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【番外編8】アレルくんの冒険 その2

公開日時: 2021年2月8日(月) 15:57
文字数:1,633

 セルアレニとの戦いは、いつの間にか終わっていた。

 何故自分が助かったのかも分からない。

 気がついたら、宿のベッドの上だった。


 ショートは「光の戦士」がどうこうといっていた。

 その時のアレルにはサッパリ分からなくて。

 だから何も答えられなかった。


 その後、バーツ達が冒険者をやめて。

 ミリスも怪我が治らなくて戦士を続けられなくなった。


(強くなりたい)


 アレルは強くそう思った。

 フロルやショート、それに新しく仲間になったライトやソフィネを護れるくらいに。

 ううん。それだけじゃない。

 みんなを護れるようになりたい。


 レベル1の冒険者としての修行の日々。


 自分はまだまだ弱いけど、でもやっぱり不思議な力を持っている。

 この力はみんなをまもるためのものだ。

 誰よりも、誰よりも強くならなくちゃ。


 セルアレニにも、レルスにも負けないくらいに!


 みんなを護る。

 そのために強くなる。


 アレルは気づいていなかった。

 いつの間にか、自分が6歳にして大陸一の戦士とよべるほどに覚醒していることに。

 その力が、幼い彼の心には不釣り合いなほど大きくなっていたことに。


 やがて訪れるレベル2の冒険者試験。

 アレルは自分の実力が上がっていることを実感できた。


 あの魔の森の個体よりも大きなセルアレニも倒せた。

 そして、レルスとの決闘。


 彼に決闘を申し込まれたこと自体、アレルが強くなったと認められたということ。

 アレルだって幼いながらも戦士だ。

 レルスという最強クラスの戦士に認められれば嬉しい。

 だから、命がけの決闘を受けた。


 レルスは確かに強かった。

 1年ほど前のレベル1のテストの時、彼は実力の十分の一も出してはいなかったのだと分かった。


 だけど。


(アレルも強くなった)


 レルスの全力に、アレルも全力で応じた。

 経験で優るレルスに、才能で優るアレル。

 戦いの結果はアレルの負けだったが、アレルは確かな手応えを感じていた。


 ---------------


 自分が勇者だと聞かされて。

 アレルは最初意味が分からなかった。


 アレルの知っている勇者様は絵本の中の存在。

 アレルはアレルで、勇者様とは違うのに、なんでショートやダルネス達はアレルとフロルが勇者だって言うのだろう。


 頭を悩ませて、アレルの中で「勇者とは冒険者の職業の1つ」という結論に達した。

 でも、それだけじゃない。

 きっと、それだけじゃない。


 絵本の勇者様はみんなを護った。

 だから、アレルが勇者なんだったら、みんなを護らないといけない。

 自分の力は、きっとそのために神様がくれたんだ。


 フロルほど複雑な考え方をしないアレルは、そう単純に思った。


(アレルは勇者として生まれた、だからみんなを護らなくちゃいけない)


『護りたい』から『護らなくちゃいけない』に。

 自分が勇者だと知ったことで微妙にだが、またアレルの考え方が変わった。


 その時の、幼いアレルはそれがどれだけ重い決意か理解していなかった。

 だって、アレルにとっての『みんな』はせいぜいエンパレの街の住人全員くらいでしかなかったから。


 世界にはもっとたくさんの人が住んでいて、人族だけじゃなくて、エルフもドワーフも、そして魔族もいるんだとか、そんなことは実感できなくて。

 いくら剣術がすごくても、全員を助けるなんてできないなんて考えもつかなくて。


 微笑ましいほど無邪気に、嘲笑われてもしかたがないほどに無邪気に。

 アレルは『皆』を護ろうと決意していた。


 だから、生贄の村の人達に怒りつつも、やっぱりドラゴンがいるなら放っておけないと思ったし、実際その事件はアレルの剣術でどうにかできた。

 ライトが『風の太刀』を覚えてくれなかったら危なかったようにみえるシーンもあったけど、実際のところは『俊足』を使えばアレルにだってショート達を助けることはできたのだ。


 自分はみんなを助けられる。

 助ける力を持っている。

 勇者として、アレルはみんなを助けて、魔族や魔王さんともちゃんと仲良くなれる。


 恐ろしいほどの無邪気さでそう信じていて。


 それが甘すぎる考えだったと、王都の戦いで思い知らされることとなった。

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