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ちびっ子育成ファンタジー!未来の勇者兄妹はとってもかわいい!
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5.対決!アレルVSライト(イラストあり)

公開日時: 2020年12月31日(木) 13:14
更新日時: 2021年3月24日(水) 10:07
文字数:2,604

 模擬戦開始直後。


「行くぜ、アレル!」


 ライトはアレルに一気に詰寄った。

 そして素早く繰り出される、ライトの攻撃、攻撃、攻撃!


 素人目に見ても昨日のゴルの攻撃よりも素早い。

 一撃の威力はゴルよりも劣るのだろうが、確かに剣術の腕前はゴルよりライトの方が上かもしれない。


 アレルはライトの攻撃をかわし、あるいは木刀で弾く。

 だが、ライトは休まない。

 アレルはなんとか距離を取ろうとしているように見える。確かに『風の太刀』がある以上、距離を取れれば格段に有利だろう。

 だが、ライトも簡単にはそれを許さない。


 アレルも、ゴルの時と違って余裕がなさそうだ。

 攻撃に転じることもなかなかできないでいるらしい。


「でやぁぁぁぁっ!!」


 ライトは気合いを入れて攻撃を続ける。

 ライトの仲間達が口々に言う。


「ライトのやつ、本気ガチだな」「ああ、だけどアレルもすごいぞ」「俺なら避けられねー」


 ミリスは2人の戦いをジッと見つめている。


 そしてフロルは。


「アレル……」


 心配そうに両手を握りしめていた。


 戦いはライトが有利に見える。

 何しろ、アレルは未だ1度も攻撃を仕掛けていない。

 だが、ライトの攻撃もアレルにまともにヒットしない。


 と。


「スキあり!」


 木刀攻撃を避けたアレルの脇腹に、ライトの回し蹴りがまともに入る。

 おいおい、剣術の模擬戦で蹴りとかありなのかよ!?

 俺はそう思うが、ミリスもライトの仲間達も当然と受け止めているようだ。


 俺達の反対側の壁まで転がるアレル。

 フロルが叫ぶ。


「アレル!」


 だが、アレルはぴょこんとすぐに起き上がる。

 どうやらまだやれるようだ。

 そして、転がった結果ライトと距離が取れている。


「いくよっ!」


 アレルは叫んで木刀を振りかぶる。

『風の太刀』か!?

 この距離ならライトの追撃は間に合いそうもない。


 だが。


「そっから撃っていいのかよ、アレル!」


 ライトの言葉に、アレルが固まる。


 どういうことだ?

 一瞬分からなかったが、すぐに気がつく。

 あの位置から『風の太刀』を撃てば、俺やフロル、ライトの仲間達も巻き込みかねない。


 アレルは戸惑った表情。

 ライトはそのスキを逃しはしなかった。


「うりゃあぁぁぁ!!」


 ライトがアレルに一気に隣接!

 アレルは戸惑ったまま対応しきれない!


 ライトの木刀が次々に繰り出される。

 壁際で満足に躱せないアレル。


 そしてついに!


 アレルの横腹を、ライトの木刀が強かに打ち据えたのだった。


 床に転がるアレル。

 そのアレルにライトが木刀を突きつけたところで。


「そこまで! 勝者ライト!」


 ミリスがそう宣言をして、模擬戦は終了したのだった。


 ---------------


「ライト、ずるいよぉー」


 模擬戦終了後、口を膨らませて言うアレル。


「ふん、作戦だぜ、作戦」


 ライトはそう言って笑う。


「確かにライトの言うとおりだ。戦士ならば常に周囲の状況を慮り、敵と仲間がどこにいるかを把握しなければならない。今回は君の負けだ、アレル」


 ミリスの言葉に、「うー」っと不満げに声を上げつつもそれ以上は何も言わないアレル。


「だが、ライト。君の作戦も褒められたものではない。あのままアレルが撃っていれば、君の仲間も巻き込まれていた。戦士として、仲間を巻き込みかねない行動は下策だ」


 ミリスの言葉に、ライトは「うっ」と言葉に詰まる。


「それと、アレル。君の最大の敗因は『風の太刀』にこだわりすぎたことだ。確かに『風の太刀』は強力だが、それだけに頼ってはならない」

「……うぅ」


 2人のミスを的確に指摘していくミリス。

 ライトも勝利の喜びよりも反省点について考え始めた様子だ。


 そして、アレルは。


「ごめんなちゃい。まけちゃった……」


 俺とフロルの前に来て泣きそうな声で言う。


「いや、大丈夫さ。次頑張ればいい」


 俺はアレルの髪を撫でてやる。

 フロルは心配げにアレルに尋ねる。


「アレル、大丈夫? 怪我はない?」

「うーん、ちょっと痛い。でもだいじょーぶ」


 こうして、アレル2回目の模擬戦は、彼に敗北の悔しさを味合わせたのだった。


 ---------------


 剣術の訓練が終わり、俺はアレルの冒険者カードを確認する。


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 氏名:アレル

 職業:冒険者(レベル0)/ショート・アカドリの奴隷

 HP:45/65 MP:20/20 力:63 素早さ:62

 装備:旅人の服(子ども用)/木刀

 魔法:なし

 スキル:見切り Lv3/俊足 Lv3/風の太刀 Lv2/気合い Lv1

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 昨日ほどではないが、今日1日でアレルのステータスはまた上がったようだ。

 現在HPが減っているが、これは模擬戦のためだろう。休めば回復するだろうし、辛いようなら『体力回復』の魔法を使えばいい。


「そういえば、アレルのスキル効果ってなんなんだ?」


『風の太刀』はともかく、他のスキルの効果はイマイチ分かりにくい。


「うーんとね。うーんと、うーんと、アレルよくわかんなーい」


 すると、ミリスが解説してくれた。


「『見切り』は相手の攻撃を目で見て判断するスキル。『俊足』は瞬間的に素早さを底上げするスキル、『風の太刀』は昨日見たとおりだ」

「『気合い』っていうのも増えていますけど」


 俺の言葉に、ミリスの顔が引きつる。


「そ、そうか、本当にすごいな……『気合い』は力を込めることで、防御力や攻撃力が一時的にあがるスキルだ」


 なるほど。おおむね言葉通りといったところか。

 こりゃあ、俺やフロルも負けていられない。前衛よりも後衛の方が問題なパーティーになってしまう。


「よし、これからも頑張ろう。目指すはレベルアップだ!」

「はい! ご主人様!」

「アレルもがんばるー」


 盛り上がる俺達に、ライトが言う。


「俺らも負けねーからな。どっちが先にレベル1になるか競争だ!」

「アレルもまけないもん。フロルやごちゅじんちゃまもまけないもんっ!」


 どうやら、アレルにとって、ライトは最初のライバルになってくれたらしい。

 それも、強敵と書いてともと読むタイプのいい関係だ。


 あれ? ところで今日はゴルがいないな。

 ……ま、いいか。あいつがいると面倒だし。


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 こうして、俺達は冒険者の道を歩き出したのだった。

 その先に、何が待っているのか、今の俺達はまだ知らない。


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作中のイラストはchole様にご提供いただきました。

素敵なイラストをありがとうございます。

↓chole様のpixiv

https://www.pixiv.net/artworks/84723996

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