしても一緒に入りたくて…」
バスタオルを身体に巻いた姿の有栖が、俺の入浴中に入ってきたのだ。
うっかりガン見してしまったが、高校生になって、有栖はよりスレンダーになっており、胸もそこそこ膨らんでいる。
「ふふ、兄さんったらそんなにじっくり見ちゃって…」
「恥ずかしくないのか?」
「はい。 小学6年生以来に久しぶりに兄さんに見られますが、むしろ兄さんになら見られてもいいって思ってますよ」
年頃の娘の裸を見てしまった俺は、有栖に恥ずかしくないのかと聞いたら、即答で俺には見られてもいいと言ってのけた。
そして、そのまま俺に身体を預けるようにもたれかけた。
「召喚されるまで、世間に考慮して兄にもみんなにもクールな女として接してましたが、今は大好きな兄さんに甘えたいです」
「有栖…」
有栖が元の世界で、俺にもみんなにもクールな女として時折毒を吐くような発言もしていたのは、世間に考慮してらしい。
そして、案内中の時のアリアの発言から察した。
有栖は俺が大好きだと言った。 これがまさか兄としてだけでなく異性としてもだったという意味だったと察した。
確かに近親がタブー視される世間では、キャラを作ってでも考慮しないといけないわけだ。
暫くして風呂から出る時、有栖も一緒に上がった。
寝間着に着替える最中にチラッと見てしまったが、有栖の履いた下着は白だった。
着替えた後、用意してくれた部屋に向かうが、その時に有栖がお願いをしてきた。
「せっかくですから、兄さんと一緒に寝たいです」
添い寝をお願いされたのだ。
「仕方ないな。 一緒に寝ようか」
「はいっ♪」
俺が有栖の願いを受け入れると、嬉しそうに腕を組んでくる。
この純粋な笑顔を見るのは久しぶりなのかも知れないな。
部屋に入り、そのまま一つのベッドに俺と有栖が入る。
掛け布団を掛けた後で、俺は有栖にこう言った。
「なあ、有栖に聞きたい事があるんだが…」
「いいですよ。 何でも聞いてください」
「風呂の時、俺の事を大好きって言ったよな? 確かに嬉しいし、その想いは受け入れたい。 だけど、いつその想いを抱いたんだ?」
有栖に怒られるかも知れない質問だが、気になったので聞いてみた。
当の有栖は、怒る事なく笑顔で答え始めた。
「中学生の時、両親が通り魔無差別殺傷事件の犠牲になる前ですよ。 丁度親族の集まりで私達もその場所にいましたよ」
「あの時か…。 確か有栖は…」
「はい。 私はある親戚に部屋に連れていかれただけでなくスカートを捲られ下着を見られ、さらにスカートと下着を脱がされそうになりました。 そんな時に兄さんがその親戚をぶん殴ってくれたじゃないですか」
(やなり、あの時が。 しかし、有栖はそんな目に遭っていたとは…)
まさか、俺が有栖がトイレから戻って来ない事を心配して有栖を探していた時だったとは…。
しかし、あの糞野郎は有栖にそんな事をしていたのかよ…!
「私を助けてくれた時に激怒しながら『俺の有栖に何しやがった!』と言ってくれたのがきっかけに、元から兄を慕っていましたが、さらにその想いが高まったのです。 あ、あの時はトイレにはちゃんと済ませた後なので漏らさずに済みましたよ」
それでか…。
なら、改めてその想いを受け止めないとな。
明日以降にアリアから結婚のルールについて聞いてみるとしよう。
「有栖の想い、改めて受け入れるよ。 それじゃ寝ようか」
「ありがとうございます。 そうですね。 私も眠くなってきましたし」
「それじゃ、お休み有栖」
「おやすみなさい、兄さん。 大好きです」
こうして、俺達は一つのベッドで抱き合ったまま眠りについた。
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