「頼りがいがありそうですね」
そう感想を述べたのはヒメだった。
ハルが「そうだね」と同意する。何だか肩身が狭いのは気のせいだろうか? 俺はカズの方を見るとカズも困ったような様子で俺を見ていた。俺だけじゃなかったと安心したが同時に、情けなさで更に落ち込む。そんな俺達の様子に気がついたのかハルがフォローをしてくれた。
「あっ、でも私はジンさんたちの方がいいですよ?」
とたんに嬉しくなる俺とカズだったが……
「何でも言う事を聞いてくれるし!」
という言葉で、やはりがっくりと肩を落とす。もうね、乾いた笑いしか出ねぇわ。
・・・
四人で相談して、とりあえずお試しでケンシの仕切るクランに入ることとなった。ハルの役割は俺達四人の仕切りと戦闘能力のない人に銃を提供することで、俺とカズは今まで通りハルの指示の下で活動。
それから以外にも能力に新たな価値を見いだされたのがヒメだった。
「俺たちの相性はバッチリ何じゃねぇか! なぁ!」
そうケンシに言われて嬉しそうに隣で笑うヒメ。彼女の能力は付与。その能力の真価は武器に属性を付与するのと同時に、身体能力や頑強さの向上だ。
でも俺達の場合は接近戦はなく中長距離での戦闘がメインだった。そのためヒメの身体能力の向上はお披露目がされなかったのだ。
自分が活躍できる状況に素直に嬉しそうに笑っている彼女はケンシの守ってやるという安心感もあってか、だいぶ落ち着いたようだ。
俺たちは複雑だが、でもまぁ、いいかという思いもあった。一緒に活動が出来れば。
ケンシ達のパーティ「スレイヤーズ」は総勢で四名。四名の内、ケンシと上地という男性が前衛だそうだ。残りの二人が後衛でバックアップをしているらしい。
そして、もう一つのパーティを「ムッキーズ」という。
リーダーのムッキーという男性を筆頭に、残り三人が女性のハーレムパーティだ。
総勢12名の3チーム。男性7名。女性が5名という比率だ。
ちなみに、現在この船にはクランが幾つかあるらしい。詳しくは分からないが20前後はあるだろうと言われている。そのどれもが10名前後の構成らしい。つまり最低でも200名ほどが活動していることになる。この数が多いのか少ないのかは分からない。
ムッキーズのリーダーのムッキーが訳知り顔で話している。俺にではなくハルにだ。
「つまりね。この200名という数が限界なのだろうと俺は考えているんだ」
そう言ってハルを口説こうとしているのか、しきりに近寄るムッキー。それを巧みにかわすハル。
「へぇ。で? それが何か?」
「いや。気にならないか? 船にどれくらいの人間が居るのかって……」
「いえ。全く」
いや。巧みにではなく、バッサリと切り捨てている。そしてそんな二人の様子を後ろで見ているのがムッキーズのメンバーの女性たちだ。一見すると笑顔だが、その笑顔が怖い。
「ねぇねぇムッキー?」
会話が途切れた隙きを突いて、ムッキーズのメンバーの確か名前は、エナりんと言ったか。16歳ぐらいの少女がムッキーの耳を引っ張った。
「また女の子を口説いているの?」
するとムッキー慌てて「そんなことはない。べ、別に女性だからじゃなくて強そうな人を勧誘しているんだ」と言い訳を始めた。その隣りにいたハーちゃんという女の子(こちらも16歳)も、笑顔に迫力を滲ませるという器用なことをしながらムッキーを見つめている。その中でゴーリキーというあだ名の少女がならばと交渉を始めた。
「だったら、わたし。あっちのイケメン君が欲しいな!」
そう言って見つめる先に居たのはカズだ。するとムッキーがむっとした表情を見せた。
「男に興味はない!」
「そう? じゃあやっぱり口説いてるんじゃない!」
そう言って、ワイワイしながらムッキーは女性陣に引きずられるように退場していった。その様子をカズが羨ましそうに見ている。
全員が10代の若いチームだ。やる気を出したカズにとっては良いチームかも知れない。
20代ばかりのスレイヤーズは落ち着いた雰囲気でヒメが完全にケンシに懐いてしまったし、何だかこのままチームハルは解散するかも知れない。俺は何となくだがそう感じずにはいられなかった。
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