転移された双子の異世界生活記~スローライフがしたいのに周りがさせてくれません~

異世界転移された双子の兄妹の生活記録
イズミント
イズミント

14 すんなり終わらせてくれるはずがなく

公開日時: 2021年2月22日(月) 08:00
文字数:2,268

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「さぁ、着いた。 ここが『グリーンフラワー』の群生地だよ」


「本当に歩いて20分の場所にあったんですね」


「しかし、ここはほとんど濃い緑に覆われてるな」


 アリアの先導で、キルシュ村の北出入り口から出て歩いて20分。

 俺と有栖の初めての依頼場所である『グリーンフラワー』の群生地に着いたのだ。

 この異世界という場所柄、こうして徒歩数十分でたどり着ける場所は、多分あまりないだろう。

 ちなみにその群生地は、敷地内は濃い緑で覆われていた。


「今回採取するグリーンフラワーは、鮮度は度外視して回復用ポーションを作るために20本は採取して欲しいという事だよ」


「グリーンフラワーは、ポーションとやらの材料だったのか…」


「うん。 飲むだけで体力と多少の傷を瞬時に癒す魔法の回復ポーションで、グリーンフラワーで作られているポーションは一般に安く出回っているからね。 その分、数も多いからね」


「飲むと傷も癒すのか…」


「流石は異世界…といったところでしょうか…」


「ちなみに、グリーンフラワーの群生地はここだけでなく、世界各地に散らばっているからね」


 それにしても、飲むと体力だけでなく傷をも癒せるポーションとか…まさに夢のアイテムだよな。

 異世界様々と言うべきか。


「さて、採取を始めるよ。 採り方を教えるからついてきて」


 アリアが群生地の端付近まで行くようなので、俺達も後をついていく。

 彼女がいる場所をよく見ると、花が濃い緑色をしているのが分かる。


「これが『グリーンフラワー』…」


「そうだよ。 濃い緑の花が満開になっているのを採取しているんだよ。 満開状態でも場所や位置によっては鮮度が違うから、鮮度指定の場合はあるスキルを使わないといけないけど、今回は鮮度は無関係だから採っていくね」


「ちなみに採取の仕方は?」


「茎の地面に近い部分をつまんで、そのまま上に引っ張るように抜いていくんだよ。 よく見てね」


 そう言いながらアリアが茎の地面に近い部分を手でつまむ。 そのまま軽く上へと引っ張るように抜いていくと、スポッと花の一つが抜かれた。

 これで1本目の採取が終わったのだろう。 これをあと19回やるという事か。


「さぁ、これをあと19回分二人でやってみて」


 アリアが俺達にあと19本分の満開のグリーンフラワーを取るように言った。

 さっきの奴を19回採取しないといけないんだよな…。


「ここらあたりは結構満開状態の花が多いので、それほど時間はかからないかも…」


「みたいだなぁ…、よっと」


「おおっ、順調だね。 その調子だよ」


 アリアの応援の元で、俺と有栖が満開のグリーンフラワーを順調に抜いていく。

 この調子ならば、すぐに終わることができるな。


「あと1本、兄さんお願いします」


「分かった…よっと」


 順調にあと1本になったので、有栖が俺にお願いをした。 場所柄俺が抜いたほうがいいのだろうから、そのまま俺が抜いた。


「うん、これで20本採取完了だね。 カードを見て」


「カード…、ああ、なるほど」


 カードを見るようにアリアが言ったが、その意味を理解した俺はすぐカードの裏面を見る。

 すると、そこにはグリーンフラワーの採取と書かれた依頼名があり、その横に『20/20』と書かれてその横に完了という文字が書かれていた。

 数字の方は、右が予定採取数などの最大値で、左は現在の数字ということだろう。 右と左の数字が一致した場合に完了の文字が出てくる仕組みのようだ。


「この状態でギルドに報告すれば、ギルドから報酬が貰えるんだよ」


「なるほどー、なら後はギルドに報告すればいいのですね」


「そういう事。 じゃあ、帰ろうか」


 採取したグリーンフラワーをバックに入れて村に帰ろうとした時、ふと俺は何かを耳にした。


「なぁ、何か聞こえないか?」


「そういえば…、獣の声が…」


「え、まさか…?」


 俺が何か聞こえないかと言うと、有栖も獣の声が聞こえてきたことを明かし、それにアリアが嫌な予感を感じた。


「グルアァァァァッ!!」


「うおおっ!?」


「きゃあっ!?」


 突然茂みから、何かが襲い掛かってきた。

 俺と有栖は、すぐに回避に成功したが、あまりの速さに驚いていた。


「グル、グルルルル…!」


「うそ、あれは…!?」


 そして、その何かはすぐに俺達の方に顔を向けた。

 おそらく、魔物だろう。 だが、二足で歩行できるが、顔は狼なのか猫なのか分からない風貌だった。


「リカント…!! まさか、Cランクの魔物がここに来るなんて…!」


「そんなにヤバいのか?」


「うん、リカントは王都『シュクレール』からはるか南にある貿易都市『ケルヴィン』周辺に生息している魔物のはずなんだよ。 基本的にこのキルシュ村周辺では見る事がない魔物なんだよ」


「そんな魔物が何故ここに…!?」 


 どうやら、俺達を襲った魔物はリカントという名前でCランクの魔物で、基本的に王都からはるか南の貿易都市周辺に生息するらしい。

 その魔物が何故、この群生地に現れたのかは分からないが、どうも考えさせてくれる余裕はなさそうだ。


「ひとまずここは対処するしかないね。 下手に逃げたら村がリカントに壊されるし…」


「そういえば、徒歩20分の場所だったな、ここは…」


「うん、お兄ちゃんとお姉ちゃんも戦闘経験させることになっちゃけど…、ひとまず手伝って」


「はい、怖いですが…やってみます」


 アリアが、槍を構えながらそう言うと、俺は剣を…有栖は杖を構える。

 剣と杖は、昨日のギルドの帰りによろず屋から買ったものだ。 持って来て正解だったよ。


「一匹だけとはいえそこそこ強いからね。 油断はしないでね? 行くよ!」


 こうして、アリアの掛け声とともにリカントとの戦闘が行われようとしていた。

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