え、異世界転移? いやなんで女の子になってんの!?

黒丸
黒丸

第3話 やっぱチートは定番だよな。あれ俺のは?

公開日時: 2021年8月13日(金) 12:43
更新日時: 2021年8月15日(日) 23:33
文字数:2,961

 「馬鹿なこと言ってないで早く逃げて!」


 「そんなこと言ったって動けないんだよ!」


 俺だって逃げたいよ!


 けどこれ、腕と足にがっしり絡みついてて。ひぅっ、また触手がぁ。


 あああ、異世界に来て美少女になって、いきなり触手にエッチなことされるとか……。


 ううう、せめて優しく。あんまりエグいのはやめてください。


 「晶、すぐにっ。 くそっ、はなせっ! 晶ぁ!」


 「ばかっ! 無理すんな!」


 お前まで捕まったらどうすんだよ!


 あ、脚に巻き付いてくんな! ああ、やっぱりそういうことされるんだ。


 うう、せめて、せめて優しく――


 「うひゅっ?」


 えぁ、空が青い。なにこの浮遊感。頭がチリチリする。


 これ、これ振り上げられてない?


 待って、待ってまって! 振り下ろすの!? それ死ぬよ!?


 「殺しにくるのかよおおおおうぴっ!」


 ああ、世界がスローモーションに。


 このまま地面に叩きつけられて死ぬんだ。


 「晶ぁっ!」


 おまっ、ばか、なんで出てくるんだよ! 受け止められる訳ないだろ!


 「圭どけええ!」


 お前まで死ぬだろうが!


 ダメだ、ぶつかるっ!


 ……


 ……?


 あれ?


 「よかった、上手くできた」


 圭?


 えっ、あれ受け止めれたの!? なんで!?


 「晶……」


 うわ、なんで抱きしめ、やめっ、気持ち悪いだろ!


 いや、それより触手は――


 「まだいるし!」


 「大丈夫」


 大丈夫って何がだよ!


 ほら触手きたあ!


 「もう解ったったから」


 「え?」


 こっちにきてた触手が宙をくるくるって。


 切り落とした? これってもしかして


 「圭、これって魔法か!?」


 「うん。そういう力を貰ったみたい、だから」


 光。


 光の柱だ。


 触手の塊を飲み込むくらい大きな。


 「すっげえ……」


 跡形もなくなってる。


 最初からいなかったみたい、とは言えないか。


 地面が真っ黒に焦げちゃってるし。


 「だからもう、こんな危険な目にあわせたりしないから」


 「うひぇ?」


 やっ、ちょっと、だから抱きしめんなって!


 「僕が晶を守るよ」


 いや、そんな決め顔されても。顔近いから。


 かお、抱、う、うあああああ。


 「圭、わかったから、おろして」


 「えっ、あっ、ごめん!」


 やっと解放された。なんなんだよもお、どう反応したらいいかわかんねえよ。


 ん、なんで背中向けんの?


 「どうした?」


 「いや……、えっと、少し魔法を使いすぎたのかも」


 「えっ、それ大丈夫なのか!?」


 魔力枯渇とかやばかったりするんじゃないの!?


 「うん、大丈夫。すぐ治まるから。それより、僕は魔法が使えたけど晶は何か力をもらってないの?」


 「あ、そうだった!」


 圭がチートもらってるし、俺もなんかあるよな。


 やっぱり魔法とか?


 ……


 美少女になってるし回復魔法とか。


 ……


 「なあ、圭、魔法ってどうやって使うの?」


 「え、自然と術式とか理論とかが浮かんでくるよ?」


 「なんも浮かんでこない……」


 「じゃあ違うんじゃないかな」


 「えー!」


 何でだよ、俺もかっこよく魔法使ってみたいのに!


 あ! もしかして力がすごく強くなってたりするんじゃないか!?


 よし、圭の肩を、うりゃあ!


 「気持ちいいけど、どうしたの?」


 弱くなってるじゃん!


 「うう~。俺、チートなんも貰えてないのかも」


 「大丈夫だよ。必要があれば僕みたいに自然に使えると思うよ」


 「けど俺も魔法使ってみたかった」


 「魔法だったらこれから覚えられるよ。それに何かあっても僕がいるから」


 あ、こっち向いた。


 くっそお、爽やかな顔しやがって。なんでそんな嬉しそうなんだよ。


 う~。でもまあ、仕方ないか。


 「じゃあ当分は頼るからな」


 「うん、任せて。それで、これからどうしようか」


 「あ~」


 そうだった。


 ここ、たぶん廃村だよな。何軒か家があるけど全部ボロボロだし。


 人の気配も無いもんなあ。


 「とりあえず移動したほうがいいかもな。ほら、あっちに道っぽいのあるし」


 だいぶ草が生えてきててわかりにくいけど。


 「ほんとだ。じゃあ行こうか」


 「ん」


 あれ、なか靴がガポガポする。なんで?


 あ、やばっ、こける!


 「うわっ」


 「っと、大丈夫?」


 「あ、ありがとう」


 よく受け止めれたな、お前。


 うぐ、圭の腕でおっぱい潰れて苦しい。


 よいしょっと。


 ん?


 「どうした、座り込んで」


 「いや、大丈夫」


 「大丈夫って、あっ、もしかして俺を支えたときに足くじいたのか!?」


 「本当に大丈夫だから。ねえ晶、転んだのって靴のサイズがあってないからじゃない?」


 「んん?」


 あ、ほんとだ。がボガボ。


 女の子って足ちいさいんだな。


 「これだとあんまり長くは歩けないね」


 「そうだなあ」


 けど歩かない訳にはいかないし。


 「じゃあ、僕がおんぶするよ」


 「ええっ!?」


 いや、さすがにそれは……。


 「どのくらい歩くか分からないし山道だから危ないよ。諦めて」


 いや、そんな、おんぶする体勢とるなよ。


 ほんとこいつは。


 「お前、やっぱり俺を甘やかすよな」


 「そうだね」


 そうだねじゃねえよ。


 でもあれだな。おんぶとは言え、この歳で男同士でくっつくのって抵抗あるな。


 う~ん、でも仕方ないか。実際、この靴で歩くの大変だろうし。


 よし、諦める。よっと。


 「っ!」


 うわ、なんかびくってしたこいつ。


 「どうした?」


 「ごめん、ちょっと立てない。少しだけ降りてもらっていい?」


 立てないってお前。


 「やっぱケガしてるのか!?」


 「あっ、あんまりその状態で動かないで」


 「ごっ、ごめん!」


 すぐ降りるから、ほら降りた!


 いやそれより。


 「立てないくらい酷いとか、なんで隠すんだよ!」


 おんぶなんてできるわけないだろ!


 「いや、そうじゃ……、えっと、ごめん、晶。回復魔法かけるから少しだけ後ろ向いててもらっていい?」


 「へ?」


 魔法使うだけなのに? なんで?


 「初めて使うから少し集中したいんだ。ケガの程度も確認したいし。だからお願い。少しだけだから」


 「ん、わかった」


 そんな酷かったのか。


 もしかしてさっきの触手に?


 俺なんか助けようとするから……。


 「お待たせ。もう大丈夫だよ」


 え、はやっ。


 もうおんぶする体勢になってるし。


 「なあ、ほんとに大丈夫か?」


 「うん。ほら、早く乗って」


 ほんとかよ~。


 こいついつも体調悪かったりするの隠すんだよな。


 でも言い出すと聞かないし、いいや、おんぶしてもらお。


 「ん。これでいいか?」


 「それじゃ、立つよ」


 「なあ、圭」


 「うん?」


 「ありがとな。ケガしてまで助けてくれて」


 「あ、ケガは……、うん、どういたしまして」


 「けど、あんまり無理すんなよ」


 「うん。わかった。けど、晶が危ない時は無理するから」


 無理すんなって言ってる時にこいつは。


 「それにさ、小さいころは晶が僕を助けてくれてたし」


 そんな時期もあったなあ。


 あの頃は俺のほうが身体が大きくて、圭は小さくて女の子みたいだったからいじられてたんだよな。


 それを俺が庇ってケンカしたり。懐かしい。 


 「じゃあ、今度こそ立つよ」


 「ん」


 うわあ、目線たっか。これが180センチオーバーの視界か!


 「歩いて平気?」


 「平気。頼むな」


 おお、動いた。変な感じだ。


 結構揺れるな、ゆれ……。


 うわ!


 「圭! すごいおっぱい揺れてる!」


 「ごほっ、晶、そういうこと大きい声で言わないで!」


 「え~」


 なんだよ、エロゲとか貸してやったりする仲だろ。


 「ブラしてないから仕方ないよ。早めになんとかしないといけないね」


 「ブラか~」


 俺がブラつけるのかあ。男に戻れるのかなあ、俺。


 いや、それより元の世界に戻れるのかな。


 しばらくこっちで生活するにしてもお金とか。


 圭がチート貰ってるから大丈夫だとは思うけど。


 はぁ、不安になってきた。





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