翌日。もそもそとベッドから起きて朝の支度を済ませた所で、部屋の扉がノックされた。俺がドアを開けるとそこにはハルとヒメが立っていた。ハルが「おはよ」と少し暗い様子で挨拶。後ろにいるヒメは俯いたままだ。俺が二人を見て「おはよう」と返すと、ハルが口を開いた。
「準備は?」
「あぁ。ちょうど今」
「よかった。ならロビーで集合」
「了解。荷物を取ってくるから先に行っててくれ」
俺の言葉を受けてハルが頷き、ヒメを連れてロビーへと向かって歩き始めた。その様子は重い。
「駄目、だったのかな……」
船を降りると言ったヒメ。ハルに説得を任せたが駄目だったのかも知れない。
「まだ、仲良くもなっていないのに……」
俺は荷物を背負い移動を開始した。
途中でカズとも合流。二人で階下のロビーへ向かう。
そして、やはりそこでハルから、ヒメが船を降りたがっている話を聞かされた。
カズが珍しく口を開く。
「俺は反対です。だって、ここまでそれなりにやってきたじゃないですか? もったいないですよ!」
俺も説得の方向で口を開く。
「俺達じゃ頼りないかも知れないけど、ま、守るから…… だから…… 残って欲しい…… です」
語尾がどんどん小さくなりゴニョゴニョとなっていく。これ、言っていてかなり恥ずかしいし、それに守ると言っても確約ができない。自信がないのだ。主人公になるぞと決意はしたが、それも本当になれるとは思っていない。自分の不甲斐なさに涙が出てくる。仲間が弱っている時こそ励ますべきなのに。それが出来ない。
雰囲気が重く暗くなりかけた所で、男性に声をかけられらた。
「よぉ。おはようさん」
全員が視線を向けれた先に居たのは昨日の熊男。倉持堅師だ。俺とカズが会釈をしながら「おはようございます」と返す。ハルとヒメが視線で尋ねてきた。俺が倉持さんを紹介する。
「ハル。こちら倉持堅師さんだ。昨日、訓練所で話しかけられて……」
「あぁ。あんたがこのチームのリーダか?」
そう言ってハルを見る堅師。ハルが立ち上がって頷く。
「はい。遥です。渡来遥。ハルでいいですよ」
そう言って握手を交わす。
「俺はスレイヤーズというチームのリーダーをやっている倉持だ。ケンシと呼んでくれ」
「えぇ。ケンシさん。よろしく。それで用件は?」
「おう。どうだ? いっぺん組んでみねぇかと思ってな? 今後のことを考えて」
「皆さんのチームに入れと?」
「いや。チームにではないな。クランにだ」
「クラン……」
「そうだ。まだ中級だが少々手間取っていてな。急きょ攻撃力のあるチームを欲しているんだ。昨日、銃を見せてもらった。ハンドガンだったが、あれはあんたの能力か?」
ハルが頷く。
「えぇ」
「銃は他にもっと強力なのは出せるか?」
「……えぇ」
「俺たち用とか準備できるか?」
「準備はできます。ただ扱い方を覚えてもらう必要性が」
「うむ。そこで手を組もうと言っているんだ」
するとハル。今まで見せたことのない厳しい態度と口調で対応を始めた。
「こっちにメリットがないように思えますが?」
「メリットか。そうだな。でも俺たちなら、お前さんらの盾にならなってやれるぜ」
「そういうのは、うちのスタイルには合わないです」
「そうか?」
そう言ってヒメを見た。そして堅師が口を開く。
「なんかお取り込み中のようだな?」
ケンシが何やら訳知り顔で話を始める。
「昨日ちょっと声が聞こえてな。船を降りるとか何とか」
ハルの表情が険しくなる。
「それが何か?」
「いや。別に喧嘩を売っているわけじゃないし売ろうとも思っていない。ただな力にならなれるかもって話だ。一度でいい。組んで見ねぇか?」
ハルが迷い始める。剣士が言葉を続ける。
「俺たちなら、お前さんらを守ってやれる。今のお前さん達には必要なんじゃねぇか? 守る力が」
読み終わったら、ポイントを付けましょう!