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(ダルネス=ゴッドウェイ/三人称)
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エンパレの冒険者ギルドから、馬車で出発してしばらく経って。
冒険者ギルドの長ダルネス=ゴッドウェイは、最強の戦士レルス=フライマントに話しかける。
「なかなかに面白い子達じゃったのう」
「そうですな」
異常な能力を持っている子ども達を前にして、『面白い』ですませられるこの2人も、大概器が大きい。
「アレルもフロルも……いや、ショートも、かなりの力を持っています。その力に溺れぬことを祈るばかりです」
「ふむ、そうじゃな」
この世界にはまれに神に祝福されたかのごとき才能の持ち主が現れる。
他ならぬ、ダルネスやレルスもその1人だ。
だが、そういった人間のほとんどは、自らの才能に溺れ、むしろ不幸せな人生を送ることになる。そのことを、2人はよく知っていた。
と。
レルスが両手の小手を外す。
「この小手はもうダメですな」
レルスの小手は両方ともヒビが入っていた。
「ほう」
ダルネスは目を細める。
「アレルがあと10回も連撃を繰り出していたら、少なくとも私は小手以外のもので防御せざるをえなかったでしょう」
一見するとただの鉄の小手に見えるが、実際には強化魔法によって大幅に頑丈に作られている一品だ。両方あわせて大判金貨10枚はする。
「ふぉふぉふぉ。ただの木刀でそこまでか。たしかにそれはすごいのう」
だが、歴戦の戦士はギルド長の見解に異を唱える。
「どうでしょうな。そういう状況であることに気がつかず、途中で攻撃の手を止めてしまったのですから」
アレルの攻撃は全く効いていなかったわけではない。
もしも、さらに連撃を続けていれば、すくなくとも一矢報いることくらいはできたはずだが、アレルはその前に身を引いてしまった。そういうことだろう。
「ふぉふぉふぉ。相変わらずお主は厳しいのう」
その言葉に、歴戦の戦士は答えない。
「それで、お主はこれからどうするつもりじゃ?」
「南西の魔の大陸へ。このところ、魔族の動きが妙です」
「妙とは?」
「まだわかりません。ゆえにこそ探りに行きます。ただ、魔王復活の噂もあるようです」
「ふむ」
勇者と魔王の伝説。世間では眉唾物のフィクションのようなものとされている。
だが、そうではないと2人は知っている。
「勇者と魔王の戦いか。さて、できれば魔族と戦争などという事態は避けたいがのう」
「はい。全くです」
それにしてもと、ダルネスは思う。
(勇者か。まさかな……)
つい先ほどまで一緒にいた双子のことを考える。
(いや、そんなはずはないな)
勇者とは魔法も剣術もどちらも生まれながらの天才。
確かにあの子ども達は天才だが、それぞれ剣術と魔法の天才であって、両方の天才ではない。
だが、そうであったとしても、もしも魔族と戦争になれば、あの子ども達も否応なく巻き込まれるだろう。
あれだけの力を持っているのだ。例えダルネスが庇ったとしても、何らかの形で必ずかり出される。
(あの子達のためにも、戦争は避けねばならんな)
ダルネスはそう、心に誓うのだった。
ここまでお読みいただきましてありがとうございました。
ショート達3人はついにレベル1になりました。
ここからは、ほのぼの系ちびっ子育成ファンタジーから、勇者の覚醒へと物語が移行します。
魔の森へと向かうことになるショート達
死闘の果てにショートが見たモノとは!?
アレルとフロルは真の勇者になれるのか!?
ここまでは、いわば物語の導入。
ここからが本当の冒険です!
読み終わったら、ポイントを付けましょう!