「どんなに無駄と思えても、やらなきゃいけないことって、あるんだよ!」
ある作品の、ある少女が無い胸を張って言っていた。
僕もそう思うし、実際そうしてる。だが……
「これは、やらなきゃいけないことですらないと思うんだが」
「いやいや、共に同じ部屋に暮らしているんだ。折角の休日こそこうやって触れ合うべきだ。どうせわたしたちは遊び相手もいないからな」
「読書とかゲームとかの選択肢もくれよ」
「あげません!」
駄目らしい。
そう、今日は折角の休日だ。だというのに……親睦会という名の雑談に誘われたのだ。一応一度は逃げようとしたが、話術と持ち前の運動神経で逃げることができなかった。
「……で、何について話すんですか」
「そう言うと思ってバラエティ番組でよくあるサイコロを持ってきた」
そう言ってどこからかクッションサイズのサイコロを取り出す。ホントにどこから取り出したんだ……?
「……はぁ、そうですか」
「じゃあ一発目いくぞ」
葵さんはサイコロを投げた。出たのは……
「『食の好み』か。ふむ、私から話させてもらおう。
あれは私が小学2年生の頃なんだが……」
長くなるやつなので聞き流すことにした。
しかし、この人はどうしてここまで人と話したいのだろうか。僕が話したくない理由は人と関わるのが嫌いからだが、逆なのだろうか。
だとすれば、こんな休日は他の人と遊んでそうだが……。
「……ということがあったんだ。だから私はしいたけが苦手なんだよ」
「大変でしたね。あ、僕は梅が嫌いです」
「梅か。しかしなぜだ?」
「いや、味が苦手なので」
「梅味が苦手ということは、梅干し以外も無理なのか。なんか、しいたけよりも範囲広いな」
「範囲広くて悪かったですね」
「悪くはないさ。苦手なものがあるから好きなものもあるんだ。あればあるほどいいってものでもないが、少なすぎるのよりもは個性豊かとも言えるだろう」
「そういうもん……ですかね」
なんか上手く言いくるめられた気がするが面倒なのでそのままにする。
「よし、次は……『好みのタイプ』」
「高身長でスレンダーなクールなお姉さん。ただし葵さんは除く」
「私のように物事を考えるてそれについて会話することが好きな年下。ソウスケくん惜しかったな」
二人共即答だった。
「……次いきません?」
「そうだな。……『願いが一つ叶うのなら』」
これはまた答えづらい質問だ。一つには絞りきれない。
「私は……つまらないかもしれないが、願いは言わないかな」
「意外ですね。僕みたいにたくさんあるのかと」
「ああ、たくさんあるさ」
そう言うと葵さんは優しい笑顔を浮かべ、答える。
「そのたくさんある願いは、全て自分の手で叶えたくならないか?」
「……確かに」
根本的に、同じ。それでも方向性が全然違う。だからこそ相手から教えられることもある。そういうときは少し、自分と同じ考えの人がいることに落ち着ける。
「今日は葵さんの為にもしいたけ料理にしよう」
「なんで!?」
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