「銃と一口に言っても、いろんな種類があります」
そう言ってハルの講義が始まった。まぁ長いので割愛するが、一言でまとめるなら銃は決して戦闘において万能な武器ではないということだ。
その時その時の状況に応じた銃が必要となる。
例えば街中での護身用なら威力も小さく携帯に便利なハンドガンがいいとか。森で狩りをするなら何を狩るのか決めてから、それに応じた銃を用意しろだとか。
例えば鳥なら威力の低い小さな粒をばらまくタイプの弾を込めた散弾銃。熊を狩るならライフルかスラッグという弾を込めた散弾銃がいいとか。市街地戦ならアサルトライフル。戦争とかなら短機関銃かアサルトライフル。グレネードランシャーは室内に立て籠もっている複数の敵に使うのが効果的等など。
立て板に水とはこのことか。本当によく喋る。それを必死に聞く俺。横では神薙さんと高橋くんがぼんやりしている。どうやら彼ら彼女らもこの状況は、すでに体験済みらしい。
一通り話して満足したのか、ハルがソフトドリンクを口にして最後にこう付け加えた。
「だからダンジョンでは事前情報が何より重要になります! 前もってどんな敵が出てくるのか分かれば対策を立てられますからね!」
そう言ってハルが自前の携帯端末を手に何やら操作を始めた。
「実はですねぇ、このマネーダンジョンの攻略サイトがあるんですよ」
「攻略サイト?」
「はい。有志が作ったサイトです。マネーダンジョンの名こそ出されていませんが、一般のインターネットにアップされています。ただのゲームの攻略情報に偽装されて」
ハルがそこでいったん言葉を切って、彼女の携帯端末の画面を見せてくれた。そこには『エムのダンジョン攻略情報』というタイトルで何やら色々と書かれているサイトがあった。俺はハルに尋ねる。
「これがマネーダンジョンの攻略情報サイト?」
「はい! ちなみに現在わたし達は、初級ダンジョンに潜っています。見た目は市街地です。そこには人型のモンスターが多数出てきます。ゴブリンだったり、その上位種のホブゴブリンだったり。他にはアンデッド系。つまりゾンビやスケルトンにゴーストなんてのも」
俺はそれに驚く。
「ゴースト? 銃でどうやって倒すんだ?」
するとハルがニヤリと笑った。
「そこはヒメさんのエンチャントが活躍します」
「エンチャントって付与だよね? えっと、つまりゴーストを倒せる属性か何かを銃に付与するってこと?」
「はい! そのとおりです! ゴーストに限らずアンデッド系との戦闘は聖属性付与は必須なんです!」
納得した。
「ちなみに通常のゴブリン退治をするときにも属性付与はしてもらっています。その場合は火属性ですね!」
「エンチャント系は制限が少ないの?」
「はい。みたいですね。私が銃の弾を召喚するのと同程度のコストのようです」
どうやらこのチームは女性の方が強いチームのようだ。
「ちなみに高橋くんのタイムリープは?」
「えっとぉ、基本的には使いません。ただし緊急避難的に使う場合があるかもしれません」
「緊急避難?」
「現状、カズ君の能力は時間を遅くするのがやっとです。それもかなり限定的で対象一人の時間の流れを遅くするのがやっとです。それも三秒ほど遅くするぐらいで。まだ使ったことはないですが逃走用を想定しています」
なるほど。ハルが言葉を続ける。
「ちなみに、ジンさんのマジックハンドですが、もしかしたら以外に使えるかも知れません」
そう言って、ハルは先程のアサルトライフルではなくハンドガンを召喚する。
「これをマジックハンドに持たせて発砲させればいいんです」
なるほど。マジックハンド自体に攻撃能力は無いが、引き金を引くぐらいは出来るだろってことか。俺は自分の能力にも何か価値を見いだせるかも知れないという期待で、少しワクワクとした気分になったのだった。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!