一通りの説明を受けた後。俺はフルフェイスとは違う他のバニーガールの従業員に連れられて移動を開始した。長い長い赤い絨毯が敷かれた静かな通路を歩く。バニーガールのお尻についつい目がいってしまう。というか尻尾や耳が、どう見ても本物に見える。案内をしてくれるバニーガールに話しかけてみた。
「あのぉ。その耳や尻尾って本物ですか?」
すると前を歩いていたバニーガールが振り返ってニッコリと微笑んで答えた。
「はい!」
とびきりの笑顔だ。可愛い。するとバニーガールさん。前を歩きながら説明を始めた。
「私たちは兎人というタイプの獣人なんです」
「へぇ。人間ではない?」
「はい。人間とは違います」
俺はもう一つ気になっていた事を尋ねた。
「ところで何でバニースーツなんですか?」
「それはオーナーのご趣味です」
「オーナー?」
「はい。一度、夢でお会いになっていると思いますよ」
あの白ウサギか。
「いい趣味してますね」
「あはは。そうですね」
ウサギタイプの獣人に、仕事の制服として黒のハイレグに黒タイツを着せるウサギを変態紳士と呼ばずに何と呼ぶ!
俺の中で白ウサギが神格化された瞬間だった。
・・・
そんな馬鹿なことを考えていると目の前に両開きの木製の豪奢な扉が見え始めた。どうやら、あの先にある部屋が目的の場所らしい。
前を歩いていたバニーガールの手によって扉が開かれた。すると眼下に広がる光景に目を奪われた。そこは吹き抜けになっていて俺が居るのは二階の通路で一回にはカジノルームが広がっていたのだ。
「カジノ?」
そこで男女が思い思いに賭けに興じる姿が。俺は思わず戸惑った。
「え? ダンジョンは? 何でカジノ?」
すると俺の戸惑いを他所に案内を務めたバニーガールが、やはりニッコリ微笑んで「ようこそ! マネーダンジョンへ!」と言ったのだった。
唖然とする俺。それはそうだろう。モンスター退治をお願いするぐらいなのだ。もっとこう殺伐としたイメージだったのだ。
それがこんな紳士淑女の集う社交場に案内されるとは思っていなかったから。
当然、俺の人生に置いてこんな場所に来たことはない。しばらく二階の吹き抜けから一階を見下ろしていたら案内を務めたバニーガールが「お飲み物はどうなさいますか?」と尋ねてきた。
俺は喉が渇いていたので「お願いします」と答える。するとどこからか現れた、他の給仕をするバニーガールからグラスに入った飲み物を受け取り俺に勧めてきた。
「ソフトドリンクです」
俺は受け取ったものか戸惑う。
「えっと、お金、持ってないだんけど?」
「こちらのソフトドリンクは無料です。ちなみにチップなども頂いておりません」
「お金のかかるサービスって、どういうのがあるんですか?」
「そうですね。ダンジョンに直接的に関わる依頼と、こちらのカジノで遊ぶ場合が有料となっております。もし不安でしたら、そのつど従業員にお尋ね下さい。もし良かったら案内所や苦情受付窓口などもありますから、ご利用なさってもいいと思いますよ?」
いたれりつくせり。
何だか当初、抱いていた印象から掛け離れた状況に、俺はしばらく呆然としていたのだった。
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