何とかしてここから出る方法を探さなきゃ…
そう思いを巡らせながら左を見れば、
「えっ?」
用意された料理に平然と箸をつけている人がいた。
「え、ちょ、食べて大丈夫なんですか?!」
私以外に気付いたもう一人が驚きの声を上げる。
「だって…わざわざ毒を盛るって効率悪いと思いませんか?」
その一声で、静かに口を動かす色白の人に全員の視線が集中する。
「どういうことですか?」
「例えば、他に何も食べ物がなくて用意されたものを食べなければ飢えてしまう。
ただし、それには毒が盛られている。とかならありそうですけど…
ここまでしっかり食べ物の蓄えがある中で、わざわざそんなことしないかと。」
「そう言われてみればそうかも?」
「犯人は、まだ今この時点では仕掛けるつもりはなさそうですね。
問題は食事を取ったあとどうなるか…」
その言葉に再び場が静まる。
この人、こんな状況の中でも冷静に分析してるな…
やっぱり犯人も相当綿密な計画を立てていそう。
「…何かあるのだとしたら、その前に美味しいご飯いっぱい食べたいな…」
「うん、そうしましょう」
「折角なんで、自己紹介でもしましょうよ。“良い時間をお過ごしくださいませ”とか言ってましたし」
諦めムードの中、何となくの雰囲気で全員がテーブルを囲み始める。
これから一緒に過ごすことは免れなさそうだし、お互いのことを知っておいた方がいいに違いない。
ずっと重たいことばかり考えていたけど、美味しそうな料理を目の前にすれば私も食欲が湧いてきた。
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