門番VS

あらゆる災厄から門を死守せよ!スーパー門番同棲ファンタジー!
ここのえ九護
ここのえ九護

いつまでも一緒の門番

公開日時: 2021年11月5日(金) 18:30
文字数:3,005


「さあさあさあっ! 行きますよヴァーサス、ミズハさん! 門・門・宅パーティーの力、久しぶりに見せつけちゃいましょう!」


「ハッハッハ! それはあのリドルのご実家を尋ねた時の話だな! なんとも懐かしいものだ!」


「そうですね……絶対に忘れられない、とっても素敵な思い出ですっ!」


 リドルの展開した白の門。かつてヴァーサスと共に守り、今はリドルの内にその座標を宿すあらゆる平行世界を繋ぐ門。


 全てはこの門から始まった。この門がリドルとヴァーサスの出会いを生み、やがてミズハが、黒姫がその輪の中に加わった。


 かつては無数に存在する数多の門と同等の力しか持たなかった白の門。しかし今、その門の持つ力はリドルとヴァーサスが紡いだ無数の因果によって他の門を遙かに上回る圧倒的エントロピーを保持している。なればこそ――――!


全殺しの槍キルゼムオール! そして全反射の盾オールリフレクターよ! 我が門番の魂にかけて命じる――――今ここに、俺達の力を示すぞ!」


「先陣は私が! ミズハ、参ります――――!」


『ググ……! グググ……! 来るか、門番共――――!』


『師父の邪魔はさせん。門番ランク2、ミズハ・スイレン。貴様の首は、このロウガが取る――――!』


 刹那。ついにヴァーサスがその手に持つ二つの因果律兵器――――全殺しの槍キルゼムオール全反射の盾オールリフレクターの力を解放。その閃光を背後に、白銀に輝く双蓮華そうれんげを構えたミズハが奔る。

 

「はあああああああ――――ッ! 睡蓮双花流、絶技――――魂華繚乱!」


「オオオオオオオオ――――ッ! 竜胆転神流、奥義――――四神雷鳴!」


 交錯。それは光速を遙かに越えた超光速の斬撃。


 銀と鈍色の領域が正面から激突し、しかしそれは秒にも満たぬ閃瞬の間に互いの後方へと突き抜ける。


『ま……さか……っ!?』


 瞬きすら許されぬ交錯の後。その領域を微塵に打ち砕かれたのはロウガだった。


 ロウガは超光速を維持できずにその体勢を崩すと、僅かな間を置いて落下し続ける領域の下方へと錐もみとなって墜ちていく。そして同時に――――!


「うおおおおおおお――――ッ!」


『ただ力を振りかざすことしか知らぬ門番風情めが! この儂直々に地獄への引導を渡してくれようぞッ!』


 自身の周囲に七枚の結晶と化した全反射の盾オールリフレクターを纏い、巨大な一振りの槍へとその形状を変化させた全殺しの槍キルゼムオールを構えたヴァーサスが加速する。


『喰らえぃ……! これぞ我が竜胆転神流極技――――神断ッ!』


 それを受けるジュウギはかつてリヴァーサスとの戦いでミズハが見せた、全反射の盾オールリフレクターに僅かだが存在する間隙を切り裂く、研ぎ澄まされた刃を放つ。だが――――!


「おおおおおおおおッ!」


『な、なんと……ぎゃあああああああ!?』


 だがしかし。ジュウギの放った乾坤一擲の刃はヴァーサスに届く遙か手前でその領域を跡形もなく破壊され、刀身どころかジュウギの肉体までをも熱く焼いた。


「悪いが、俺はミズハほど上手くは斬れんぞ――――!」


『があああ……ッ!?』


 あまりの灼熱。既にバーニングファイナル門番ヴァーサス・パーペチュアルカレンダーにならずともその身を覆う因果生滅の炎が、ジュウギの領域ごと全てを焼き尽くす。


 そしてヴァーサスはその隙を逃さない。悶え苦しむジュウギめがけ、針の穴を通すような一点突破の突きを撃ち放つ。


『ま、まだだ……! 儂の……私の憎悪は……! まだまだ終わリマセン――――!』


「避けたか! しかし逃さんッ!」


 だがヴァーサスの放った因果破砕の一撃をジュウギはギリギリで躱す。恥も外聞も捨ててヴァーサスから距離を取らんとするジュウギはしかし、息を乱しながらも怨嗟の嘲笑を浴びせる。


『グ、グググ! 馬鹿め……っ! 貴様らがそれほどの一撃を繰り出せば、その衝撃はトウゲンに及ぶと警告したはず……っ! 偉そうなことをほざいても、貴様らも我が身可愛さに民を犠牲に――――!』


 見事ジュウギとロウガの領域を打ち砕いたヴァーサスとミズハ。


 しかし無抵抗の相手ならまだしも、強大な領域を纏う二者へと放たれた二人の攻撃は、どうしてもその衝突による余波を周囲に発生させてしまう。


 それが今この場と接続されたトウゲンの街に及べば、ジュウギの言う通りそれこそトウゲンだけでなく、この星そのものが一瞬で消滅するだろう。だが――――!


「――――するわけないでしょう? 私がなんのためにここに来たと思ってるんです?」


『グッ!?』


「今となってはヴァーサスもミズハさんも宇宙の一つや二つ簡単に吹っ飛ばせてしまいますので、そういう危ない攻撃は全部――――! 私の門が引き受けちゃいますよっ!」


 だがしかし、その強大な領域による破砕は大きくその扉を開いたリドルの門に余すことなく飲み込まれていく。しかもどうだろう、その破砕を受け止めた白の門は、その神々しい輝きを更に増し、その力を増大させたのだ。


「はい残念! ほらほら、そろそろその方の肉体から脱出しないと、このまま塀の中で死ぬまで臭い飯を食べるハメになりますよっ!」


『ググッ!? 儂の……私の存在に気付いて……!?』


「ハッハッハ! 観念するのだな、よくわからん何かよ! リドルに隠し事は通用しない! この三年間、俺が料理をつまみ食いしてバレなかったことなど一度もないのだっ!」


「そういうことですっ! さあさ二人とも、後は思う存分フルボッコにしちゃって下さい!」


「任せろ――――っ!」


「いざ――――!」


『ググ……! グググ……! 儂は、ワタシは――――深淵の力すら取り込んだにも関わらず、また敗れるというのか……?』


 リドルの展開する至純の白。純白に輝く白の門の光を背後に、この宇宙のヒエラエルキーの頂点に立つ二人の門番。ヴァーサス・パーペチュアルカレンダーとミズハ・スイレンが眼下のジュウギ目掛けて駆ける。


「師匠! 呼吸は私に――――!」


「うむ! 俺の矛先、ミズハに預けるぞ――――!」


『い、いやだ……ッ! 嫌だ嫌だ嫌だ、イヤダアアアアアアア――――!』


「睡蓮双花流、終の太刀――――! 点睛・月華睡蓮っ!」


 一閃。そして灼熱。


 先行したミズハの奥義は見事ジュウギの肉体に取り付いていた存在を切り裂き、その肉体から一寸の狂いもなく分離させる。


 そして続けざまに繰り出されたヴァーサスの全殺しの槍キルゼムオールによる一撃。それはジュウギから切り離された存在を正確に貫き、即座に因果生滅の炎で焼き尽くした。


 そしてそこから放たれた極大の余波もまた、リドルの門によって被害を出すことなく消滅。あらたなるエントロピーとなって別宇宙へと流れ込んでいく。


 幾重にも連なる衝撃が隔離された領域に響き、やがて静寂が訪れる。



 ジュウギに取り付いていたナニカは滅びた。

 


「うむっ! 見事だミズハ! そしていつも支えてくれて感謝する、リドル!」


「いいってことですよ! これぞ、私達三人の――――!」


「はいっ! 私達がこれからも積み重ねていく思いの――――!」


「――――俺達みんなの力だっ! 次に何かをする時は、門番に許可を取ってからにするのだな! よく分からん何かよッ!」


 崩壊を始めた漆黒の領域の中。


 時が流れても変わることなく絆を深め続ける三人は、互いに笑みを浮かべてその顔を見合わせると、力強く握りしめた拳を天上へと突き上げたのだった――――。





 門番ヴァーサス・パーペチュアルカレンダー

 門番ミズハ・スイレン

 宅配業者リドル・パーペチュアルカレンダー

 VS

 竜胆転神流師父ジュウギ・リンドウ

 竜胆転神流筆頭ロウガ・リンドウ



 ○門・門・宅 ●ジュウギ・ロウガ 決まり手:点睛月華睡蓮→因果生滅の炎


 

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