え、異世界転移? いやなんで女の子になってんの!?

黒丸
黒丸

第7話 ちがうぞ! ロリコンじゃないからな!

公開日時: 2021年8月19日(木) 08:44
文字数:2,889

「うっわぁ」


 すっごい。


 さっきまで畑ばっかりだったのに。


 道は石畳だし家も石造りだ。


 しかも2階建てとか3階建てばっかり。


 お店とか露天も並んでるし、すごい活気。


「すごいね」


「うん、すごいな。世界遺産みたいだ」


 どこだったっけ、ほら、名前出てこない。


「エディンバラ?」


「いや、わかんない」


「わかんないんだ。でも確かに似てるね」


 やっぱり似てるのか。俺の記憶は正しかった。


「人口も多いみたいだし。中世っぽいのにね。やっぱり魔法があるからかな」


「難しいこと気にするよな、お前」


 でも確かに人多いな。


 しかもみんなこっち見るし。居心地悪い。おんぶされてるのも恥ずかしい。


 こいつのせいで、ちょっと冷めちゃったんだもんなあ。


「気になる?」


「気になる。てか、俺が考えてることよくわかるな」


「そりゃわかるよ。ずっと一緒だったんだから」


「まあ、そりゃそうか」


 けど、それだったら、もうちょっと気持ち良く調子に乗らせてほしかったけどな。


 うう、恥ずかしい。圭の背中に顔くっつけとこ。


「ふふ、恥ずかしかったらそうしてて」


「うるせぇ」


「たぶんもうすぐ着くから」


「ほんとか!?」


 あ、少しわき道に入るんだ。


 あれかな?


 女の人の横顔の看板。


「ここであってるよね?」


「じゃないか? 看板に"女神の後ろ髪"って書いてあるし」


 見たこともない字で書いてあるけど読めるんだよな。


 やっぱ異世界はこうじゃないと。


「入っていいのかな?」


「なんか入りづらいよな」


 日本だと、入り口や壁なんかもガラスで、中が見えて入りやすく作ってるけど、ここはレンガの壁に分厚い木の扉なんだもん。


 中なんて見えないし、すっげえ入りづらい。


「こうしてても仕方ないし、入ろうか」


「ん、そうだなって、あ」


 何の躊躇もなく俺をおんぶしたまま入るんだな。


 俺、ほんとに恥ずかしいんだぞ。


「誰もいないね」


「うん」


 入ってすぐ食堂?


 椅子とテーブルが置いてあって、カウンターがあって、そのむこうに厨房があって。


 なんか宿屋っていうよりレストランみたい。


「すみません。誰かいませんか?」


「は~い」


 子供の声? あ、カウンターのむこうに子供がいる。女の子?


「ママ~、お客さん~」


 いっちゃった。左のほうに出入口があるのかな。


「グレッグさんの娘さんかな?」


「じゃないか? 奥さんのわけはないだろうし」


 いくら異世界でもないよな。ママって言ってたし。


「は~い」


 うわ、美人だ。けっこう若い。この人がグレッグさんの奥さんかな。


「いらっしゃい。あら、綺麗な子たちね」


 うひ、女の人からも言われるんだ。なんか照れるな。


「すいません。グレッグさんの紹介で来たんですが……」


「主人の? あら、あの人の字ね」


 グレッグさんの書いてくれた紹介状。


 ここまでの道順とかも書いてくれてたりして、なんか気遣いのできる人って感じ。


「まぁ、お金がないの? 大変だったのね」


 俺達のことは、魔法師の師匠に放り出されて無一文。後払いで泊めてやってくれ。って書いてくれてんだよな。


「魔法師は変わった人が多いって言うものね。部屋は空いてるから泊まっていって」


 うわぁ、すっごい優しい。


「でも、僕達はお金を稼ぐあてもなくて。本当にいいんでしょうか」


「大丈夫よ。私の趣味でやってるような宿だから。それに、2人ともも魔法師なんでしょう? 魔法師なら仕事なんていくらでもあるんだから」


 そうなんだ!? ん、でも俺、よくわかんない探知と、道案内しかできないんだけど……。


「本当ですか!? よかった。頑張って働いて支払います」


 圭に養われることになんのかな。なんかそれやだなぁ。


 あ、そうだ。


「ケイ。降ろしてください」


「あ、どうしたの?」


 どうしたのって、ちゃんと挨拶しないとだろ。


 よっと。 


「背負われたままで申し訳ありませんでした。私はアキラと申します。」


「あら、声も綺麗ね。アキラちゃんみたいな綺麗な子、初めて見たわ。私はエマ。よろしくね」


 そこまで言うんだ。お世辞、じゃないよな。ほんとに可愛いもん、俺。


「あ、ありがとうございます。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。エマさん」


 お辞儀して。決まった! これで印象いいはず!


「あ、すいません! 僕はケイです。よろしくお願いします」


「はい。ケイくんもかっこいい子ね。それじゃあ、お茶いれるから、話を聞かせてくれる? そこ座って」


 お茶かぁ、こっち来てからなんも飲んでなかったな。嬉しいなぁ。


「晶、椅子たかいけど大丈夫?」


「ん、大丈夫。です」


 流石に子供じゃないんだから。あ、ほんとに高いな。


 よいしょ。座れた。はぁ。


「アキラちゃん、どこか悪いの?」


「いえ、少し歩きすぎてしまって。あまり歩く機会がなかったものですから……」


 これでいいんだよな、圭。


 なんで驚いた顔してんだよ!


「あら。でも、そうね、確かに日に当たったこともなさそうな肌だもの」


 んんん、これは褒められてるの?


「アキラの魔法は特殊で、あまり外に出ることを許されてなかったんです」


「魔法師は大変なのね」


 また嘘が重なっていく。お前ほんとに、ほどほどにしとけよ。


 まぁ、あとの話は圭に任せよう。俺が話すとボロが出そうだし。


 それにしても、やっぱり雰囲気あるな。壁は石レンガだけど床とか天井は木なんだ。


「まぁ、いきなり森の中にほうりだされたの? 荷物も持たずに?」


 ランプ下がってる。電気ないもんな。油かな。魔法で光らせたりするのかな。


「名前も? よほどの人だったのね。お師匠様は」


 あ、食堂の方にも扉がある。左の方が、グレッグさんたちの生活スペースなのかな。


「山賊!? 大丈夫だった、アキラちゃん。何もされなかった?」


「え? あ、はい。圭が守ってくれましたから」


 びっくりした。やっぱ山賊って聞いたらそうなるんだ。


「そう、壊滅させたの。山賊団を……。やっぱり魔法師は強いのね。はい、お茶。熱いから気をつけてね」


「ありがとうございます」


 あ、香ばしい。いい匂い。美味しいなぁ。なんのお茶だろ。


 ん? 食堂側の扉が開いてる。


 あ、さっきの女の子だ。幼稚園くらいかな。


 んふふ。子供ってかわいいな。


「こんにちは」


「……こんにちは」


「わたしはアキラです。あなたのお名前は?」


「アーシャ」


 ありゃ、逃げちゃった。嫌われたかな。


「あら、珍しい。あの子が人見知りするなんて」


「あ、そうなんですか……」


 え~、ちょっとショックだ。子供にはけっこう好かれるのに。


「可愛い子だね」


 うん。仲良くなれるかな。


 親戚の子供とか、よく遊んであげてたけど、みんな大きくなっちゃったんだよなあ。寂しい。


 あ、戻ってきた。


「アキラお姉ちゃん。おかし。食べて」


 うわあああ、持ってきてくれたんだ! かわいいなあ!


「ありがとう、アーシャちゃん。一緒に食べましょう?」


「おひざ、のっていい?」


 うっわあ、かわいい!


「いいですよ。さ、どうぞ」


 うぐ、けっこう重い。


「まぁ。綺麗なお姉さんだから緊張してたのね。よかったわね、アーシャ」


「うん!」


「僕はケイ。よろしくね。アーシャちゃん」


「ケイお兄ちゃん? うん! よろしくね!」


 素直でいい子だなぁ。いつか、こんな子供がほしいなぁ。


「ふふっ、アキラちゃんは、いいお母さんになれそうね」


 お母さん?


 え、お母さん!? 俺がお母さんになるの!?

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