苦しい……。
なんでこんなとこで寝て……。
どこだ、ここ。
薄暗い。
建物の中?
なんかホコリっぽい。
壁もボロボロだし。
たしか、音がしなくなって、なんか声が聞こえて、それから……。
うう、とりあえず起きよ、床つめたいし。
「う……くぅ」
また、胸、苦しい。
あれ、なんだこのむちむちした感触。
「は?」
え。
なにこれ。
胸?
というかおっぱい?
おっぱいがなんで? なんで俺におっぱいがあんの?
あ、そっか! シャツでギチギチに締め付けられてるから苦しかったのか!
ボタンはずせば……。
あ、ボタン飛んだ。
はぁぁ、楽になったあ。
じゃなくて!
なんでおっぱいついてんの!? なにこれ、でかっ! でっか!
え、本物? あ、案外硬い。
いや、そうでもなくて!
えっと、スマホの、カメラの、インカメラってどうすんだっけ。
んんん、あ、これか。映った!
おわあ……、なにこの美少女。
うわ、眉毛ほっそ。目でっか。黒目もでっか。睫毛ながっ。え、これ口紅とか縫ってないの? 素でこんなピンクなの?
ふわぁ、すご。でも髪型が浮いてるなぁ。
こんな可愛いのに髪は雑に伸ばした感じのショートって。
……。
……。
うっそお、俺なのこれ!?
まじで? 俺、こんな美少女になってんの? なんで?
いやだいたいなんで髪型変わってないの!?
変えろよ、ここまでやるならさ!
「え? 晶?」
あ、圭もいるんだ! よかった!
「圭! おれっ……」
声がぁ!
なんだよ、この高い声。違和感しかないよ!
「どうしよう、圭、俺、美少女になっちゃってる!」
「やっぱり晶なんだ。えっと、とりあえずこれ羽織って」
ジャージの上?
「なんで?」
「胸元開いてるし、その、透けてるから。目のやり場に困るよ……」
「あっ、ごめん!」
そっか、下着、着てないもんな。すけちゃったか。普通に恥ずかしい。
うわあ、圭のジャージだぼだぼ。一応前のジッパーも上まで上げとこ。
「なんか、身長も縮んでない?」
「そっか? ちょっと立って」
「あ、いや、いまちょっと立てない、かな」
立てないって……
「お前、どっか怪我したのか!?」
「え!? あ、いや、そうじゃないんだけど。あ、身長なんかより」
「なんかっていうな!」
また160センチから遠のいちゃうんだぞ!?
「そんなに変わってないから大丈夫だよ」
「うるせえよ!」
くそお、180センチ以上ある奴はいいよなあ。
「まあ、それよりもさ、ほかのこと考えよう。ここがどこなのか、とか」
「いや俺が女になってるのはいいのかよ!?」
「うん。それは可愛いから良いと思う」
「ふっざっけっんっな! 人事だと思って適当にすんなよ!」
だいたい落ち着きすぎだろ、お前!
お陰で俺も落ち着いたから助かったけどさ。
「ごめん。でも、これでもう我慢しなくてよくなったから」
「我慢?」
なにを?
「あ、ここって教会っぽくない? ほら、ステンドグラスとかある」
こいつ、スルーしやがった。
でも確かに教会っぽいな。荒れまくってるけど。
開けっ放しになってる両開きの扉。そこから入って、正面に光が差し込んでくるステンドグラス。
今は何もないけど、もともとはそこに祭壇があったのかも。
「確かに、そんな感じだな」
「うん。晶は声って聞こえたよね」
声? あの気絶する直前の声か。
「ごめんなさいって女の声だよな。その後がよく聞こえなかったけど」
「聞こえなかった……。うん。そう、それ。あれって神様かな?」
「あ~、ありそう」
心に直接語りかけてた感じしたし。
「それで、ここは異世界」
「世界を救えとかな。無茶振りすぎる。」
「それで晶は、TS……転生?」
「死んでねえし! 転移だろ!」
え、死んでないよね? わかんない。怖い。
「ううう、これ、ほんとにどうすんだよお」
異世界はないにしても、この身体。あ、ない、ほんとにない。
未使用だったのに……。
「堂々と股間を弄るのはやめてほしいかな」
「だって気になるだろ! だいたいなんで女になってんだよ、しかも俺だけ」
「僕も女の子になってた方がよかった?」
「うええ?」
いや、どうだろう。考えたことあるけど、女だったらよかったのにと、女になっちゃったは全然違う気がする。
「いや、ならなくていい」
正直、どう接したらいいかわからなくなりそう。
「そっか。そうだね。晶には悪いけど僕は男のままで良かった」
「お前それひっでえ――いてっ」
なんだ? 足首になんか絡まってる。なんだこれ。
「どうしたの?」
「いや、なんか足に、うわっ、たっ、ええ!?」
なにこれ、引っ張られてる!? まって、こける、こけるって!
「晶!?」
「なんか、引っ張られっ、てっ、うべっ」
こけたあ!
「うえっ? えっ、えええええっ!?」
速いはやいはやい、引きずられる!
入り口のほうに!?
外から!?
あああ、尻あっつい!
「うわあっ!」
眩しい。外に出た?
俺、浮いてる?
ボロボロの家が何軒かある。ここって廃村かn
「んぐぇっ!」
うごお、背中から落ちた!
あ、でもそんな痛くない。草がクッションになったのかな。
よかった。早く起き……ん?
んん~?
あれ?
動けない。
なんか手足に絡まってる。
やばい。
もしかして俺、捕まった!?
「晶! 晶、どこ!?」
「圭!ここ――ひっ!?」
なんか出たあ!
「しょく……しゅ?」
触手だ。ぬるぬるうねうね塊になってる。
俺なんて飲み込めそうなくらいデカくない?
「晶、動けるなら逃げて」
ほんとに異世界なんだここ。
でもこれ、これって……。
「これエッチな奴じゃん!」
「馬鹿なこと言ってないで早く逃げて!」
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