「さて、これからどうするか……」
俺は、これからどうするか。まぁ考えるまでもなくダンジョンに潜ることになるんだけど……
「能力は最低だし、一人で行くのも怖いし……」
そんな俺の戸惑いを横で見ていた、案内を務めたバニーガールさんから提案があった。
「仲間募集の斡旋所へ行ってみませんか?」
「でも、俺の能力ゴミだし……」
するとバニーガールさん。
「登録。しておくだけしておきましょう! 樫木様のプロフィールを読んで選ぶのは相手の方です。それに合わないようなら、解散して、また組み直せば良いんです!」
そう勇気づけられて俺は仲間募集の斡旋所へ向かったのだった。
カジノのあるフロアーを抜けて、しばらく通路を歩くと斡旋所があった。そこは結構な人数で賑わっていた。
「皆、仲間を求めて?」
俺の質問に、先程からお世話になっているバニーガールさんが「はい。そうです」と答えた。
俺はさっそく受付へと向かう。そこで写真を撮られ、年齢と能力名とダンジョンで今までいくら稼いだか。何度トライしたかを聞かれた。
「まるで結婚紹介所だな」
一通りの説明が終わり、俺は斡旋所を出ようとした。するとそこで斡旋所の職員に声をかけられた。
「樫木様! ちょっと待って下さい!」
「はい?」
斡旋所の職員に引き止められた。
「何事です?」
「はい。えっと樫木様に会ってみたいというチームがありまして」
俺は驚く。
「え! もうですか?」
「はい。どうです? お会いしてみますか?」
そう言われて手を引かれ、パソコンの前へ移動。そこで相手のプロフィールを見せられた。
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渡来遥《わたらいはるか》
能力名:サモン
21歳
収入の総額23.2万円
ダンジョントライ歴/7回
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そこに映し出されたプロフィール画像は、かなりの美人系な女の子の写真だった。まぁ仲間の見た目は横に置いておくにしても、これだけでは良いのか悪いのかわからない。なので職員に尋ねてみた。
「この子のダンジョントライ歴と収入総額ってどうなんですか?」
職員は少し考えて答えた。
「そうですね。トライ歴が7回で収入総額が28万ということは一回のトライで3万以上は稼いでいることになります。かなり優秀です」
俺は少し考え込む。
「そんな優秀そうな人が俺を必要とするかな?」
すると職員が答える。
「彼女の能力によります。なにか理由があるのかも知れません。彼女のチームにいる他の方のプロフィールも見ますか?」
俺は頷き、見せてもらう。
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神薙姫《かみなぎ・ひめ》
能力名:エンチャント
28歳
収入の総額7.1万円
ダンジョントライ歴/3回
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高橋和《たかはしかず》
能力名:タイムリープ
16歳
収入の総額3.5万円
ダンジョントライ歴/2回
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眼鏡をかけた地味系の神薙さんに、イケメンの高橋くん。
「まぁ見た目は横に置いておくとして……」
俺は彼女たちの能力を見て、その異常性に気が付いた。
「能力が、どれもこれも戦闘向けじゃないように見えますが?」
俺の質問に職員も頷いた。
「チームリーダーの渡来様の能力はサモン。おそらく何かを召喚するのでしょう。神薙様の能力は付与。高橋様の能力は時間遡行。どれもこれも戦闘向けではありませんね。特に高橋様の時空系は希少価値の高い能力ですが、その分、制約や成長性の低い能力ですから…… 現時点で役に立てるはずがないです。にもかかわらず、この収入額。何かありますね」
俺は、このチームに会ってみることにした。理由は何だか面白そうだから。せめて理由の一端が知れればという思いがあったからだ。それに……
「渡来さん、美人だし!」
そんな、よこしまな思いを胸に意気揚々と面談室へと向かったのだった。
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