うだつの上がらないエッセイ集(2)

思いつきで気楽に更新します。基本的に一話完結なので、お好きなページをご覧いただけると嬉しいです。
月澄狸
月澄狸

盛り上げと感情移入

公開日時: 2023年4月17日(月) 22:19
文字数:1,466

 作品を見ていて、「まだこちらが感情移入していないときに作品が盛り上げにかかってくる」ということがあります。キャラクターが何かをし、それが吉と出るか凶と出るか、上手くいくかどうかも分からない、相手が敵か味方かも分からないのに、急に感動的な音楽が流れるとか、キャラが泣き出すとか。作り手としては「こうなってこうなった」と筋道が見えているけれど、それを上手いこと表現できていないか、説明セリフ一言で「こういうわけなんで」と片付けようとしているとか……?(何も説明がないように見えることもある)。


 こちらの気持ちが追いついていないのに作品が勝手に先走ると感情移入できません。キャラが激怒してから「なぜ怒ったのか」理由を説明されたようなされていないような、よく分からない……そういう前後逆転(?)など。複雑なキャラクター表現、心理描写は、一歩間違うと意味不明ですね。


 私は昔から趣味でマンガを描いてきたんですが、自分としては盛り上がるシーンを描いたのに、あとで読み返すと展開が急すぎたり、意味不明だったり、「それなら最初からこうしておけば、この事態は避けられたのでは?」とツッコミどころがあったりなど、甘い部分がたくさんありました。人に見せたときに「なんでこうなったの?」とツッコまれたり、キャラクターAとBを同一視されたり(描き分けができていなかったらしい)。絶望的ピンチを描きたいなら、主人公の逃げ道は一つずつ着実に潰していかないといけないですね。って残酷な作業だなぁ。


 プロの作品を見ていてもけっこう「??」ってことがあって。伏線なのかキャラ設定なのか雰囲気作りなのかよく分からない謎の表現があって、最終回になっても特に触れられないまま、とか。現実とファンタジーの境界線がごちゃ混ぜで、ファンタジーな目で見ればいいのか現実問題を考えさせたいのか分からない、とか。つまりプロ集団でも完璧な表現って難しいんじゃないでしょうか、多分。でも個人的には「?」な作品でもファンが多かったり。


 で、その分、個人的にしっくりくる表現に出会ったときは勉強になりますね。

 たとえば「この行動が吉と出るか凶と出るか分からない」という状況の時に、「上手くいく保証はないぞ」ってキャラ自身が言うとかなら分かりやすい表現なんですが、アニメのそういうシーンのときに、盛り上がるBGMがかかっていることがありました。そのBGMが絶妙だったんです。緊迫しているけど、「これで上手くいく!」とも、「いや、怪しいぞ、大丈夫か?」とも「そんなことしてはいかん!」とも言っていない、ニュアンスが不明というか。それでいてカッコいい。

 こっちが感動する前に感動の音楽を流されたり、まだ何が起こるか分からないのに怪しげな曲を流されたら、「そういうことが起こるんだな」と感じさせてしまいますよね。それが「どうなるか分からない」曖昧な演出だと、本当にハラハラドキドキするというか。「おおっ」と思いました。


 そんなふうに、音楽を流すタイミング、その曲調って勉強になりますね。いや、私の作品に音楽を使う予定はまだないんですが(笛の音が好きで、笛のセルフ重奏ができないかと気にはなっています。昔は吹奏楽部だったし、以前カラオケサイトで下手な歌を公開したりもしており、音楽を使った表現に興味がないというわけでもありません……しかしとにかく時間が足りん……)。

 感情を見せる曲、見せない曲、色々な曲があるんだなと勉強になります。前奏ではおとなしく、キャラクターの派手な演出と共に急にガッとくる曲も迫力がありますね。




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