異世界で双子の勇者の保護者になりました

ちびっ子育成ファンタジー!未来の勇者兄妹はとってもかわいい!
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4.リラレルンス

公開日時: 2021年2月27日(土) 19:14
文字数:2,056

俺たちは再び国王の御前にいた。


「勇者殿、それにショート殿、何度も呼び出してすまないな」


 国王が俺たちに言う。


「いえ、事情は聞きましたから」


 すくなくとも、王でありながら「すまない」という言葉を言える彼は悪い人間ではないのだろうと、俺は少し思う。

 フロルが国王に問う。


「それで、どうされるおつもりなのですか?」


 具体的でない、含意が多すぎる問いかけに、国王は「ふむ」と首をひねる。


「正直に言えば困っておる。何しろ相手の意図が読めん」


 半日前に王都を焼いておきながら、いきなり和平などと言われても、確かに意味不明である。

 国王としてもどうしたら良いものやらといったかんじらしい。


 次に口を開いたのはアレル。


「じゃあさ、王様はどうなってほしいの?」


 先ほどのフロルの問いと、似ているようで違う問い。


「余の願いか。そうだな。細かく言えばいろいろあるが……」


 言いよどむ国王に、アレルはピシャっと言う。


「細かくなくて良いよ。一番の気持ちを聞かせて」


 まるで、国王の意図を推し量ろうとするかのようなアレルの問い。

 この子は何が言いたいんだ?


「そうだな。そう言われれば答えは1つしか無い。

 二度と王都が焼かれぬこと。王都の――いや、王都だけでなくあらゆる民が、二度と犠牲にならぬこと」


 その言葉に、アレルはうなずいた。


「そっか。わかった。なら、アレルは王様に協力するよ」


 そういったアレルは、少しホッっとした表情だった。


「ありがとう、勇者殿。心から感謝する」


 そんな会話を交わした後。

 俺たち5人と国王、それに内務大臣ザスラルの計7人は、和平を願う魔族と相対することとなった。


 ---------------


 俺たちの前に現れ跪いた魔族は、自らをリラレルンスと名乗った。


「この旅は国王陛下、ならびに勇者様方とのお目通りがかないましたこと、心より御礼申し上げます」


 恭しくいうリラレルンス。

 俺たちを見てアレルとフロルが勇者だとすぐに気がついた様子だ。

 あらかじめ知っていたか、それとも魔王と同じ年齢の子どもがこの場にいることからの推察か。


「ふむ」


 国王は小さくうなずく。

 すくなくとも、リラレルンスから敵意は感じない。

 俺だけでなく、そういうのに敏感なアレルやライトも特に警告してこない。


 国王はリラレルンスに問う。


「王都を焼いたことに対する謝罪と、今後の和平を望むとのことであるが?」


 リラレルンスは国王の言葉を、しかし否定する。


「それは、厳密には違います」


 国王は目を細める。


「どういうことか?」

「そも、私どもには初めから争う意図などなく、またこの国と敵対したつもりもございません」


 いや、それは通らないだろ。

 都市空襲まで仕掛けておいてなにを言うのか。


 そう感じたのは俺だけではないのだろう。

 空気がピリつく。


 リラレルンスの意図を探りかねる俺達。

 結局、最初に口を開いたのはザスラルだった。


「何を言うか。王都を焼いたのはその方達であろう」


 ザスラルが怒るのも無理はない。

 リラレルンスの言葉はあまりにも無責任だ。

 いや、無責任というよりも意味不明だ。


「我が同胞の一部がこの街を焼いたは事実。今回、私が申し上げたき謝罪とは、王都を焼いたことではなく、王都を焼いたアブランティアら過激派を止めることができなかった件についてです」


 ……そういうことか。

 国王はリラレルンスをにらむ。


「つまり、王都を焼いた魔族と、そなた――あるいはそなたらは必ずしも意見をおなじくしないと申すか」

「はい。誤解しないでいただきたいのは、すべての魔族が人族やエルフ、ドワーフら亜人種との戦乱を望んでいるわけではないということです」


 要するにリラレルンスのいいたいことはこうだ。


『確かに自分はアブランティアと同じく魔族だが、一緒にしないでほしい。自分は戦争なんて望んでいない』


 うん。

 そりゃあね。

 魔族だけじゃなくて、どんな社会でもいろいろな意見を持つ者がいるのは当然だろう。


「我が同胞が、この街を焼いたこと、お怒りはごもっともと存じます。しかし、だからといってそのまま戦乱にすすむは、それこそアブランティアら過激派の願ったとおりの形。ゆえに無理のある願いと知りつつ、和平の申し出をさせていただきたいのです」


 さて。

 一体どうしたものか。


 俺は悩む。

 悩んですぐに気がつく。

 冷静に考えてみれば俺が決めることではない。

 俺は勇者の保護者として異世界から一時的に召喚されただけの人間。

 この答えは、この世界の人々――つまり、国王と勇者がだすべきことだ。

 そう思えば、口を挟むこともできない。

 もちろん、アレルやフロル――特にアレルが再び心を痛めるような展開は避けたいが。


「なるほど」


 国王は小さくうなずいた。


「リラレルンス殿の申し出は理解した。が、そもそも肝心なことを聞いておらぬ。

 そなたは魔族の中でどのような地位にある者ぞ?」


 確かにな。

 和平を受け入れるにしろそうでないにしろ、相手の立場がわからなければ意味が無い。

 極論、ただの農民と和平なんてしたって意味が無い。


「私は魔王様に仕える者。同時に、魔族の指導者である八賢人の1人にございます」


 なに、それ?

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