「過去の失敗を糧にしてこそ、我々は前に進めるのよ!」
ある作品の、ある少女が無い胸を張って言っていた。
毎度のことながら、その通りだと思う。
「失敗は成功のもと」という言葉もあるが、これと同じだ。失敗から「何故失敗したのか」「どこがだめだったのか」を学び、改善し成功する。成功すること自体も大事だが、一度失敗したからといってそこで諦めない姿勢を身につけるのにも必要なことである。
まぁ、何が言いたいかと言うと……
「加茂川、私、すごく帰りたい……」
「奇遇ですね、僕もです」
……二度と先生と一緒に体育館倉庫に閉じ込められないように、気をつけよう、うん。
何故こうなったかの話なんだが、30分前。
「お、加茂川!!ちょうどいい、手伝ってくれないか!」
「どうかしたんですか?」
「ほら、今度球技大会あるだろ?荒野あれの準備をしなきゃいけないんだ。私以外の先生方は手が空いてないらしく……はぁ」
「なるほど」
今日も葵さんはいつもの時間に帰ってくるし……手伝うか。
「一緒に運びますよ、先生」
「ありがとうございます!!」
なんで敬語なんだ?と思いながらも僕はラインを引くアレや野球の道具、バレーボールをそれぞれの場所に運んだりした。
「ふぅ……これで最後だな」
最後に残ってるのは、得点板だった。2つ必要なので、それぞれ中に入っていった。得点板は奥の方に置かれていた……これがまずかったんだ。
それを運ぶためにふたりとも奥へ行ってしまい……後はお察し。見知らぬ誰かに鍵を閉められたとさ。
「しかし、現実でこんな事が起こるとは思わなかった!起きたとしても学生同士だと思ってたぞ」
「元気ですね、先生」
「あぁ!こういうシチュエーションは初めてだから少し楽しいぞ!!」
……最初はこんなテンションだったのだが、流石に飽きてきたのかテンションが下がり、今はふたりとも帰りたがっている。
「加茂川……お前スマホとか持ってねーのか?」
「持ってたらとっくに連絡してますよ……ってことは先生も無いんですね」
「あぁ……」
さて、どうしたものか。もう帰り道では頭を働かせる元気も残ってないだろう、この事を葵さんに話してやる。
「うーむ、今日は部活も無いからな……あ、そういえば」
と言って神戸先生は壁の方へと歩く。そして、ある地点で立ち止まり上を見る。
「……え、あの小窓から出るんですか?その……胸とかつっかえません?」
「失礼だなお前!自分でもわかっとるわ!!出るのは加茂川、お前じゃい!!」
顔を赤くして怒る先生には何も言い返せず、そのまま流れで僕が小窓からの脱出を試みることになった。
「……ん、もうちょい……っと」
なんとか上半身は出れたのだが、よくよく考えたら僕、このまま頭から落っこちるのでは?
「あのー、先生……」
「あぁ、どうせ『頭から落っこちそう』とか言うんだろ。安心しろ、この天才数学教師の頭脳を持ってすれば……特に何も思いつかん!頑張れ!」
「ちょっ!そんな軽いノリで命賭けたくないんですけど!!」
嘘だろ?ホントに殺る気なのかコイツ。
「はっ!こ、ここで加茂川が死んだら……私の評価が……!」
「僕の命のほうが大事だと思いますけどね!!」
そうギャーギャー騒いでいると……。
「さっきから何やってんの〜、えっと……加茂川?だっけ」
通りすがりの、千葉が来た。
「大変だったんだね〜。あ、貸し作ったから今度なんかやらかしたら揉み消しといてよ〜」
「ぐぬ……いや、今回は仕方あるまい。わかった、揉み消すことを誓おう!」
何故この二人は僕の前でこんな取引をしているのだろう。……帰ろう。
「……え、それで終わりなのか?その千葉と言うやつとか、神戸とかいう先生と何もなかったのか?男子高校生なのに?男子高校生と女教師が密室に二人きりだったのに?
あぁ、冗談だ。冗談だからそう怒るな。にしても、失敗を糧に、か……。ソウスケくんは先生とそんなふうに話せたんだし、私は失敗だとは思わないぞ」
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