え、異世界転移? いやなんで女の子になってんの!?

黒丸
黒丸

第2話 よくあるTSF。よくねえよ!

公開日時: 2021年8月13日(金) 12:43
文字数:2,174

 苦しい……。


 なんでこんなとこで寝て……。


 どこだ、ここ。


 薄暗い。


 建物の中?


 なんかホコリっぽい。


 壁もボロボロだし。


 たしか、音がしなくなって、なんか声が聞こえて、それから……。


 うう、とりあえず起きよ、床つめたいし。


 「う……くぅ」


 また、胸、苦しい。


 あれ、なんだこのむちむちした感触。


 「は?」


 え。


 なにこれ。


 胸?


 というかおっぱい?


 おっぱいがなんで? なんで俺におっぱいがあんの?


 あ、そっか! シャツでギチギチに締め付けられてるから苦しかったのか!


 ボタンはずせば……。


 あ、ボタン飛んだ。


 はぁぁ、楽になったあ。


 じゃなくて!


 なんでおっぱいついてんの!? なにこれ、でかっ! でっか!


 え、本物? あ、案外硬い。


 いや、そうでもなくて!


 えっと、スマホの、カメラの、インカメラってどうすんだっけ。


 んんん、あ、これか。映った!


 おわあ……、なにこの美少女。


 うわ、眉毛ほっそ。目でっか。黒目もでっか。睫毛ながっ。え、これ口紅とか縫ってないの? 素でこんなピンクなの?


 ふわぁ、すご。でも髪型が浮いてるなぁ。


 こんな可愛いのに髪は雑に伸ばした感じのショートって。


 ……。


 ……。


 うっそお、俺なのこれ!?


 まじで? 俺、こんな美少女になってんの? なんで?


 いやだいたいなんで髪型変わってないの!?


 変えろよ、ここまでやるならさ!


 「え? あきら?」


 あ、けいもいるんだ! よかった!


 「けい! おれっ……」


 声がぁ!


 なんだよ、この高い声。違和感しかないよ!


 「どうしよう、けい、俺、美少女になっちゃってる!」


 「やっぱりあきらなんだ。えっと、とりあえずこれ羽織って」


 ジャージの上?


 「なんで?」


 「胸元開いてるし、その、透けてるから。目のやり場に困るよ……」


 「あっ、ごめん!」


 そっか、下着、着てないもんな。すけちゃったか。普通に恥ずかしい。


 うわあ、けいのジャージだぼだぼ。一応前のジッパーも上まで上げとこ。


 「なんか、身長も縮んでない?」


 「そっか? ちょっと立って」


 「あ、いや、いまちょっと立てない、かな」


 立てないって……


 「お前、どっか怪我したのか!?」


 「え!? あ、いや、そうじゃないんだけど。あ、身長なんかより」


 「なんかっていうな!」


 また160センチから遠のいちゃうんだぞ!?


 「そんなに変わってないから大丈夫だよ」


 「うるせえよ!」


 くそお、180センチ以上ある奴はいいよなあ。


 「まあ、それよりもさ、ほかのこと考えよう。ここがどこなのか、とか」


 「いや俺が女になってるのはいいのかよ!?」


 「うん。それは可愛いから良いと思う」


 「ふっざっけっんっな! 人事だと思って適当にすんなよ!」


 だいたい落ち着きすぎだろ、お前!


 お陰で俺も落ち着いたから助かったけどさ。


 「ごめん。でも、これでもう我慢しなくてよくなったから」


 「我慢?」


 なにを?


 「あ、ここって教会っぽくない? ほら、ステンドグラスとかある」


 こいつ、スルーしやがった。


 でも確かに教会っぽいな。荒れまくってるけど。


 開けっ放しになってる両開きの扉。そこから入って、正面に光が差し込んでくるステンドグラス。


 今は何もないけど、もともとはそこに祭壇があったのかも。


 「確かに、そんな感じだな」


 「うん。あきらは声って聞こえたよね」


 声? あの気絶する直前の声か。


 「ごめんなさいって女の声だよな。その後がよく聞こえなかったけど」


 「聞こえなかった……。うん。そう、それ。あれって神様かな?」


 「あ~、ありそう」


 心に直接語りかけてた感じしたし。


 「それで、ここは異世界」


 「世界を救えとかな。無茶振りすぎる。」


 「それであきらは、TS……転生?」


 「死んでねえし! 転移だろ!」


 え、死んでないよね? わかんない。怖い。


 「ううう、これ、ほんとにどうすんだよお」


 異世界はないにしても、この身体。あ、ない、ほんとにない。


 未使用だったのに……。


 「堂々と股間を弄るのはやめてほしいかな」


 「だって気になるだろ! だいたいなんで女になってんだよ、しかも俺だけ」


 「僕も女の子になってた方がよかった?」


 「うええ?」


 いや、どうだろう。考えたことあるけど、女だったらよかったのにと、女になっちゃったは全然違う気がする。


 「いや、ならなくていい」


 正直、どう接したらいいかわからなくなりそう。


 「そっか。そうだね。晶には悪いけど僕は男のままで良かった」


 「お前それひっでえ――いてっ」


 なんだ? 足首になんか絡まってる。なんだこれ。


 「どうしたの?」


 「いや、なんか足に、うわっ、たっ、ええ!?」


 なにこれ、引っ張られてる!? まって、こける、こけるって!


 「あきら!?」


 「なんか、引っ張られっ、てっ、うべっ」


 こけたあ!


 「うえっ? えっ、えええええっ!?」


 速いはやいはやい、引きずられる!


 入り口のほうに!?


 外から!?


 あああ、尻あっつい!


 「うわあっ!」


 眩しい。外に出た?


 俺、浮いてる?


 ボロボロの家が何軒かある。ここって廃村かn


 「んぐぇっ!」


 うごお、背中から落ちた!


 あ、でもそんな痛くない。草がクッションになったのかな。


 よかった。早く起き……ん?


 んん~?


 あれ?


 動けない。


 なんか手足に絡まってる。


 やばい。


 もしかして俺、捕まった!?


 「あきら! あきら、どこ!?」


 「けい!ここ――ひっ!?」


 なんか出たあ!


 「しょく……しゅ?」


 触手だ。ぬるぬるうねうね塊になってる。


 俺なんて飲み込めそうなくらいデカくない?


 「あきら 、動けるなら逃げて」


 ほんとに異世界なんだここ。


 でもこれ、これって……。


 「これエッチな奴じゃん!」


 「馬鹿なこと言ってないで早く逃げて!」

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