「優しさとはときに残酷なものだ」
ある作品の、ある少女が無い胸を張って似たような言葉を言っていた。
確かに、優しさは残酷なこともある。例えば、今日の休み時間。
〜回想〜
「うぇーいお前ら、サッカーしようぜ」
「おう、良いぞ。でも人数足りんくね?」
「そうだな……あ、加茂川。一緒にやらない?偶には遊んでみたいし」
「え、僕ですか?遠慮しときます」
「お、おう、そうか……」
「……」
〜回想終了〜
という感じで、陰キャでいつも一人な僕を気にかけて話しかけたのだろう。
楽しむならもっと仲が良いやつ、もしくは運動がそこそこ以上できるやつのほうがいいはずだ。それでも僕を誘ってきたのは同情による優しさだろう。
同情されたいとは思わないが、いつだっけ……そうだ。『世の中がつまらいんじゃないの、あなたがつまらない人間になったのよ!』という言葉について考えてた時だった。
あのときにも思ったように、自分がそれで良くても周りから見たら可哀想なやつにしか見えないのだ。だから、同情されるのは仕方ない事だと割り切っている。
ただ、困るのは事あるごとに僕を誘い、毎回断っていたら、僕の印象が余計に悪くなるということだ。一度付き合うのもいいが、わざわざ休み時間まで他の人にペースを合わせたいとは思わない。休み時間ぐらい一人でゆっくりしたいのだ。
そういう考え方をしている僕みたいなやつにこそ、運動は必要な気がするが……。いや、もしかしたら逆なのかもしれない。
僕みたいなやつに運動が足りてないのではなく、運動をしていないからこんな性格に……。
……無いな、うん。そもそも運動をしないという選択肢を選んでいる時点で僕は僕だ。ホントに救いようがない。
そんな僕と比べて、周りと合わせること自体を楽しむやつらは羨ましく感じる。
世に出たら一人でいることのほうが少ない。なにかしらのコミュニティに参加しないと生きていけないからだ。
そして、ああいうやつはそのコミュニティでも上手くやっていけるだろう。まぁ、中心的な立場の人は目立ちたがり屋だったり仕切り屋だったりで逆に問題が起こるということもあるかもしれないが。
だが、僕みたいな一人で考え込むようなやつは自分の意見を周りに言えないという点で無能に見えるだろう。いや、実際周りに言わない時点で無能だ。忠実に仕事をこなしていても、部下としては使えても出世は見込めない。
……もしかしたら、葵さんは僕がそうならないように考えてることを言わせてるのかもしれないな。あの人、そういうこと考えてそうだし。
「ああ、陽キャな。私もソウスケくんぐらいの頃は嫉妬したさ。うるさかったりテンションキツかったりしたが、それでも楽しんでるあいつらにね。
ま、今は別にどうでもいい。社内の者と適度なコミュニケーションを取りつつ仕事をこなせば勝手に評価はあがる。
……え?あぁ、かもしれんな。私は話が大好きだから、話したことで評価が下がることはほぼないのかもしれん。ま、知らないところで下がってるかもしれないけどな!」
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