始まった交流会。
だが俺はボッチだった。
カズはいつの間にやらムッキーズの女性たちと仲良くなっていた。ヒメはケンシの隣で酌をしている。ハルはと言うと、こちらはムッキーや他の男性数人に囲まれていた。
そんな中で独りちびちびと、そして黙々と飯を食べる俺。
「何て、みじめ……」
まぁ分かっていたけどさ。マネーダンジョンに来て少しは変われるかと思っていた。変われたと思っていた。でも現実なんてこんなものだ。
それからしばらく。気がつけばケンシとヒメが居なくなっていた。ムッキーズの女性たちと楽しそうにしているカズに話しかけてみる。
「ヒメさんは?」
するとカズが苦笑いを浮かべて答えた。
「あぁ…… その。ヒメさんはケンシさんと二人で……」
俺はそれだけで察した。
「そうか……」
ヒメが駄目ならハルはと言えば、ムッキーや他数名の男たち相手に銃の話で熱くなっていた。いつも通りなようで安心した。安心したのだが、どうもハルは趣味に生きる女性のようで、今のところ男がどうのこうのという感じじゃない。そう思っていた俺にカズが告げた。
「あの…… ジンさん?」
「ん?」
「ハルさんですが、どうやら彼氏持ち、らしいですよ?」
「え! マジで?」
「えぇ。まぁ本人から聞いたわけじゃないですが……」
「どこ情報よ?」
「ムッキーさん情報です。何でもネットに情報が転がっていたとかで」
俺が涙目で「そうか」と納得した後で、わずかに沈黙がその場に降りる。そして俺は言葉を続けた。
「まぁあれだけ美人なら恋人の一人や二人いても不思議じゃないか……」
「はい。それに、その……」
「何だよ?」
「ジンさんとじゃ年齢が離れすぎてます」
「だよなぁ……」
知ってた。知ってさ。でも希望を持つぐらい良いじゃないか。そんな心の叫び。どうやら俺たちはどこまで言っても主人公には、なれないらしい。
心がズキズキする。俺の思いは形になる暇もないままにガラガラと崩れ落ちていったのだった。
・・・
翌朝。チームハルは集合。その際にツヤツヤした表情のヒメが告げた。
「すみません。私。チームハルを抜けます!」
抜けてどうするのか? それは決まっている。
「抜けて、スレイヤーズに参加します! すみません!」
そう言って、少し照れた表情をする。こんな可愛い表情をするのかと俺とカズが驚く。逃した魚は大きかったようだ。がっくりと肩を落とす俺に、さらに無情な言葉を投げた人物がいた。カズだ。
「あの。俺も抜けようかと……」
これにはハルも驚いた。
「ちょ! 何で!」
「はい。ムッキーズに誘われてて。それもいいかなって。すんません!」
そう言って頭を下げられたら、それ以上は引き止められない。ハルは「そっか」と言って送り出した。ハルが俺を見る。
「あっ、いえ。俺は残ります。すみません」
何故か残ることに罪悪感が。俺なんかが残ってすみませんという思いが頭をよぎる。ハルは「よろしくね」と言って、何やら考え事を始めたのだった。
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