え、異世界転移? いやなんで女の子になってんの!?

黒丸
黒丸

第5話 知らない土地ってだけで感動するな! しない?

公開日時: 2021年8月15日(日) 23:39
文字数:2,008

 ふあぁ。明るい。洞窟の中って息が詰まるな。死体だらけになってたし。


 まぁ、ずっとおんぶされてるだけだし文句は言えないけどさ。


「異世界って怖いね。食料庫なのに食べれそうなものがないとか」


「ほんとな」


 なんか全部、カビが生えてたり腐りかけてたりしてんだもん。俺達の基準だと、あれ食べ物じゃないから。


「でも塩とチーズがあったのはよかったね」


「な~、あんなでっかいチーズ初めて見た」


 よくテレビなんかでは見たけど。でーんって丸いでっかいやつ。


「これで、しばらくは野宿でもなんとかなるよ」


「野宿かあ。森の中で焚火を囲んで、交代で寝るんだよな」


 さっきのチーズを炙って食べたりとか。


「嬉しそうだね」


「やってみたかったんだよ。キャンプとかも行ったことないだろ」


 バーベキューくらいなら圭の家と一緒に行ってたけど。


「そういえば行ってないね。じゃあ、キャンプ気分で野宿しようか」


「だな。あ、それよりさ、あんな便利な魔法も使えるんだな」


「ん? 収納のこと?」


「そうそう」


 チーズとか塩の塊とかが、圭がさわると消えるからびっくりしたよ。


「鞄やバッグしまってたから、もう気づいてると思ってた。異世界ものの定番だし」


「しょうがないだろ、使えないんだから!」


 察しが悪くて悪かったな!


「ごめんごめん。ところでさ、馬で半日ってどのくらいかわかる?」


「たしか、20キロか30キロくらい。昔、ネットで見た」


 ファンタジー世界を検証するみたい奴。昔だから曖昧だけど。


「そっか、結構あるね」


 そうだよなぁ。歩いてどのくらいだろ、時速5キロとして……うわ、4時間から6時間。


「なあ、そろそろ俺も歩いたほうがよくないか?」


「駄目。ぜったい転ぶし怪我するから」


「転ばないし! それに疲れるだろ、お前」


「晶は軽いから大丈夫。歩かせるほうが心配で疲れるよ」


「ひっどいな!」


 いや、この身体でガボガボの靴だし、こけないとは言えないけど。


 たぶんこけるけど。


「でもさ、下手したら6時間だぞ。いくらなんでもきついだろ」


「じゃあ、早く着けばいいんだね」


「ん?」


 どういうこと?


「身体強化と矢避けを応用して風除けにして、騒ぎになるといけないから認識阻害を強めにかければ……」


 なに言ってんのこいつ。


「うん、いけそう。1時間で着くから」


「いや、待って! それって速すぎだろ!」


 俺を背負って時速30キロで1時間!? 本気で言ってんの!?


「振り落とされないように、しっかりつかまってて」


 こいつ本気だ。しっかりしがみついとこ。


「……。よし! 行くよ!」


 うわっ、うわっ、うわわわわっ!


 加速すごっ!


「はっやぁあああああ!」


 山賊追いかけた時より、ずっと速い!!


 あれ、なんかあんまり、おっぱい揺れない。


「圭! もしかして揺れないようにしてくれてるのか!?」


「うん! 痛いって聞いたから!」


 こいつ良い奴だなぁ。


 でもこれ、すごい速さで景色が流れてるな。風圧すごいし。これってほんとに時速30キロ? 体感速度がすごいだけ?


「圭! これって時速何キロくらい出てんだ!?」


「ごめん、わからない! 身体に負担が来ない範囲ギリギリで調整してるから!」


 えっと……、怖い。


 転んだだけで俺、死ぬんじゃない?


 あ、森ぬけそうかも?


 やっぱり。森が切れてる。


 抜けた!


「うわああああああ!」


 すっごお! 見渡す限りの草原だ!


「すごいな圭! 地平線だ!」


「うん! 生で初めて見た!」


「ほら! 馬車走ってる! あれって街道か!?」


「みたいだね! 馬車ってけっこう遅いんだ!」


 うわぁ! テンション上がるなあ!


 女の子になっちゃって帰れるかもわかんないけど、これはこれで悪くないな!


「馬車と同じ方向でいいかな!?」


「たぶん大丈夫だろ! 馬車が向かってるならどっかに着くって!」


 1人だったらこうはいかなかったよ。


 山賊にクルクルされてどっかに売られてたかも。


 圭にはほんとに感謝しないと。


「ほら、川だ! でっかい! 船もいるぞ!」


「ほんとだ! 荷物積んでるね!」


「すっごいなあ!」


 うっわぁ、どうしよう。すっごい楽しい!


 不安なんて吹っ飛んじゃった。


「晶! なにか見えてきた!」


 はあ!?


「速すぎじゃないか!?」


「時速100キロくらい出てるのかも!」


「こわっ!」


 なんか速すぎるって思ったんだよ!


「お前、ぜったい転ぶなよ! ぶつかるなよ! 人はねるなよ! ぜったい俺おとすなよ!」


「なにがあっても晶は絶対、落とさないから! 心配しないで!」


「信じるぞ! あれ街だな! でっかい!」


「けっこう高い建物あるね!」


「な! でも城郭都市じゃないんだな!」


「やっぱり思った!?」


 なんか、城郭都市じゃないとダメなイメージあったもん。普通に考えたら、都市ごとにそんなもん作ってられないよな。


 高い建物はなんだろう。教会とかかな。


「晶! あの高いの時計塔っぽいよ!」


「時計塔!?」


 時計があるの!?


 あ、俺にも見えてきた。ほんとに時計塔だ。


「文化水準どうなってるんだろうね! この世界!」


「ちょっと楽しみだな!」


「うん! そろそろ減速するよ!」


「わかった!」


 

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