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翌朝、俺はクリスタさんと共に買い出しの為によろず屋に向かっていた。
有栖はというと、アリアと魔法の訓練をしているようだった。
「遠目から見ましたが、アリス様の魔法の飲み込みが早いですね。 たった2時間で二つの魔法を習得したのですから」
「元々、有栖は物覚えがよくて、あらゆる作業とかのやり方を瞬時に覚えてましたね」
まぁ、それ故に有栖はいろんな意味で親戚から嫉妬されたり、性的な目で見られたわけだが…。
「あ、スグル様にクリスタ様!」
よろず屋近辺に近づくと、俺達に気づいたギルドの受付嬢さんがこっちに向かってきた。
「どうしたのですか? そんなに慌てて」
息を切らしてこっちに来た受付嬢さんをクリスタさんが落ち着かせる。
「昨日、王都『シュクレール』においてヘクトが王位襲名を宣言したそうです!」
「「はぁっ!?」」
ヘクトが王位襲名!?
まさか、あの勇者召喚で味を占めたからか?
「それに伴い、セシル様一派の人達とヘクトの思想に批判している各国と魔族に宣戦布告をしたそうです!」
「正気の沙汰ではありませんね。 何故急に…?」
「国王様が急死なされたからです。 ヘクト側の人間が毒殺したのでは? という憶測も出ています」
国王様が急死したから?
あまりにも急展開すぎる…!
そのあらましを聞いた俺は、頭を抱えた。
「セシル様側は、今朝まで知らなかったと?」
「恐らく、召喚された勇者の中に遮断結界が使える者がいたのかもしれません」
「今朝になるまで遮断結界で、あらゆる情報を遮断したと?」
「恐らくは…」
うわぁ…、何て事をしてくれたんだ。
このままじゃ、まったり生活が遠のいてしまうじゃないか…。
そこで、ふと何かを思いだし、受付嬢さんに聞いてみた。
「そういや、王都に住んでいる住民の反応は?」
「ヘクトの演説中に、反対派の住民が一斉に怒りと批判を繰り出しましたが、その場で公開処刑されたようです。 故に他の住民は、ヘクトの圧力で、ヘクトの思想に従うしか選択肢がなかったようです」
「召喚された勇者が絡んでたりとか?」
「さすがにそこまでは…」
「何か、心当たりでも?」
受付嬢さんは、勇者…いわゆるクラスメイトが関わっているかは分からなかったようだが、ヘクトに賛成しやすそうな奴等に心当たりがある…というより、そういう奴がクラスに居たことを思いだした。
「主人公最強願望かつ、支配欲が強すぎてクラスから警戒されている三人組が当時の俺のクラスにいるんですよ。 そいつらなら、ヘクトの思想に賛成して反対派を縛り付けるんじゃないかって…」
「なるほど…」
「スグル様の世界にも、そういう考えを持つ方々がいるのですね」
「頭が痛いレベルですからね…」
項垂れながら説明する俺に、クリスタさんと受付嬢さんが、慰めてくれた。
「とにかく、ヘクトの軍勢がこの村に攻めてくる事もありえます。 伝わってるかも知れませんが、そちらからもアリア様に伝えて下さい」
「分かりました」
受付嬢さんとヘクトの件での話をした後、俺とクリスタさんは、よろず屋で必要な物を買い、すぐにアリアの屋敷に帰宅した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「まさか、ヘクトがそこまでするとはね…。 お父さんを殺してまで世界を自分の思想に染め上げたいとはね…」
「反対していた住民を即座に公開処刑してまで、屈服させるとか人間のすることじゃないですよね」
屋敷に戻り、訓練を切り上げたアリアと有栖にもヘクトの件を報告した。
アリアは表情を歪め、有栖も不快感を示していた。
「そもそも、あのヘクト…魔族になんか恨みでもあんの?」
「恨みと言うより、異物感的な感じで嫌っているみたいだよ。 獣人族も嫌っているってさ」
「それだけでか!?」
「あの男やそれに追従する大臣、ならびに一部の貴族たちの言い分は、この世界は人間が住めばそれでいい的な思考で、魔族とか獣人は異物だから消え去るべきって言ってるよ」
「潔癖症的な何か…ですか?」
「そうだろうね。 特にヘクトは魔族や獣人とすれ違う度に吐き気を催すぐらいの不快感に苛まれたってお付きのメイドが言ってたくらいだから」
ある意味ヘクトは歪んでいたというべきか。
何もされてないのに、存在しているだけで不快感とか色々と考えがヤバすぎる。
それだけでなく、ヘクトのような考え方が大臣やら一部の貴族も賛同しているというのがより厄介なんだろう。
「それよりも兄さん、あの予測が本当なら…今回の公開処刑は…」
「多分、あの三人組が関わっているかも知れないな。 まだ憶測の段階でしかないけど」
「クリスタから聞いたけど、その三人ってヘクトとは違った厄介さをもってるね」
「ええ、なので私達を含めた多くのクラスメイトが警戒していましたね」
「私もスグル様から聞いてゾッとしましたからね」
「主人公最強願望と支配欲のコンビネーションだからな。 ヘクトに同調したとしたらそれが理由だろうな」
本当にあの三人は厄介だ。 ウェブ小説でよく出てくる主人公最強ものが好きなだけあって、この異世界でなら自分が輝けるという感情を持っているのかもしれない。
「となると、お兄ちゃん達の他のクラスメイトが心配だね」
「そうなんだよな…。 あと、ヘクトが王位襲名を宣言したとなったら、この村にも攻めてくる可能性があるだろう?」
「ほぼ確実に攻めてくるだろうね。 なので、その時は優先度SSSの緊急依頼として処理してもらうようにするよ」
「そのためにも俺達も戦闘経験を積まないとダメか」
「実戦さえなんとかなれば、お兄ちゃん達は強くなれるよ。 現に有栖お姉ちゃんは魔法を三つこの三時間で覚えたから」
「マジか…」
物覚えが良すぎだろう…有栖。
確かに吸収力はいい方だったけど、三時間で魔法を三つとか…現地の人に申し訳ないじゃないか…。
「今日は昼食の後で、実戦の為に討伐依頼を受けるから、それで戦いに慣れていってね? 私もサポートはするから」
「分かりました」
「しょうがないな…。 まったりした生活を守りたいし」
そう、あくまでも俺と有栖はまったりとした生活で第二の人生を送る事だ。
のっけからそれが砕かれようとしているが、生活を守るために戦う力も付けないとだめだろう。
とにかく、昼の討伐依頼はしっかりやっておくか。
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