「それじゃ、班ごとに行きたい場所決めてくれ」
うちの担任は胸も張らずに、そんな無慈悲な言葉を言う。
まず前提として今は放課後ではなく、ホームルームだ。そして、今回は校外学習でどんなことをするかを決める回だった。
最初に全体で何をするかということだが……うちのクラスには一体感がある(僕は除く)のでみんなでできること……バーベキューに決まった。
正直、学習要素がどこにあるか分からないが先生はOKしていたので深く考えないようにした(考えることしか能がないのにそれもどうかと思うが)。
しかし、全員で一つの場所でやるというのは流石に無理があるので、4人班に別れることになった。問題はそこだ。
僕のような陰キャはペアやグループを作るという事態に陥った時、必ず余り物になる。今回も余り物になり、最終的に男女混合班に入ることになった。
いくらうちのクラスに一体感があるとは言え、男女混合の班があることには驚きだ。しかし、申し訳ないので何も言えないのである。そもそも言うつもりもないが。
「えと、じゃあ……要望とか、ある?」
この人はクラスの委員長の利根《とね》 真冬《まふゆ》。僕と同じ川の名前だったり、ある小説の登場人物と同じ名前だからといって親近感とかは湧いていない。
典型的な委員長タイプで、メガネをかけたらより委員長っぽくなるのに……と思ってる人も少なくない(話し声が聞こえる)。
「えー、私はまふに任せるよ〜」
こいつは千葉《せんよう》……下の名前は忘れた。
所謂ギャルというやつで、利根さんとは仲が良いと思う(教室でよく話している)。僕が苦手なタイプ。
ただ隣の席になった時に知ったのだが、先生や目上の人に対しての尊敬や敬意の心は人一倍あるらしく、悪口をコイツに言った日には一日中付き纏われるだろう。その性格のせいか、髪は染めたりしておらず、態度だけがギャルである。
「ん、僕も〜」
竜田《たつた》 愁《しゅう》。この班の唯一の救い。
授業以外の時間は基本寝ている。ただ、僕と違い友達がいないわけではなく、マスコット的な立ち位置な男子。
男子はこの人しかいないので話しかけれるのはこの人だけだ。女子に話しかけるだなんてムリムリ。
「えっと……加茂川君はなにかありますか?」
「いや、別に……」
ついつい目をそらしてしまう。基本的に誰かに見られるということは苦手だ。自分に自信がないというのも一つの理由だろう。
「うーん、困ったな……」
「まふの意見はないの〜?」
「私?私は……あ、せっかく外なんですし、水鉄砲で……」
「お、面白そうだね。流石まふ」
「ほ、ホント?じゃあうちの班は『水鉄砲でガソリンを相手にかける』というレクリエーションで良いですね?」
「「良くないっ!」」
(何故そうなった、委員長よ……)
前言撤回。典型的な委員長タイプではなく、真面目だけどポンコツな人だった。
この後千葉さんと竜田くんが頑張って『水鉄砲で水のかけあい』まで持っていった。僕、何も働いてないな……。流石に罪悪感が湧いてきた。
せめて当日は、迷惑をかけないようにしよう。そう心に決めた。
「え、校外学習?その日ソウスケくん疲れてるだろうし、その日ぐらいは晩ごはんを作らせてくれ。……確かに私はソウスケくんにお金を納めているが、それはあくまで私が迷惑をかけたわけで……」
結局口論で勝てるわけもなく、僕が諦めて作ってもらうことにした。なんだかんだ葵さんの料理は初めてなので恐怖3割興味7割といったところだ。
……ホントに大丈夫なのだろうか。
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