異世界で双子の勇者の保護者になりました

ちびっ子育成ファンタジー!未来の勇者兄妹はとってもかわいい!
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2.王女様が誘拐!?

公開日時: 2021年3月11日(木) 12:48
文字数:2,172

クラリエ王女とタリアの部屋へ入り。

 俺は床に倒れているタリアに、『解毒』の魔法をかける。

 ほどなくして、タリアは目を覚ました。


「面目次第もございません」


 事情を理解すると、タリアは俺に深々と頭を下げた。


「俺に謝られても困るんですが……」

「はい。ですが、クラリエ様の護衛でありながら、この不始末。許されることではありません」


 確かにその通りなのかもしれないが。


「むしろ、許されないのは他人に睡眠薬を盛るクラリエ様でしょう」


 俺も詳しいわけではないが、この世界の薬は日本のものに比べて劣っている。

 劣っているというのは、必ずしも効果が薄いという意味ではない。

 副作用のリスクが高いとか、効果が強すぎて危険とかいうものも多いらしい。

 睡眠薬の場合は、効果が強すぎる上に副作用もあるとのこと。

 旅すがら、生け贄の村で睡眠薬を飲まされたという話をした時に、ミノルに言われたことだ。彼は日本では医師免許を持っているらしいから確かなことなのだろう。


「正直に申し上げますけど、はっきりいって責任持てないですよ。護衛依頼っていうのは、外からの攻撃に対して護るってことであって、護衛対象に睡眠薬を盛られるリスクは依頼外です」


 今回、睡眠薬を盛られたのはタリアだが、次は俺かもしれないし、双子かもしれないし、ソフィネやライトかもしれない。

 いくらなんでも、護衛対象から毒を盛られるなどシャレにもなってない。


「仰る通りだと思います。ですが……」

「そもそも、これは俺が口出すことじゃないですけど、このままクラリエ様を嫁がせて大丈夫なんですか? 最悪、結婚相手の食事に睡眠薬を盛りかねませんよ」


 宿の中で口には出さないが、この場合の結婚相手というのはブラネルド王国の王子である。

 嫁いできた他国の王女が、結婚相手の王子に毒薬に近い睡眠薬を飲ませたら……そして、万が一にもそれで王子の身に何かあったら。


 はっきりいって外交問題だ。

 下手したらアラバラン王国とブラネルド王国で戦争になりかねないだろう。


「さすがにクラリエ様も、そこまでは……」

「しないって言い切れます?」


 タリアは沈黙する。

 この場合、沈黙は肯定に等しいだろう。

 しばし押し黙った後、タリアは言った。


「クラリエ様がこうなったのは、私の責任です」

「どういう意味ですか?」

「私は、もともと下級貴族です。しかし、貴族とは言っても資産は少なく、冒険者として身を立てる道を選びました。

 その後、色々あって王宮のメイドになったのですが、そこで護衛としての実力や、世界中を旅した見聞などを評価されて、クラリエ様の教育係に抜擢されたんです」


 タリア曰く、自分のような者を信頼し、取り立ててくれた国王には感謝しかないそうだ。


「ですが、クラリエ様に世界のことを教育する中で、冒険者の話をしてしまいました。それが間違いだったんです」


 冒険者という存在を教えるならば問題なかっただろう。

 だが、タリアは自身の冒険談を面白おかしく幼い王女様に聞かせてしまった。

 冒険者というのは必ずしも楽しいばかりではなく、むしろ大変な職業なのだが、華々しい活躍シーンだけを話せば楽しげに聞こえる。

 お城から出ることが許されない幼い子供にとってはなおさらだろう。


「結果、クラリエ様は冒険者に、そして300年に1度現れる勇者という存在に強く憧れるようになりました。

 さらにいえば、自分こそが勇者だったらいいのにと無想するようになってしまわれたのです」


 アレルへの反発とかも、そこら辺が原因だったのだろうか。


 幼児期から憧れていた勇者。

 それが自分よりも小さなお子様だった。

 そのことがショックだったのだろう。


 ……その幼児期の話自体、ゲームマスターの作り出したものであるが、それはこの世界に生きる人々が知るべき話ではない。


「ダンジョンに行きたいっていいだしたのも、そのためでしょうか」

「はい」

「今回、お輿入れの話を最終的に飲み込んだのも、少なくとも嫁ぐまでは冒険ができると思ったからではないかと」

「話は分かりますが、だからって睡眠薬って……」


 俺はため息交じりに言った。


 さて、どうしたものか。

 護衛の仕事を放棄して王都へ帰すというのは最終手段だ。

 今更それをすると、アラバラン王国の国王や政治家達の勇者への信頼を失いかねない。

 冒険者サイド都合による護衛依頼のキャンセルは、ギルドの実績にも悪影響である。 


「クラリエ様には、私からよく言って聞かせます」

「言って聞いてくださる方にも思えませんけど」


 などと言っていたときだった。


「大変よ、ショート!」


 部屋に駆け込んできたのはソフィネだった。


「どうした?」

「連れて行かれた!」

「は?」

「クラリエ様が連れて行かれたのよ!」


 なんだと!?


「アレルやライトが一緒だったのに誘拐されたって言うのか!?」


 ぶっちゃけ、あの2人の目の前でクラリエ様をさらうなんて不可能だと思うのだが。

 万一さらわれたとしても、『気配察知』ですぐに捕まえられるだろうし。

 魔法か睡眠薬で全員眠らされたというならありえないとまではいえないが、それならソフィネも起きているわけがない。


「いや、そうじゃなくて……その、なんていうか……」

「はっきり言えよ」

「さらったのがアレルだったり?」

「えっと、アレルも誘拐された……?」

「違うって、むしろそういう言い方をするなら、アレルがクラリエ様を誘拐したというのが正しいかも」

 

 ……はい?

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