異世界で双子の勇者の保護者になりました

ちびっ子育成ファンタジー!未来の勇者兄妹はとってもかわいい!
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8.開戦の爆炎

公開日時: 2021年2月3日(水) 12:50
文字数:2,901

 突如上空に現れた魔の空。

 そこから襲いかかる魔物達。

 襲われる王都。

 逃げ惑う人々、焼かれる街並み。


 当然、このままほうっては置けない。

 戦いを覚悟する俺だったが。


 ライトが俺に尋ねる。


「『やるぞ』はいいけどさ、これ、戦場が王都全体に広がりかけているぞ。俺達だけで対処とか無理だろ」


 確かに。

 王都の南が特に戦場になりつつあるが、相手は空飛ぶ魔物。

 すぐに東西南北に戦場が広がりかねない。

 ついでにいえば、国王がいるという王城にもだ。

 全てを俺達だけで対応するのは物理的に不可能だろう。


 どう動くか迷う俺に、マラランが言う。


「北には教会が、西には冒険者ギルドがある。十分とは言わないが魔法使いなどもいるだろう」


 とすると、東と南か。

 二手に分かれて対処するか。


 だが、マラランが俺達に申し訳なさそうに言う。


「すまないが、私は王城に行かねばならん」


 まあ、そうだろうな。

 彼は軍の司令官であり、彼が護るべきは最終的には国王だ。


「分かりました。俺達もできる限り対応してみます」

「民達には王城へ逃げるように促してくれ。もっとも強固な防衛施設だ」


 俺が頷くと、マラランは王城へと向かった。


「俺達も行くぞ」


 俺が言うと、4人とも頷く。

 しかし、どう組み分けするか。


 まず、この場合、俺とフロルは別組だろう。

 魔法使いが1番活躍できる戦場なのだから。

 同時に、魔法使いは接近戦に弱い以上、戦士と組む必要がある。


 となると……

 迷っている俺にごうを煮やしたのか、フロルが言った。


「私がアレルと南を担当します。ショート様とライトが東で」


 いや、戦力的にはそうなるのかもしれないのだが、幼児2人だけで行かせるのはなぁ。

 ソフィネが俺の迷いを察したのだろう、フロルに付け足す。


「ショート、迷っている暇はないわよ。2人は私が見るから」


 確かに、ソフィネの能力はこの戦いでは活かしにくい。

 彼女の弓の腕前は相当だが、とはいえこの状況で百発百中とはいかないだろう。

 誤射の恐れを考えれば、彼女には戦力よりも双子の保護者役を頼むべきだ。


「わかった。確かに考えている場合じゃないな。戦いが落ち着いたら、ここにもう一度集合ってことで」


 俺の言葉におのおの頷き、俺達は戦場へと駆け出した。


 ---------------


 東の庶民街にたどり着いた俺とライト。

 その状況を見て、ライトが舌打ち混じりに言う。


「思った以上に状況がやべえな」


 俺も頷く。


「確かに」


 上空のモンスターがどうこうという前に、まず街並みが複雑すぎる。

 どうやら、庶民街の中でも低所得者層が暮らす場所らしく、それだけに道が細く入り組んでいる。

 しかも、人々が右往左往、無茶苦茶に逃げ惑っていてパニック状態。

 はっきりいって、モンスターと戦うどころじゃない。


「どうする、ショート?」


 とにかく、パニックを抑えないと。

 だが、道ばたで俺が声を張り上げてもどうにもなりそうもない。


「ライト、どこか適当な屋根の上まで俺を運べるか?」


 情けない話だが、俺の体力じゃ屋根に上るのは無理。

 少なくとも時間がかかってモンスターに狙われてしまう。


「屋根の上?」

「ああ」


 ライトは一瞬キョトンとした顔を浮かべたが、すぐに俺の意図をさっしてくれたらしい。


「OK。俺につかまって」


 俺がライトの腰につかまると、彼は一気にジャンプ。

 ベランダとかを蹴飛ばしつつ、屋根の上へ。

 俺から見れば超人的な脚力だ。

 おそらく、俊足などのスキルも応用したのだろう。

 どうしてもアレルの前に霞みがちだが、彼も天才戦士なのだ。


 屋根の上に立った俺は思念モニターを開く。

 そして、モンスターの群れに向けてもっとも派手な魔法を放つ!


 生贄事件の後で覚えた魔法、『爆炎連弾』だ。

 巨大な炎の弾が無数に現れ、モンスター達を直撃する!

 その場にいるモンスター全てに同時に爆発する炎を放つ魔法。


 正直、MP的にはキツイ。

 ただでさえMPを大量消費する魔法な上に、今回はモンスターが多すぎる。

 細かい指定をしなかったので、東だけでなく、アレル達が向かった南のモンスターも対象にしてしまったし。

 もちろん『無限収納』の中に魔石はあるが、MPの回復はそれなりに時間がかかる上に集中する必要がある。戦闘中の回復はできれば避けたい。


 モンスター達の何体かはそれで倒せたが、全てではない。

 生き残った者も多い。

 だが、構わない。

 魔法を使った最大の目的はそれではないのだから。


 俺は大きく息を吸い込み、できる限りの大声で叫んだ。


「みなさん! ここは俺達に任せて! 王城へ向かってください! 王都の兵が護ってくれます!」


 そう。

『爆炎連弾』などという派手な魔法を開幕で使ったのは、人々の目を俺達に注目させるため。

 魔法使いの助けが来たと安心させ、同時に逃げる方向を示す。

 全域に俺の声が届くとは思えないが、人づてでも伝われば多少なりとも状況は改善するだろう。

 むろん、人々が全員王城に押しかければ、それはそれでパニックかもしれないが、目標地点もなく右往左往されるよりはマシだ。

 あとはマラランをはじめとする王都の兵隊らになんとかしてもらうしかあるまい。


 ということで、とりあえず人々の混乱は多少マシになったのだが。


 周囲のモンスターは屋上に立つ俺とライトを囲むように飛び出した。

 明らかに俺達を第一目標と定めたっぽい。


 ええい!

 迷っている暇はない!


 俺は『火炎連弾』を放つ。

『爆炎連弾』より威力は落ちるが、命中率は高い魔法だ。

 ライトも『風の太刀』で追撃!


 こうなると、あの誘拐事件でライトが『風の太刀』を覚えていてくれて助かった。

 俺1人では対処しきれない。

 というよりも、そもそも二手に分かれること自体却下せざるをえなかっただろう。


 鳥の魔物やトカゲの魔物は、2つの魔法とライトの攻撃で、あらかた倒せた。

 だが、ドラゴンはさすがに強いらしい。

 全く効いていないとは思いたくないが、平然と俺達を空から見下ろしている。


 これはやばいな。

 広範囲魔法はさすがにこれ以上何発も使えない。

 ドラゴンはまだ10匹はいる。

 南の方を合わせれば20匹以上だが、そっちはアレルとフロルを信じるしかないか。


 ライトが何度か『風の太刀』を放った後苦々しく言った。


「さすがにドラゴンは強えな」

「ああ」


 俺も苦々しく頷く。

 俺のMPはもう半分以上つかってしまった。

 そもそも、先の2回の魔法もどこまで効いているか微妙。


 ライトの『風の太刀』もドラゴンに通用している様子があまりない。

『風の太刀』は確かに普通の戦士には使えない超絶技だ。

 しかし、一方でアレルやレルスが決闘で使いまくっていた、『光の太刀』、『火炎の太刀』、『爆破の太刀』、『暴風の太刀』、『蛟竜の太刀』に比べれば、やはり威力は劣る。


 勢いで、アレル達と別行動を選んだが、軽率だったかもしれない。

 俺とライトだけで複数のドラゴンを相手にするのは力不足だと感じていた。


 ライトが俺に言う。


「ちょっとまずいよな」

「ああ」

「どうする?」


 俺達が攻撃しあぐねていると見て取ったのか、ドラゴンたちが大きく口を開く。

 炎を吐き出すつもりか!?


 ライトが叫ぶ。


「やべっ!」

「とりあえず、撤退!」

 

 俺の言葉にライトが頷き、屋根から飛び降りる。

 俺もその後に続いた。


 次の瞬間、俺達が立っていた屋根が、建物ごと吹っ飛んだ!

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