さて。現在、俺はハルたちが訓練用にしているダンジョンへと来ている。ここは市街地を模したダンジョンで、そこかしこに建物が立っている。ダンジョンの出入り口の扉をくぐるとそこは電車の外で、ちょうど電車から出てきたという格好になる。
ちなみに現在の俺の装備を紹介しよう。
興味のない方に簡単に説明しておく。つまるところアメリカ海兵隊の戦闘装備一式を身に纏わされた。
なので、はっきり言って重い!
携帯していく銃もアメリカ軍が正式採用しているM4A1というアサルトライフルだそうだ。ハルから詳細を聞いたが正直良く憶えていない。弾数は30発が入る弾倉を装着されていて正直、重たいが、ハルが言うには慣れろとのこと。弾の口径と種類は5.56x45mmのNATO弾という弾らしい。
もうね。もうね!
俺は一体何時から軍人になったんだよっていうね!
行軍させられてんの! 行軍!
きついっすわぁ。
ダンジョンの入口に到着した頃には既に息が上がっていた。ここに来るまでも大変なのだ。これからこれを着たまま戦うとかどんだけだよっていう。で、それをハルに言ってみた。
「装備なしで怪我したいんですか? それとも死にたいんですか?」
と、真顔で言われてしまった。俺は無言で神薙さんや高橋くんを見た。彼らも、この装備には辟易としているようだ。でも……
「安全には変えられませんから」
「っす」
とのこと。どうやら何が何でも慣れるしかないようだ。
うぅ……
しんどい。泣きたい。インドア系のオッサンにはきついっす。
文句を言いつつも、それでも従ってしまう俺。何て健気。
話を元に戻す。つまり現在の俺たちは戦闘態勢に入ったアメリカ海兵隊が日本の電車から降りてきた感じだ。かなり異様な光景だろう。まぁ他に観客(乗客?)が居ないので誰に見られて咎められるということもないのだが。
さて、駅構内をフォーマンセルで移動を開始する。
フォーマンセルってのは四人一組のことを言い、それで行動する意味はというと、互いに死角を補い合って周囲を警戒するのだそうだ。
ちなみに市街地戦等の狭い空間で行われる戦闘をCQB(クロース・クォーターズ・バトル)という。まぁようするに接近戦のことだ。
駅構内で徹底してエリアを制圧する訓練をした。
「クリア」
「クリア」
「クリア」
それぞれがポイントを制圧していく。つまり敵が居ない事を確認したら次に移動という行為を繰り返していく。本当に何だか特殊部隊になった気分だ。
今の俺って何だかカッコいいかも知れない。
そんな事を思っていた矢先、神薙さんが敵を発見した。最初に決めていたハンドサインで敵の数を全員で共有。数は一体。アサルトライフルのセーフティ(安全装置)を外して、セミオートに切り替える。セミオートとは単発のことで、引き金を引くたびに一発撃つ方式のことだ。
ハルがバックアップにつく。神薙さんが外した場合に備えて。
準備が整った。
それを確認してから神薙さんが発砲。サプレッサーが付いているので一応、音は普通に撃つよりは小さい。それでも結構な反響音が鳴った。しかし直後。ハルも発砲。どうやら神薙さんが外したらしい。
すぐにドサッという敵が倒れる音。そして慎重に倒れた敵を確認しにいく。同時に他の三人は周囲の警戒だ。
そういう一連の動作を徹底して体に染み込ませる訓練を行う。基本的に敵は見つけた人が撃つ。バックアップにはハルが常に付ていくれる。
俺たちは駅構内で執拗なまでに場を制圧する訓練を行い続けたのだった。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!