異世界で双子の勇者の保護者になりました

ちびっ子育成ファンタジー!未来の勇者兄妹はとってもかわいい!
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第一章 転移者と奴隷商人と未来の勇者

1.能力確認をしたら町まで歩こう

公開日時: 2020年12月22日(火) 00:17
文字数:2,298

 森。

 うん、森だ。

 地面は土で、周囲は樹齢何千年かと思われるような木々。

 どうみても森である。


 どうしろっていうんだよ、この状況。

 改めていまの俺の現状を確認。


 見知らぬお子様の代わりに事故死(まだ死んでいない)して、幼女な神様に未来の勇者を育成したら、蘇生させてやると言われた。

 

 うん、あらためてすごい話である。

 だが、どうやら俺は本当に異世界転移したらしい。

 なにしろ、頭の上には太陽が2つ輝いているし。


 シルシルの言葉を思い出す。 


 たしか、魔法とお金をくれるって言っていたよなぁ。


 だが。

 服装は事故死したときのスーツのままだ。

 しかも、持っていた鞄はない。

 ポケットの中を探っても、何も入っていない。


 ……どこに|金《かね》があると。

 ついでに言えば、森の中を歩くのに適した格好でもない。

 革靴でサバイバルなんてできるか。


 それに魔法は……


 などと、頭に思い浮かべたときだった。

 目の前に半透明なボードが浮かび上がる。

 そこにはこう書かれていた。


 ===========

 選択

  ・ステータス確認

  ・魔法使用

 ===========


 なんじゃこりゃ?

 思いつつも、俺はなんとなく指で『ステータス確認』を触る。

 すると、ボード上の表示が変わった。


 ===========

 選択

  ・ショート・アカドリ

 ===========


 どうやら、タッチすることで選択できるらしい。

『ショート・アカドリ』とは、俺の名前だろうか。

 朱鳥翔斗をこの世界風に表示したらこうなるのかも知れない。


 とりあえず、自分の名前をタッチしてみる。


 ===========

 氏名:ショート・アカドリ

 職業:無職

 HP:32/32 MP:70/70 力:20 素早さ:10

 装備:異世界の服

 魔法:無限収納、地域察知、体力回復、怪我回復、火炎球

 スキル:自動翻訳

 ===========


 ふうむ。確かにステータスだ。

 非常にゲーム的。攻撃力とか防御力とかは書かれていないけど。

 しかし、『職業:無職』って……余計なお世話だっ!!

 確かに就職活動で失敗続きだったけどっ!!


 スキルの自動翻訳というのは、そのままの意味だろうか。


 で、『魔法』か。

 どうやったら使えるんだろう?

 呪文とか唱えるのかな?

 いや、そういえば、最初の選択画面に『ステータス確認』の他に『魔法使用』っていうのがあったよな。

 あそこで『魔法使用』にタッチすれば良いのか?

 だけど、どうしたら最初の画面に戻るんだろう?


 などと思ったのだが、よくよく見てみると画面の右上に左向きの矢印がある。


(ネット用のブラウザなら、左矢印は戻るボタンだよな)


 そう思って矢印をタッチすると、画面が戻った。

 ふむ、わかりやすいといえばわかりやすい。


 最初の画面まで戻し、今度は『魔法使用』をタッチする。


 ===========

 魔法選択

  ・無限収納

  ・地域察知

  ・体力回復(※現在のパーティーメンバーには必要ありません)

  ・怪我回復(※現在のパーティーメンバーには必要ありません)

  ・火炎球(※誤使用による火災や火傷にご注意ください)

 ===========


 うん、なかなかご丁寧な注意書きである。

 それよりも、もう少し詳しい魔法の使い方を教えてほしいものだが。


 とりあえず、無限収納をタッチしてみた。


 ===========

 魔法:無限収納選択

  ・取出

  ・収納

 ===========


 ひょっとして、お金はここから取り出せるのだろうか?

 取出をタッチする。


 ===========

  魔法:無限収納:取出選択

  ・大判金貨×20

  ・ライ麦パン×2

  ・干し肉×2

 ===========


 えっと、とりあえず、パン?


 ===========

 魔法:無限収納:取出:ライ麦パン

  ・いくつ? 個

   OK

 ===========


 えっと、どうしたらいいんだ?

 とりあえず、『個』という部分をタッチしてみる。

 すると、タッチするたびに、1、2、キャンセルと表示が移り変わった。

『1個』と表示されたところで『OK』をタッチする


 すると。

 いきなり目の上にライ麦パンが出現した。


「おっとっと」


 もう少しで地面にパンを落としそうになったが、なんとかキャッチ。


 なるほどなぁ。


 確かに魔法だ。

 とりあえず、パンにかじりつくとそこそこ美味かった。


 ちなみに半透明な画面は俺が『消えろ』と念じたら見えなくなった。


 ---------------


 ライ麦パンで腹を満たした後、今後のことを考える。

 シルシルの言葉に従うならば、北の方向にあるなんとかという町に向かうべきだ。

 そこに、例の子ども達がいるらしい。


 が。

 北ってどっちだよ……


 シルシルは画面の上が北とか言っていたが、昔のRPGじゃあるまいし、なんの参考にもならなそうだ。

 太陽の動きからおおよその目安をつけるという手もあるが、そもそも地球と違って恒星が2個もある世界である。あまりあてになりそうもない。


 一体どうしたらいいのか。

 そこまで考えて、先ほどステータス画面の『魔法』に『地域察知』という項目があったことを思い出す。

 文字通りならば、この辺りの状況を調べることができる魔法ってところだろう。


 使ってみるか。

 俺は試しに『画面出ろ』と念じてみる。

 先ほどと同じく、半透明な画面が出現。

 数回タッチして、『地域察知』の魔法を発動した。


 すると。


 画面上にこの辺りの地図が表示された。

 おそらく、中心部分が俺の居る場所。矢印で書かれているのは、今向いている方向だろうか。

 下の方には川らしき表示、左右はずっと森が続いている。そして、上の方には町か村のような絵が描かれている。


 画面の上が北ってそういう意味か。


 あの幼女神様はもう少し丁重な説明をするべきだと思う。

 だが、なんにせよ森の中でいつまでもグズグズしていても始まらない。

 俺は画面に映った地図を見ながら、北にある街に向けて歩き出したのだった。

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