ウサギに拉致されてからのダンジョン攻略

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006:メンバー

公開日時: 2020年11月28日(土) 16:46
文字数:982

 何処かで見たことがある。プロフィール写真じゃ気が付かなかったが二人の女性を見た第一印象は、そんな感想だった。


 チームリーダーを務めるのは28歳の神薙姫さんではなく18歳の渡来遥だ。まだ大学一年生らしいが、雑誌の読者モデルも務めるぐらい世間慣れした女の子だ。


「あはは。読者モデルって言ってもサバゲーのなんですけどね!」


 サバゲー。いわゆるサバイバルゲームのことでエアソフトガンを持ってBB弾と呼ばれるプラスチックの弾を撃ち合う遊びや競技のことだ。


「あっちなみにFPSゲームが大好物です!」


 FPSゲーム。一人称視点のシューティングゲームのことだ。たぶん彼女が言うのは銃を撃ち合うゲームのことだろう。俺は問う。


「銃が好きなんですか?」

「はい! 銃も好きです!」

「も?」

「他にもナイフとか軍事車両とかバイクとかも好きです!」


 少し変わった子かも知れない。俺は「そうですか」と告げて、神薙姫さんを見た。何処かで見たことがあるのはサバゲーのモデルを務めるという渡来遥の方だけじゃない。この本屋の店員をやっているという神薙姫さんの方もだ。


「何処かでお会いしてます?」


 すると神薙姫がボソボソと答えた。


「たぶん…… ご近所さんかと」

「なるほど」


 どうりで会ったことがあるはずだ。俺がたまに行く本屋の店員さんだ。普段マスクをしているので、すぐには気が付かなかったのだ。


 ちなみに時空系能力者の少年の方とは面識が無かったので、お互いに普通に「はじめまして」と挨拶をしあった。何というか高橋くんの印象は無気力系のイケメン男子という感じだ。もっと目に力があれば輝いて見えたかも知れない。


「高橋くんは16歳だっけ?」


 俺が話題を振ると、眠そうな目で高橋くんが小さく「っす」と言って頷いた。


 このメンツ。大丈夫なのか? アクティブ系のチームリーダーである渡来遥以外、どう見てもインドア系ばかりの印象なのだが?


 かくいう俺もインドア系だ。まぁだからといって別にアイドルやアニメやゲーム。漫画や小説など。特別にやり込むような趣味があるわけでもない。基本的にまんべんなくそれらを嗜む程度の非生産的なインドア系だ。だからオタクとも言えない。そういう意味では高橋くんとは気が合いそうだ。


 でも同時に思う。将来、俺みたいになりそうだなって。まぁ彼にはイケメンというステータスがあるわけだが……


「不安だ……」


 俺はそう呟いたのだった。

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